◆45 文化祭だよ!
食品衛生の件を飲食系の出店をするクラスに徹底させて、タピオカミルクティのレシピを渡した。
「キャッサバ粉じゃないのね~」
「予算の事も考えてコスパがいいので片栗粉で」
「衛生管理のレジュメ読んだ~作り置きできないのがつらいね~」
「そこは人海戦術でお願いします」
「はーい」
スイーツ部の部長に呼ばれる。
「真崎君、ちょっと~」
「はい」
「実はさ~申請してたんだけど、メニュー変えたいとか言ってくるクラスがあるのよ~」
「それって可能なんですか? 食材の申請ってもう締め切っちゃってますよね?」
「先生もそこはなんとかするって言ってるの、レンタルした鉄板が問題でね」
「はい?」
「タコ焼き用の鉄板しか残ってないのよ~」
「そんなんありっすか?」
「めったにないことなんだけど……」
「焼きそば用の方が需要ありそうですから余ってそうだけど……」
「なんかそこのレンタル会社が他の方にレンタルしちゃったらしくて、それを見たらタコ焼きにしようって言われて……」
「タコ……単価高いっすよ?」
「そうなのよ~どうにかしたいんだけど、甘いものはやりたくないんだって……言われて、ホットケーキミックスでハチミツ掛けて丸くていいかもって意見もだしてみたんだけど……反応はよくなくて」
うむむ。
ソース青のりマヨを無駄にしたくないって意見も大多数らしいんだよね。
そりゃタコ焼き用鉄板がきたら絶対タコ焼きやりたいよな~。
でもタコは単価マジ高いんだよな~変更が結構あるのにさ~。
お安く~安価で~しょっぱくて~粉もの屋台系で~。
「タコ以外で具にするならシーフードミックスなんかどうっすか? タコ焼きの大きさにも合うかと」
「おお!」
「ただアレルギー食品提示はしないとダメですが、そこの申請も先生がやってくれるなら」
「さすが! おかあさん言われるだけあるね!」
「……」
何故、部長もその呼び名を知っているのか……。
「じゃあ、そっちのレシピと試食品作るのやってもらっていいかな?」
「タピオカミルクティはうちらがやる~」
「食材変更の申請を先生に頼んでくるからよろしくね!」
三年の先輩達が手を挙げていうので、オレは鉄板系に回される。
先輩達、タピオカミルクティ……気に入ったんですね……。
「真崎君のレシピもあるし、実は夏休み片栗粉で作ってみたんだよ~」
「タピる! タピる!」
タピオカミルクティとパウンドケーキ、クッキー系の方は先輩達がテンション上げて試作にとりかかってる。
よし……オレのイメージは家族旅行に行った時に、優哉が泣く泣く諦めたえびえび焼きなんだよな。
「水島さん、試作ちょっと作ってみようよ」
「はい!」
タコ焼き用の粉を用意、水島さんはきっちり粉と水をはかってくれる。
理系女子、こういう計測するの好きみたいだ。
そして泡だて器でカシャカシャとリズミカルに回す。うむ。素晴らしい手際。
オレはその間にキャベツを千切り。
「ちょ、千切り、はやっ!」
試食の量だからそんな大量ってわけでもない。
担当クラスの子がシーフードミックスを買ってきてくれた。
他の子も鉄板の用意をしてくれてる。
よしよし、じゃあいきますか。
油を引いて、タコ焼き粉投入。その上にキャベツとシーフードを乗せて、くるくるしてみせる。
「あーやってみたい!」
うん、なんとなくその気持ちわかる、夏休みのボランティアでおじいちゃんがオレにスイカカットを薦めてくれた時のことを思い出した。
ではでは、やってみてください。
竹串を渡すとその子はクルクルと手際よく回す。
おお、いい逸材がここに!
焼き色がいい感じになったところで紙皿に盛ってもらって、ソースと青のりと鰹節をかけてみた。
「うま!」
「おいしー」
うむ、シーフードミックスでもいけるな。
優哉さん、当日がっつり食ってください。
当日。
朝もはよから学校に。ちなみに二学期から水島さんと一緒に登校してる。
「幸星君のところはもしかしてご家族のみんなが来るの?」
最近ちょっとずつだけど敬語も抜けてる様子の水島さんが可愛い。
「優哉がくるよ、多分莉奈ちゃんと隆哉さんもくるんじゃないかな。オカンはお仕事です」
「莉奈ちゃん。楽しんでくれるかな。出し物はそんなに共感するようなものはないだろうけれど」
「ダンスとかウォーターボーイズあたりは楽しんでくれるんじゃないかな。演劇はどうだろう」
演劇多いんだよね、どこの階の教室でも必ずやってるし、むしろオレ達のクラスがお化け屋敷っていうのが珍しい感じ。
一緒に見て回りたいんだけどな。
「真崎~」
学校の最寄駅に到着して改札抜けたところで背後から声を掛けられる。
珍しい人物からの声掛けですよ。陽キャパリピのクラス学年カースト上位の女子、渡瀬さん達だった。
「今日くるんだよね~『成峰のイケメン』あんた誘ったの?」
ううう。オレにとってはやらかしてしまった感を思い出させる人物だ。
体育祭の協力を優哉で釣ったんだよね、この人に。
優哉、マジごめん。多分この人は優哉のタイプじゃないだろー。
「いやー来るけど……なるだけ、そっとしておいて、おさわり禁止で」
「何よーシツレイじゃなーい。別に取って食いはしないわよー」
「目の保養だっつーの!」
「そーそー」
その言葉を信じるぞ、ほら、なんだかんだ言ってもこの人達、一応体育会系クラブ所属で、先輩とか顧問の指導とかにも従ってるっぽいし、そんなに、オレのいた元中学のカースト上位者とは上位カーストでも系統が違うし。信じたよ!? その言葉!
オレはオニイチャンにはもっとこう、タイプの違う子をお勧めしたいんだよ。
「水島ちゃんも相変わらず、旦那と一緒だねー」
「はひ!?」
水島さんがそういわれて変な声だした。
「そういや真崎、アンタ何やんの? ウチのクラスにあんま顔出さなかったじゃない?」
いや、チア部のダンス練習で顔を出さなかったキミ達に言われたくない。
「し、真崎君は、大道具のダンボール確保を手伝ってましたし、放課後も残ってますよ」
水島さんが渡瀬さん達にそう言うと、渡瀬さん達はニヤニヤする。
「水島ちゃん良妻~!」
渡瀬さん達にからかわれて真っ赤になってる水島さんを隠すようにしてオレは渡瀬さん達に言う。
「渡瀬さん達こそ協力してやったの?」
「これからするんだっつーの。うちら、お化け役の子のメイクをこれからやってあげてから部活の方に行くんだよ」
あらら、意外。
体育祭の時もなんとなく感じていたけど、この人達は頼めば意外とそういうところ協力してくれんだよね。
「じゃあ、あれか~やっぱクラスに貢献してねーの実行委員のもう一人の飯田だね」
そうなのだ、気になっていた。西村君が孤独にコツコツして準備している間にもう一人の実行委員はどうしたのかと。
「あーでもあいつ一年でペットのソロ任されちゃったんデショ?」
ペットのソロ……トランペットのソロ!? 吹奏楽部かっ!? うちの吹奏楽部、100名越えだぞ!? 一年でソロ!? それってすごくね!? 某吹奏楽部舞台のラノベみたいじゃね!?
「なのに文化祭実行委員って、他に枠空いてなかったんだっけ?」
「なかったんじゃね?」
あちゃああ~とんだビンボーくじ引いたんだな。飯田さん。すでにクラスの何人かは学級裁判的に名前を上げてる気配があったけどさあ。
「エースに抜擢されりゃー忙しいのもわかるけど、うちらだって協力してんだから、ちょっとぐらい顔出して手伝えよって感じだよねえ~」
こわー! 言ってることは正論なんだがその迫力コワイ! 水島さんをちょっと見ると、水島さんはニコッと笑ってくれた。うう、癒される……。
「でところで、真崎、クラブ何部?」
「スイーツ部」
「やーだーオカン~クラブもオカン~!」
「水島ちゃんも? 水島ちゃんはそんな感じだけど~」
「はい、幸星君はお料理上手ですよ。先輩達も頼りにしてますよ、タピオカミルクティ、幸星君レシピですから」
「マ!? 真崎タピオカ作ったの?」
「鉄板に回されるけど、レシピはオレですが?」
「文化祭でタピれるわけ!?」
タピってくれ。そしてご機嫌をなおしてくれ、優哉にも好評だったからね。
かしまし三人組は「タピるからね~」と言って小走りにオレ達から離れた。
学校行くと、スケジュール通りに準備に取り掛かる。一応西村君に、この時間とこの時間が空いてるから、クラスで呼び込みとか受付あるなら手伝うからねと伝えたら、西村君は嬉しそうに頷いていた。
ていうか他のクラスの男子が西村君に協力的だ。もう一人不在の実行委員の飯田さんがいない分西村君をフォローしてる感じ。
「真崎、部活に行くの? 何部?」
「スイーツ部、屋台準備点々としてっから、食いにきてくれ!」
「真崎――! 美味しいの~美味しいの~作って~!」
「真崎はやっぱオカンだったね! いってらっしゃーいオカン!」
もうオレ……オカンの称号を否定する気力ない。
タコ焼きでひたすらキャベツ千切りしたり、焼きが上手い子がいるから。クッキーは水島さんがすでに焼きに入ってて他の女子達が袋詰めしてるっぽい。
なんで場所が離れてるのにそんなこと知ってるんだよと言われれば、他の屋台系の駆り出しにあってるからです。
先輩達が「ウチの部の一年男子が~料理系なら結構なんでもできる~」「呼んで! この場にすぐ呼んで!!」の状態があちこちで繰り広げられてるために、そんなことになっているのです。
お客さん主に在校生の家族がゾロゾロと午前中の早い時間にやってきて、だんだんと文化祭っぽくなってきたぞ。
他校の子の姿もちらちらみかける。呼び込みの声も賑やかになってきた。
「おにーちゃーん!」
いまめっちゃ可愛いウチの莉奈ちゃんの声がしませんでしたか!?
オレ今、ちょうど裏方から焼きに入ったんだけど! どこ!? 莉奈ちゃん!
「莉奈ちゃん!」
鉄板前から、隆哉さんの傍できょろきょろしてる莉奈ちゃんに声をかける。
隆哉さんと優哉が並んで立ってると目立つ。
あの二人、高身長でどこのモデルよって感じだからな。
「幸星おにーちゃーん! パパ! 優哉お兄ちゃん! こっち、こっち! 幸星お兄ちゃんこっちにいた!」
「おー幸星、おま、似合うなー」
「幸星君、日焼けしてないけど、鉄板の熱で焼けそうだよね」
隆哉さんがそんなことを言う。
「優哉、タコ焼きならぬ、シーフードミックス焼き、食ってみて」
隆哉さんが三人分のお金を払って、袋詰め担当の子が優哉と隆哉さんと莉奈ちゃんにパックを渡した。
その場で莉奈ちゃん小さい口を大きく開けて、あーんって食べる。
「お兄ちゃん! やっぱりおいしいの!」
「うん、キャベツも入ってて、タコじゃないけどエビだねイカとかもある」
「なー、今度ウチにホットプレート買わない?タコ焼きのアレ付きで、いろんなヤツができるの。そんでもって幸星に作ってもらうの」
隆哉さんはニコニコ笑ってる。
「莉奈もくるくるしてみたいの!」
三人がいるとそれだけで目立つから、後ろに行列出来始めたよ?
隆哉さんが邪魔になるからって、横に移動してソースがついた莉奈ちゃんのほっぺを拭いている。
「莉奈ちゃん、水島さん、クッキーか、タピオカミルクティの方にいるからね」
「タピオカミルクティ! おねーちゃんそっちにいるのね! 幸星お兄ちゃんは、まだまだ終わらないの?」
「うん、あとちょっとしたら交代かな、先にいろいろ見てきて、うちのクラスの出し物はお化け屋敷だから、莉奈ちゃんは無理かもな」
「おばけ、やだ……」
「だろ?」
「莉奈、幸星お兄ちゃんと一緒がいい」
莉奈ちゃん! これが焼き担当じゃなかったら、抱っこぎゅうですよ!
うちの妹可愛いの、自慢したいんじゃ!
「じゃあ、タピオカミルクティ行ってくるな、終わったら連絡して、幸星」
「うん」
周囲の視線がオレとうちの家族に集中している。
あーうん、オレ、真崎家のDNAまったくないですからね、家族って言っても、信じられないだろうけど、家族なんだよ~。
隆哉さんと優哉は莉奈ちゃんを促して屋台を離れていく。
袋詰め担当の子がオレに尋ねる。
「今のイケオジとイケメンと、めっちゃ可愛い子、もしかして真崎君の家族?」
「だよ」
「えー! 似てない!」
「オレんとこなんかうるさくて来るなとか言っといたのに、お前、家族にいちいち報告すんのまめだな」
うーん……まあそれが本当の家族なのかもしれないけれど。
「なんとなく来る? って聞いたら皆行くって言うし、別にオレなんか劇とかにも出ないし、こうして屋台系ヘルプにまわってるだけだから」
「そっか、屋台だからな、劇やってたら誘いにくいよな! でもオレも親にはくるなって言っちゃったよ」
「わかる! A組の子と友達だけど、言ってたわー」
他の子達も手を動かしながらもその話題で盛り上がっていた。
ああでも、オレ、自分の学校関連の行事でこうして家族で来てくれたことって、もしかしてこれが初めてかもしれないと思っていた。




