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婚約破棄された令嬢ですが、冷徹公爵様に拾われました。─えっ、溺愛ってこういう意味ですか?  作者: 雨野しずく
第三部:王宮の罪と罰――公爵夫人に牙を剥いた者たちの結末
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第12話:白昼の反乱と、声の力

王都・中央議事堂――昼。


その日、王都中の貴族と高官が集められた。


議題は「改革案の最終可決」。

しかし、その裏では――“旧貴族派”が最後の逆襲を企てていた。


会場を包む張り詰めた空気のなか、私は壇上に立っていた。


(これが……最後の場)


見渡せば、冷たい視線と、探るようなまなざしが入り混じっていた。

王妃陛下の姿は議長席に、そして私の隣には――クレイグ様。


「最後まで堂々としていろ。お前は、この国の“未来”を語る者だ」


「……はい」


深く頷き、私は息を吸い、声を張った。


「私は、改革を止めません。

身分に関わらず働く者が尊ばれ、正しい声が届く社会を目指します」


「それが“王都の未来”であり――私が命を懸けて願うことです!」


その瞬間だった。


「綺麗ごとを並べるな、女狐め!」


会場の後方で、怒声が上がる。


立ち上がったのは、旧貴族派筆頭・バルド公爵。


「その女はシュトラウス公爵に取り入り、王都の金を牛耳っている! 既に証人もいる!」


続いて複数の旧派貴族が立ち上がる。


「証人を、連れてこい!」


すると――現れたのは、フードをかぶった一人の男。

しかし、その顔を見た瞬間、空気が一変した。


「……エドワルド殿下?」


第二王子・エドワルド。

かつて私を陥れた人物が、今や騎士団の制服をまとい、毅然と立っていた。


「私は、過去に過ちを犯しました。

だが今、私は自らの目で真実を見てきた者として証言します」


「公爵夫人は潔白です。彼女は私を恥ずかしいほど真っ直ぐに導いてくれた。

……そして――私が捨てたものを、今も信じ続けている」


どよめきが広がる。


バルド公爵が声を荒らげた。


「戯れ言だ! 第二王子など既に役目を解かれた身分! そんなものの証言が通るか!」


その時だった。


壇上に、もう一人の人影が現れる。


「では、私の証言はどうだろうな?」


会場が凍りつく。


王妃に次ぐ、実質的な王都軍の最高権力者――

“鉄血公爵”グラディウス・シュトラウスが、重厚な足取りで壇に立った。


「我が家は、すべての財務記録を公開する用意がある。

隠すものなど何もない。捏造と嘘で塗り固めた貴様らの言葉こそ、もはや“罪”だ」


「……ぐっ……」


反論の余地を奪われ、バルド公爵は一歩、後ずさる。


その瞬間――王妃が立ち上がった。


「本日をもって、旧貴族派による妨害行為を“王命違反”と認定します」


「バルド公爵、および関係貴族には、全財産の半額を王宮に返還させ、貴族議会から永久追放とします」


「それが――この国の、裁きです」


静寂。そして、拍手が一つ、二つと増えていく。


私は思わず、胸に手を当てた。


(終わった……本当に)


隣でクレイグ様が小さく頷く。


「……よくやったな。これで、お前がこの国に刻んだ“声”は、永遠に残る」


「……ええ。でも、私だけの力じゃありません」


「君が最初に立った。最初に声を上げた。その一歩が、すべてを変えたんだ」


私は静かに、彼の手を取った。


「これからも……一緒に、歩いてくれますか?」


「もちろんだ。公爵夫人――いや、“アリシア”」


彼が名前を呼んだその瞬間、私は心から、笑うことができた。

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