ポロリもあるよ!
☆【猫喫茶デリバリー!】☆
【猫、猫人、猫族。担当地域なら指名可能!】
【可愛いにゃんこ達が「いただきます」から「ごちそうさま」までお付き合い!】
【お残しは許さないにゃん☆ポロリ(抜け毛)もあるよ!】
料理のレパートリーにお肉系も追加、料理人もたくさん雇い、猫の城を中継して全国の猫達総動員の大事業となった。
人気な猫を指名した場合は値段を上げる。売り上げは面白い程に上がっていった。この地域で一番人気なのはやはり歌姫ソマリ、人気が有り過ぎて銀貨が動く。
「あの、シグレさん…空いてますでしょうか?」
2番人気、何故かシグレ。大人しい感じの女性客からリピーター続出。
「アンズちゃんって来てくれないの?」
本店の店長なので無理です。
「本店で見かけた三毛猫の猫族の男の子、リストに無いんだけど」
はい、僕も無理です。転送システムは僕とケット・シーの連携が不可欠なので。
ちなみにテルはカブトの部下なので除外。
「猫3匹と…ね、猫族の…お、女の子を…1人…」
猫をカモフラージュに下心が見えるパターン。
「猫族の女の子5人!」
猫族ハーレム、下心丸出しパターン。
「猫族の男の子、仲良い感じの二人組でお願いします」
女性客からちょくちょくあるオーダー。見て楽しむらしいです、はい。
「猫人3人、踊るのが好きな子お願い」
歩くぬいぐるみの様なファンシーな猫人がご家族に大人気。イベントでも大盛り上がり。
「猫10匹!」
もう単純に猫が好きな人、しかし残念、猫だけではデリバリー不可能です、現実的な問題、食事が運べません。
もう自分でもびっくりするくらいの人気となってしまった。
この世界初の猫喫茶を猫ごとデリバリー、そんなの元の世界でも不可能だ。
「そういえば、なんでシグレあんなに人気ニャ?」
「確かにね、どう考えても接客向きじゃないのにね」
言われてみれば確かに不思議だ、ちょっと怖いがイケメンだから納得していたけれど、猫を求めている客が何故ジャガーのシグレを?
「ううむ、少し不安だね、こっそり様子見てくるね」
猫の城を中継して小さな除き穴の様なゲートを開きシグレのデリバリー先の様子を除き見る事にしてみた。
客は大人しそうな人間の女性、シグレを指名する人は人柄が控えめな女性が多い。なぜわざわざヤンキーみたいなシグレを指名するのか、正直正反対な気がする。
………
……………
「あ、シグレさん!来てくれてありがとう」
「またあんたか、飯持ってきたぞ」
「う、うん。あの…一緒に食べる?」
「あ?他の客も待ってんだからさっさっと食えや」
「そ、そうだよね…」
「…おい!いただきますが聞こえねぇぞ」
「ひゃい!い…いただきます」
「おう」
「ちんたら食ってんじゃねぇよ、こっちはおまえの為に時間作って来てんだぞ」
「私の為に…、えへへ」
「フォーク止まってんぞ」
「えへへ」
「あー、どうしよう、お腹いっぱいかも…」
「あ!?残ってんじゃねぇか。フォーク貸せ」
「え?…うん」
「おら!口開けろや」
「え、え、…あ、あーん……むぐ!?…もぐもぐ」
「食えるじゃねぇか、ほら、もう一口」
「はわわわわわ…」
……………
………
ゲートをそっと閉じて無言で喫茶店に戻る。
「あ、イオリ、おかえりニャ。どうだったニャ?」
「僕には理解できないイケメン限定の世界があったよ…」
「ニャ?」
「あ、イオリさん、ちょうど良かったナァ」
そこへやってくる一番人気のソマリ嬢。
「担当地域外からも出張依頼来ちゃって困ってるナァ」
「断れば良いじゃない」
「お金持ちのボンボンで…、っていうか前の職場でしつこかった客ナァ…、食い下がってきてやっぱりしつこいのナァ…」
「んー、じゃあ一緒に行こう、転送するよ」
「ありがとうナァ、ルアクさんは猫族だからイオリさん居れば安心だナァ」
「その人ルアクっていうんだ、猫族なら最悪命令権でソマリを諦めさせる事が出来るね」
「ルアクさんはジャコウ家の人ナァ、ルアク・ジャコウ。けっこうな有名人ナァよ」
ルアク・ジャコウ、この世界で初めて名字を聞いた聞いた気がする。いや、セカンドネーム?ファミリーネーム?正直正しい言い方なんて分からない。
「へー、なんだろう、セカンドネームっていうのかな、そういうのあるんだね」
「王族や貴族にはあるナァよ。猫族の貴族っていうと準男爵のジャコウ家と士爵のサーバル家があるナァ」
「ふーん…、ところでそのルアクは何を注文してるの?さっそく作ろう」
「それが…、どうせ口に合わないから歌だけ歌いに来いって、金だけは多めに払うの一点張りでもう正直うんざりナァ」
「よし、じゃああの激マズコーヒー持ってくニャ、ソマリが淹れたって言って無理矢理飲ませるニャ、女の敵にはにっがいのたらふく飲ませるニャ」
話を聞いていたアンズがさっそくコーヒー豆を砕き始めていた。
「コーヒー、美味しいと思うんだけどな…」
猫喫茶をまるごとデリバリー。
家の中ボロボロになりそう。引っ掻き傷と抜け毛の惨劇。




