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アラサーのオレは別世界線に逆行再生したらしい  作者: 翠川稜


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閑話 名もなき一年男子はストーカーチックに状況把握を努めたらしい




俺は都内最大生徒数の公立高校に通っている。

男子も女子もだいたい均等で、校風はまあまあ自由度がある。そして一応は進学校なので、ヤンキーっぽい人種は見かけない。

運動部に入ってるヤツはひたすら部活、文科系のクラブは比較的大人しめな人種。

そんな中で大注目は一年B組の水島遥香ちゃんである。

保健委員の女子に水島遥香ちゃんの身長体重スリーサイズのデータを入手できないものかと買収をもちかけたがすげなく断られた(当たり前だ! 個人情報だろ! ドアホ!)の言葉と一緒に。

しかし保健委員の一年の中では断トツのアイドルクオリティの容姿である。

目立たない大人しめな性格。部活はスイーツ部所属。

体育祭の名物借り物競争では、狙っていた二年男子の多さにびっくりした。

しかし、そんな水島遥香ちゃんの傍にはいつも一緒にいる一年男子の存在がある。

彼女と同じ一年B組の真崎とかいうヤツだ。

華奢で小柄な遥香ちゃんを守れるのか、男としてお前、華奢すぎんだろ! ぐらい思っているのは俺だけではないはずだ。

だがしかし、コバンザメのごとく水島遥香ちゃんにくっついている真崎幸星は、その外見にそぐわない性格のようである。

「真崎? オカンだろ、この間宿題写させてとかいってきた菊田を『お前、部活で忙しいのはわかるけど、予習復習しなくていいから宿題はしとけ! 自分の為だろ!』とか一喝してて『オレがわかる範囲で教えるからやってみろ』とか言ってた」

オカンだという言葉はところどころで耳にする。

そこで俺は一年B組の連中にそれとなく聞いてみることにした。


「真崎君? もう、めっちゃ助かったよ~文化祭、彼も忙しいのに、ダンボール少なくてさ~周囲のコンビニやスーパーのダンボールは上級生に確保されててちょっと遠いけどドラッグストアを探してくれて、みんなででかいダンボール確保できたんだ。ほんと秋山さんや真崎君には助けられたよお。そんで真崎君は屋台関係の方で引っ張りだこで応援に走ってて、僕も屋台で食べたけど、おいしかったよねえ? あ、タピオカミルクティは真崎君のレシピなんだって、料理男子って高校生ではレアじゃない?」


一年B組西村君、文化委員。同じ文化委員が吹奏楽部所属の為、夏休みからぼっちでコツコツと準備をしていたらしい。

なんだと!? あのタピオカミルクティは真崎のレシピだと!? 俺はてっきり遥香ちゃんが作ってくれたものだと思ってありがたく頂戴したのに!!

そして、西村君に作業を丸投げしたもう一人のクラス女子が総スカンくらうのを阻止したのも真崎だという。

なんだ真崎、美味しいところもってく感じか?


「それそれでさ~文化祭がきっかけで秋山さんと最近よく喋るんだ~でも告白とかはまだかな~いやーでももしかして、俺にも彼女できちゃうかな~ねえどう思う?」


どう思うも何も、お前の恋バナはいいんだよ、真崎と水島遥香ちゃんの間を訊きたいんだが!?


「水島さん? 可愛いよね。大人しくて目立つ性格じゃないけど、見た目はダントツだよね」


そうだろ!? 同士よ!!


「いや~でもなんだか完璧すぎて俺にはちょっとなあ~高嶺の花かな~、それでさ~秋山さん、どう思う?」


秋山さんは別にいいよ。お前、話してるとそっちに舵きるな。もういい。他のヤツに聞いてくる。




「真崎? ちぐはぐな感じするヤツな」


お、おお……なんか俺の期待を裏切らないコメントをもらえそうだぞ。


「頭は悪くねえんじゃね? 結構成績上位にいるっぽいし。本人は走るの苦手とか球技わかんねとか言ってるけど、昼休みはオレとか委員長とかキクタンとかと中庭でバスケするし。そうそうこの間も体育の授業でバスケあったんだけど、あいつ意外と上手いよな。パスコースよく読んでカットに入ってくるし、華奢で筋肉ねえからプッシングとられたら吹っ飛びそうなのにな。でも逆に身軽だから跳ぶというか。兄貴がバスケ部なんだって、ヒマな時、外に引っ張り出されて付き合わされるとかぼやいてたなあ」


一年B組佐伯君。陸上部所属。スポーツマンタイプでこいつも一部の女子からは人気あるよな。なにより瞬足。やはり足速い男子はモテの神話は高校にシフトしても現存するのか⁉ 俺は絶対にないと思ってた。


「俺、以前、真崎に『なんで運動部入らねえの?』って聞いたら、妹の面倒みるからだって、小学一年生なんだって、水島さんが言うには目に入れてもいたくないぐらい可愛がってるっぽいぞ。年の離れた妹の面倒みるとかどんだけいい兄貴って感じだよな。実際写メを見せてもらったけど、可愛いさ天元突破してた」


おのれ……真崎……何気に家族思いアピールをクラスメイトにするのか。というかそれを水島さんにも見せているということか⁉

そんなことしたら「真崎君……小さい子の面倒もよく見るなんて素敵だな」ぐらい思われてそうじゃないか⁉




「真崎はなんにでも一生懸命だし真面目だしオカンだけど日々楽しそうだよ。いや楽しいだろ、うちのクラスの水島さんと常に一緒で、そのくせ彼女じゃないとか言ってるけどな」


一年B組クラス委員の富原君。

委員長の肩書に相応しく眼鏡キャラだが、こいつは優等生っぽいのにどこかチャラい雰囲気も持っている。B組男子菊田とよくつるんで真崎とも仲がいい。


「ザッキーに訊いてみたんだよね、水島さんとどこまでいったのか」


一年B組菊田―! クラス内ムードメーカ的立ち位置だが、その存在感は学年でも有名人。お前、俺の一番知りたいところだそれ! 真崎はなんて言ったんだ⁉


「ウメボシされた」


……。

と、とりあえず付き合っていないとみていいんだな⁉ いいんだな⁉


「真崎はともかく、水島さんは真崎のこと好きだろ」

「オレ、別に水島さんはタイプじゃないけど~。うんそうそう可愛いけどタイプじゃないのね。でもね、自分の傍にいてくれてニコニコしてて名前で呼んで、それだけでもう矢印向かってるじゃん。隠そうともしないのがまた好感があるよね~」

「キクタンのくせにまともな発言するな」

「え~オレこう見えても、女子はよく見てる方よ? だいたい当たってるべ?」


菊田……お前……そんなことは水島さんを見てきたオレがよくわかってるよ! 




「は~? 水島遥香ちゃーん? ああ、真崎といつも一緒の子~」


一年B組、渡瀬さん。

学年内でもスクールカースト最上位女子。

そして常に三人以上の徒党を組んでいる。その中でも圧倒的支配者感を放つ。

パンピーな俺には話すことすらも恐れ多いが、推しの水島さんの情報を得る為にオレは耐える。


「遥香ちゃんは多分真崎のこと好きでしょーあれ。うちらは真崎のお兄さんの方が断然タイプなんだけど?」

「だよねえ。イケメンは正義でしょー」

「真崎は~真崎で可愛いんだけど~からかうと水島ちゃんが泣くからあ」

「見てて純愛~って感じ? いいよねえ。ああいうのも」

「わかる~」

「で、アンタ、何嗅ぎまわってんの? うちら、真崎からお兄さん紹介してもらいたいから結構ヤツには好印象与えておきたいんだけど?」


くそ! 真崎のヤツめ! 学年女子カースト最上位軍団を子飼いにしてやがる!

退避!




「ほうほう、真崎と遥香の関係ですか?」


ハーフリムのメガネのブリッジをクイっと中指で押し上げたのは……。

一年B組草野汐里。漫研所属。


「NLも決して悪くはないけど、あたし的にはお兄さん×真崎で是非お願いしたい。BL王道シチュエーションじゃありませんか」


ごめん、キミが何を言ってるのか俺にはわからない。

「三次元でリアル義兄弟カプ、こんなおいしいネタ! しかもあなた、ヴィジュアルがいいじゃないの! 絶対真崎は受けなのよ! だって料理男子でしょ? 世話焼きでしょ? もう遥香にあの二人の状況を動画にとって流してほしいとお願いしてるんだけど、断られてるのよ~」

「草野、お前、もう次のイベントオリジナルでそれヤッチャイナー」

「部長!」

「コピー本でちょっとやってみなよ! 名前変えてさ~三次元でもアレいけるって~」

「でも、あたしジャ〇プの推しカプ本を前回落としてるから! 次回落とすわけにいかないんすよ!」


ジャ〇プの話が聞きたいわけじゃないんだよ。

落とすとかカプとかNLとかBLとか、そういうコアな話はいらない。

ちょいちょい出てくるアニキの話いらないから。

推しに熱いのはわかる。俺だって水島さん推しだからな!

こうなったら、少し怪しい人になってしまうかもだが、あの二人の様子を伺わせてもらう。

ちょうど下校時間だ。正面玄関を張るぞ。




運動部を除いて下校してる生徒が行き交う正面玄関の下駄箱の影から、俺の最推しの水島さんの姿を探す。

くそ、真崎のヤツやっぱり水島さんの傍にいる。


「あーやべ、傘忘れた。降る前に帰れると思ったのに……優哉のヤツ、誕生日に渡した折りたたみ傘持って行ったかなー」


ふふ、どこが世話焼きだ、お前、間抜けすぎるだろ、ちなみに俺はちゃんと折り畳み傘を持っているぞ!

それに比べ、隣にいる水島さんの準備万端なこと。

リュックのサイドポケットから薄い水色の折りたたみ傘を取り出している。スナップを外して傘を広げているだけなのに、なんと可憐な!


「幸星君、どうぞ」


水島さんがそう言って、真崎の奴に傘の部分を広げてる……。

まて……それは……それは……つまり相合傘という伝説のシチュエーションでは!?

真崎のヤツは水島さんの手から傘の柄を取った。


「オレが持つよ、オレの方が背が高いし。ていうかさーなんか照れちゃうなー相合傘、オレ生まれて初めてだよ」


俺は自分の折り畳み傘を握り締め、うずくまる。

ううう。

なんだこの敗北感。

真崎幸星! 我が最愛の推しを絶対に幸せにしろ! だがお前は一回爆発しろ!

涙を呑んで諦めるしかないじゃないか。

だって、はにかむように笑顔を浮かべた彼女の横顔は……尊いのだからっ……!






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