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ルアクの屋敷に行きました

 でかい…、貴族の屋敷を少し舐めていたようだ、ちょっとしたデパートの様な大きさに少し怖じ気付く、いや、僕王様だけどね。

 アンズは留守番、僕とソマリの二人で屋敷を見上げる。


 大きな門に鉄格子、近付いた所で門兵に止められた。


「ジャコウ家に何用だ」


 門兵は二人、意外にも普通の人間だった。てっきり猫族や猫人だらけかと思っていたがそう甘くはないようだ、まぁ、普通に考えたら猫族に門兵が勤まるとは思えない。


「猫喫茶アンズの者です、デリバリーにうかがいました」

「話は聞いている、通れ」

「どーもー」

「待て、通って良いのはソマリ嬢だけだ、他は通すなと言われている」

「…ほう、了解した」


 屋敷の中にソマリだけを入れる、正直想定の範囲内だ。


「ナァ…」

「大丈夫だから行っておいで」

「分かったナァ」


 しょんぼりして不安そうなソマリを門から見守る、もちろん一人にする気など無い。


「じゃあ僕はこれで」


 門から離れて屋敷の様子を伺いながら死角に移動する。


『ケット・シー、ゲートよろしく』

『まかせるにゃんごー』


 ゲートを潜り猫の城へ、そして猫の城から…。




「ケット・シー、ジャコウ家の屋敷、ゲート開ける?」

「我輩猫の居るとこならどこでもゲート開けれるにゃんご、ふふふーん」

「うん、じゃあよろしくー」

「にゃんごー!」


 空間に穴が空く、その向こうに見えるのはソマリと、そしてルアクと思われる猫族。

 全体的に黒と灰色な色合いの猫族、いや、猫族と呼ぶには若干野性味を感じる。




 ゲートを潜り颯爽と屋敷内部に登場する僕、門も屋敷も何の障害物にならない。この便利な移動手段こそが猫喫茶デリバリーを可能としているのだ。


「ソマリ、おまたせー」

「イオリさん!ありがとうナァ」


 ルアクは僕の登場に驚いて呆気に取られている様子だった。


「初めましてルアク、僕はイオリ。まぁ、猫族なら知ってるよね」

「お…王様…」

「はいご名答、なら僕の用件も分かるよね」

「…はん、たとえ猫の王様だろうと人の恋路に口出す権利は無いと思うんだがね?」

「ソマリが嫌がって無ければルアクの言う通りさ」

「嫌がる?そんなはずが無いだろう、僕は貴族だぞ」


 準男爵ってかなり下の方の貴族だろうに、それにソマリだって金には困っていない、喫茶アンズは歩合制だ、ソマリには銀貨を払っている。一般家庭以上の生活が出来るだけの金はある。



「とりあえずこれでも飲んで落ち着いてよ、コーヒー淹れてきたんだ、冷めないうちにどうぞ。あやしい物は入って無いから安心して、なんなら砂糖すら入って無い」


 コーヒーにはリラックス作用がある。それにせっかくアンズが淹れてくれたんだ、無駄にするのももったいない。

 小さなゲートを開きコーヒーサーバーとカップを取り出す。本当に便利な力だ。


 コーヒーサーバーからカップにコーヒーを注ぐと一瞬にして部屋全体が香ばしいコーヒーの香りに包まれて喫茶店の匂いが立ち込める。


「ん、おお…、なんて高貴な香りチュゥ…、あ、いや香りなのだ…」


 チュゥ?うん、普段コーヒー飲まない人でもこの香りはみんな好きなんだよね。


「はいどうぞ」

「…庶民の飲み物なぞいらん」

「せっかくだから飲みなよ」

「ん、んん。いや…しかしだな」


 僕の命令権に少し抵抗している?やはり猫族と呼ぶには違和感を感じる。


「それ私が淹れたナァよ」

「うむ、ではいただこう!」


 淹れたのはアンズだけどね…。


 ルアクがコーヒーに口を付けた瞬間目がカッと見開く、ああ、やはり苦かったか?しかしルアクが口に出した言葉は意外なものだった。


「なんだこの鼻を抜ける複雑な香りは…、この重厚な味わいはまるでスープのようだ、苦味が目立つがそれだけじゃないな。酸味?油の様な旨味もあるな…、これは、これは!美味しいっチュゥ!」


「おお、初めてコーヒーの良さを分かってくれる人が!」

「猫の王もこの味が好きなのかチュゥ?いやぁ、これは良い物だチュゥ」

「チュゥ?」

「んん!良い物だな!」

「いや、今さら…」

「…」

「…おかわりいる?」


 ルアクはカップをそっと差し出してくる。もう一度コーヒーを注いでやると語りだしてくれた。



「実は…ジャコウ家は大きく分類すれば猫族だけど、厳密には独立した種族でな…。それで少し風変わりな猫訛りが…、格好悪いから黙っててくれよ」


 なるほど、それで猫の命令権の効果が薄かったという訳か、まさか純粋な猫族では無かったとは。命令権に対してシグレと同程度の抵抗力がありそうだ。



「…猫の王よ。コーヒーは確かに美味かった、だがソマリの事は話が別だ」


 まぁ、そうだよな。しかし相手が猫族である以上僕の絶対的優位は変わらない、僕は猫に属する全ての王なのだから。


「僕が猫の命令権を行使したらルアクの負けだけどそれは分かってるよね?」

「それは…、もちろん分かっている」

「とは言っても僕もそれは本意では無いんだ、ルアクは聞いてたよりはまともな奴に見えるからね。コーヒーの良さも分かってくれたし。一方的なのはよろしくない」

「ではどうすると言うのだ」


「猫の命令権を行使する!ソマリが嫌がる言動をとった際にはすぐに引き下がれ!」

「ぐっ…、分かった。2度と会うなと言われるよりはマシだろう」


「追加命令!猫喫茶アンズの宣伝、及び投資もしろ!そしたら特別優待として地域外のここも本店のデリバリーの範囲とする」

「む、…それは願ってもないことだ」

「本店に来た際にも優待しよう、ソマリのライブも良い席を用意する」

「なんと!うむ!是非足を運ばせてもらうチュゥ!」



「ソマリ、それで良い?」

「うん、良いナァよ、そもそもしつこいのが嫌だっただけナァ、私が嫌がれば引き下がるというなら問題無いナァ」

「はい、じゃあ商談成立という事で」



ジャコウネコはコーヒーを食べる猫です。

とは言っても消化出来ずに…、興味のある人はジャコウネコやコピ・ルアクなどで検索検索ぅ!



あー、ダークなの書きたくなってきますね。これの次はダークなの書きたいです。

猫の王、もうしばらく続きますけどね!

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