◆21 体育祭です。
梅雨時でしたが、体育祭当日は晴れでした。
本部や来賓等のテント張り、保護者や来賓の受付のセッティング。各クラスのフラッグを張ったり、得点板の設置やトラックのライン引き、進行のチェック等々、実行委員で割り振られたメンバーで当日の準備を行う。
こういうところは、実行委員長をはじめ、2、3年の指示によって動けばいいので楽だね。
グラウンドに生徒達が椅子を持ち込むようにアナウンスがあり、そうなるともう開会式。
体育祭が始まった。
開会式
クラス対抗リレー(二年)
大縄跳び(一年)
部活対抗リレー
長距離走(選抜)
クラス対抗リレー(一年)
借り物競争(二年)
昼休憩
集団ダンス
クラス対抗リレー(三年)
PTA教職員競技(綱引き)
学年対抗リレー(選抜)
騎馬戦(三年)
スウェーデンリレー(選抜)
閉会式
こんな感じなプログラムです。改めて見ると走るなあ……って感じだ。
この間観に行った莉奈ちゃんの小学校の校庭と違って、グラウンドも広い。
組体操や集団行動がないところが比較的自由な校風と合っているんだけどさー。
その代わり創作ダンスが午後の部トップの演目になってる。
学年全体で3グループにわけられて、仮装とかもして衣裳も合わせて、保護者にどのグループのダンスがよかったかその場で投票もしてもらう。アニソン、洋楽、JPOPに合わせてダンス部が各々振りを考えて各グループに教えていたのを披露するわけです。
で、オレは開会式前からPTA来賓受付の為、校舎正面玄関に待機でした。
開会式中も保護者くるからね。
ていうか、このポジション、めっちゃ落ち着く……。校舎を間に挟んで、アナウンスが少し抑えめで聞こえるし、オレ、このまま一日ここでいいかもしれない。
とか思ってたらすぐに交代ですよ!
「一学年の大縄跳び開始だから」
「……はい」
「それと、一年は受付午後にしようって変更があったから」
「え……」
「午前中の方が一年二年が集中してるでしょ?」
いやいやいや、プログラム組んだ時点でそれはわかってたことじゃないの?
当日の係とかって、あらかじめそういうことを加味して決めるもんじゃないのか?
なんでその変更が今なの?
そういうことも把握して決定したんじゃなかったのか?
ああ……まあしょせんは高校生だもんな……うん……了解しました。
ただ、キクタンの要素が少しでもオレにあったら「嫌だ―オレここにいるんだーここがいいんだー」と椅子と机にしがみついてるかもしれない……。
いくら高校生に見た目が逆再生してるからって、オレ、アラサーだったんだし、そこまで大人気ないことはしませんよ。
しぶしぶ校庭に戻りました。
大縄跳びはそこそこの順位で終わり、部活対抗リレーに変わる。
キクタンが出るらしい。
キクタン、サッカー部でも瞬足だっていうからなー先輩が推したんだろうね。
それぞれの部活の道具、サッカー部ならサッカーボール、野球部ならグローブをバトン代わりにするんだと。野球部はバットじゃないのかと思ったんだけど、長さがあるものがバトンになるのはどうにも不利が生じるとかで、グローブ。剣道部だったら竹刀じゃなくて面だったりするわけです。
サッカー部はボール蹴りながらじゃないのかと思ったんだけど、進路妨害になるからそれはしないんだって。
そんなクラブ対抗リレーに出てるキクタンの応援をクラスのみんながしていた。
キクタンはクラス内でもムードメーカーだから人気者だ。
そんなキクタン、バトン渡しの時、大コケした。
どこのお笑い芸人かと思うぐらいのこけっぷりだった。
最初はみんな「キクタン~やらかす~」とか言って笑っていたけど、立ち上がった時のキクタン腿から脛まで流血してる?
遠目に見てもわかる。
実行委員の係が付き添って医務テントの方へキクタン退場。
「ちょ、オレ行くわ」
富原委員長にそう言うと、委員長も付いてくる。
キクタン大丈夫か?
医務テントに行くと、女子に囲まれて「大丈夫~?」「わ~すごいすりむいてる~」とか声をかけられててまんざらでもなさそうなキクタンがいた。
お前……ソレ痛いんじゃねーのかよ。オレの心配を返せ。
ちなみに、水島さん。保健委員でこの時間帯の担当だった為にキクタンの治療をしていた。
「ザッキー、トミー! 心配してきてくれたの⁉」
「心配するほどでもないから戻るか、真崎」
委員長の言う通りだな。
「うん」
オレと委員長が立ち去ろうとしたら、キクタンがわーわーと喚く。
「やだ、待って、痛いの! 優しくして! 友情が沁みるの!」
委員長がキクタンの背後をホールドしてオレに言う。
「真崎、沁みるほどオキシフルをキクタンの傷に振りかけてやれ」
「サー・イエス・サー」
「ぎゃー! やめて! 水島さーん! たーすけてー」
やかましいわ、この男。
クラス一の美少女JKの手当てなんて100万年早いわ。
水島さんはオロオロしてオレ達のやりとりを見てる。
「待って、ちょっとふざけました! ねえそれよりザッキー。クラスリレーのアンカー辞退させて、これじゃダメ」
最後の方はまともなことを言いだすので、オレは頷く。
まあなあ、体育祭のコレが響いて今後の部活に支障がでてもなあ……。
「ザッキーとチェンジして」
……はい?
キクタン、お前、何を言ってるの? そこはクラスの中でキクタンの次にタイムのいい奴をアンカーにするべきだろ。
「委員長、キクタンの次にタイムがいいのは?」
「佐伯かな?」
「佐伯とキクタンがチェンジすりゃいいだろ」
「なんで⁉ そこは友情に燃えるところじゃないの⁉ そういうの水島さん好きだよね⁉」
何言っちゃってんだよ。水島さんに話を振るなよ。困っちゃうでしょーが。
「莉奈ちゃんの運動会のお話聞いたら、ちょっと見てみたいなって思いますけど」
「ほら! 水島さんだってザッキーのちょっといいとこ見てみたいって言ってんじゃん!」
飲み会の一気コールみたいなセリフ言うな、キクタン。
「佐伯はなーラストのスウェーデンにも出るしー選抜リレーにも出るだろ、キクタンの代わりにアンカーにしたらちょっとアレじゃね?」
委員長の言葉に、そりゃー佐伯に負担かかりすぎだなと思った。
クラス対抗なら、キクタンの代わりやっても、まあキクタン負傷だから仕方ないと思ってくれるか……。
「しょうがねーな……やってもいいけど勝てないぞ。いいな」
「わーん、ザッキー心の友よー!」
お前はジャイアンかよ……。
次は長距離選抜だからその間、ここのテントで休むように言って、オレと委員長はクラスに戻ることにした。
逆再生してから、走ってばっかな気がするぞ、とくにこういう体育祭系。優哉を罰ゲームで走らせようとしたからか?
クラスのみんなにキクタンとオレが順番チェンジすると言うと、意見いうヤツはいない、みんな「キクタンがそういうならなー真崎―がんばれー」ぐらいで後はダンスの振りを熱心に反復練習してるやつとか雑談してるやつがほとんどだ。高校生~自由過ぎる~……。
逆再生前の15の頃だったら、「お前が走っても勝てねーだろーが」と怒号があがるんじゃないかとビクビクするところだ。みんな結構自由な感じだと、あの頃のオレだったらそういう周囲を見ることとかもできなかったろうな。学校行事っていうイベントだけでテンションダウンだし。
とにかくクラス対抗リレー。負傷の為、オレと順番をチェンジしたキクタンはそれでも瞬足だった。
「あいつアンカーで走らせても問題なかったんじゃね?」
オレがぶつぶつ言ってると佐伯がまあまあとオレの肩を叩く。
「なあ佐伯、オレ足そんなに速くないから、よろしくな」
「えー真崎速いだろースポーツ測定の時、結構速かったべ。むしろなんで体育会系のクラブに入ってないのレベル?」
「家庭の事情で入ってない」
「そっかー」
「あーやだやだ。緊張するー」
「大丈夫だよ、俺等の競技はそんなに注目されないから、むしろ次の二年の借り物競争が体育祭午前のメインだから」
確かに借り物競争の言葉が飛び交うんだけど、アレ何かあるの?
「あれ、告白大会に変わるから」
「へ?」
佐伯が言うには、借り物カードに告白したい人とか、好きな人とか気になる人とかそういうカードが混ざっていて、その場で告白大会になるらしい。
「ちょっと待てそれ公開処刑じゃねーか」
「だからそっちに注目があるから、一年のクラス対抗リレーなんてたいしたことないらしいよ」
プレッシャー感じなくなったのは救いだが、オレは二年の席の方へ視線を向ける。
なんで佐伯がそんなことを知ってるのかといえば、佐伯、陸上部で先輩からそういう話を聞かされたからだそうな。
佐伯はニヤニヤしながらオレを見て、とんでもないことを付け加えた。
「水島さんなんかは注目度高いから~ひっぱりだされてはしらされるんじゃね?」
ちょ、水島さあああああん‼




