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ケット・シーが居ました

今回ほぼ会話です。

 ソレは猫の城に近付くだけで見えてきた、ソレとは謎の声の主。おそらくアレに違いない、アレとは巨大な黒いヌイグルミ。一見するとヌイグルミに見えてしまうほど現実味の無い大きな大きな猫人。


 更に近付くとその猫人は黒一色では無いことが分かる、お腹が真っ白だった。


 城に辿り着くとその大きさが良く分かる、見上げる程に大きい、さっきのガラガラドンと良い勝負だろう。

 足元にはたくさんの猫と猫人が居た、助け出された者達に違いない。


「あなたが助けてくれたの?」

「そうにゃんだけども、そもそも我輩のせいにゃんごー」

「あなたは誰?」

「我輩は猫である!」

「またまたご冗談を」

「いにゃー、確かに冗談みたいな大きさにゃが猫にゃんごー。正確には初代猫人にゃんご」

「初代…、え?初代猫人って、ええええええええ!?」


 確か聞いた話では初代猫人は最初の王様が大きくなったのが起源だと…。


「そうにゃんご、最初の王様、正真正銘のケット・シーにゃんごー」

「生きてるとは…、確かに壁画で見た姿にそっくり…」

「むしろその壁画が我輩にゃんごー!」

「は、はは。もうよく分かんない」


「現王様には迷惑かけてすまにゃんだー」

「どういうこと?」

「城への道を開いたのは我輩にゃんだよ。ヤギの王に利用されるとはにゃー」

「もうなんか色々聞きたい事多くて混乱してるんだけど、…ヤギの王ってさっきの奴?」

「本人は家畜の王って名乗ってるにゃんご、奴も初代王様…いや女王様?家畜に敬意を示さない者が増えると力を増していってたまに姿を現すにゃんよ。食べる前には祈りを、そして残さず感謝して食べなきゃダメにゃんご」


「家畜の王は何の為に現れるの?」

「簡単な、たった一つの理由にゃんご。愛されたい、ただそれだけなんだにゃんごー」

「え…、それなら、何で猫に執着するの」

「猫は存在するだけで愛されるからなんだにゃんご、羨ましいんだにゃんごー…」

「愛するって、具体的には?」

「自分達は食材じゃない、生き物として敬い殺し、生き物として敬い食べてほしい。って言ってたにゃんご、ほんとにそれだけなんだにゃんご」

「知りあいなの?」

「お互い永く生きてれば会話することもあるにゃんご」


「…あなたはどうして現れたの?」

「我輩は、『あ、今出ないと猫達危ないんじゃない?』って直感で出てくるにゃんご」

「ゆる!そして雑!」

「猫なんてそんなものにゃんご、でも我輩ここからは出られない縛りがあるにゃんごー、久しぶりに出てきたけど特に何もしてやれないかもにゃー、力も一部失ってるしにゃー」

「力?猫の王の力のこと?」

「そうにゃんご、猫の王はみんな代々我輩の力のレプリカを発生させるにゃんご、だから我輩が一番強い力持ってるってわけにゃんごー」

「へー…」



「てことは…、なに、あいつって、ちゃんと『いただきます』してお肉食べて、残さず感謝して食べれば満足して帰っていくの?」

「ざっくり言っちゃえばその通りなんだにゃんご。でも世界中の人達全員がそういう気持ちでご飯食べるかって言われると難しい事なんだにゃんご…」

「へー…」



 僕はシグレを見つめる、確か大型肉食獣人の主食は肉だったはずだ。


「お?なんだ三毛、なんか文句あんのか?」

「いやぁ、確かシグレの主食って肉だよなぁ、って」

「…、俺達は誇りを持って肉を食う、子供の時だって飯なんて残したら親父に殺される。食えなければ保存食として加工し、責任を持って自分で食う」

「主食が肉の獣人ってみんなそうなの?」

「俺が知る限りだったらな。…狩りが出来る歳になったら成人の儀がある。自分で獲物を仕留めて、祈りを捧げ、余すとこなく利用する。そうやって皆命の重さを叩き込まれる」

「…意外と真面目で驚いたよ」

「けっ、あんま言いたか無かったけどな、命を軽んじていると思われるのは癪に障る」

「そっか、ごめんね」


「んなこたどうでも良い、それよりよぉ、俺ぁいつまでこのままなんだ?ああ!?」


 猫の城の領域に入った時点でシグレは猫族並みに縮んでしまっていた、凄まれても全く怖くない。むしろ可愛い。


「すまにゃんだー、大型の獣人が暴れでもしたら猫達が怯えるにゃんご…。王様権限の一つ、この聖域内での力の封印にゃんごー」

「暴れねぇよ!」

「でも我輩猫への命令権の力を失ってしまったにゃんごぉ…、何かあった時力業になってしまうと、ねぇ?危険が危ないにゃんご?」

「あ!?それは何か!?俺を殺しちゃうかもしれねぇってか!?」

「半殺しでやめとくくらいの加減はするにゃんごー」

「…けっ、猫の王ってなぁどいつもこいつも…。第一俺はそこのクソ三毛に猫の味方しろって命令されてっからどっちにしろ何もできねぇよ!」

「にゃんと!猫科とはいえ他種族の君に、継続的な命令を!?そんなの我輩のオリジナル命令権と同等な力にゃんご!」


 ケット・シーは素早く僕に振り向きジーッと見つめてくる。うーん…、まの抜けたその顔を近付けられると笑いが込み上げてしょうがないのだけど。

 元の世界ならば面白画像としてネットに拡散したいところだ。


「我輩に何か命令をしてみてくれにゃんご」

「う、うーん。じゃあ…踊れ」

「う、にゃ…、にゃんごー!」


 ケット・シーは右に左にドッスンドッスン、両手も揃えてニャンニャンダンス。

 その度に揺れる地面がグラグラ。流石に体がでかすぎる。


「わ、わー!ストップ!ダンスやめ!」

「にゃんと…、こうなるからダンス我慢してたにゃのだが、我輩にも有効とは、これは間違いなくオリジナルの命令権にゃんご…」

「つまり?」

「我輩の力が一つ君に移ってしまったにゃんご」

「僕の命令権は初代の力だったのか…、道理で…」




「おぉい!でか猫!結論出たなら早く俺を元の大きさに戻しやがれ!」


家畜の王の意外な目的、そして撃退方法。

家畜を哀れみ食べない人もいますが、自分が食べてるのは命なんだとちゃんと認識して感謝して食べる事こそが供養だと思います。

お肉美味しい!フィレ肉大好きです!でもレバー苦手で…、あ、家畜の王が来ちゃう!

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