表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された令嬢ですが、冷徹公爵様に拾われました。─えっ、溺愛ってこういう意味ですか?  作者: 雨野しずく
第三部:王宮の罪と罰――公爵夫人に牙を剥いた者たちの結末
19/28

第4話:裁きの朝と、新たな誓い

王宮での断罪から一夜明けた朝。


公爵邸の屋敷は、異様なまでの静けさに包まれていた。

だがその静けさは、嵐の後の穏やかな静寂――それが終わったのだと、ようやく実感できる時でもあった。


「……おはようございます、公爵様、公爵夫人様」


朝食の席に現れた執事長は、恭しく一礼しながら、一枚の紙を差し出した。


「王都三大新聞、今朝の一面でございます。“王妃の断罪”、そして“公爵夫人の毅然たる証言”。いずれも、非常に好意的な論調です」


「……大ごとになってますね」


私はその紙面をそっと受け取り、目を通す。


『第二王子、称号保留と王位継承権停止』『平民出の元女官、懲役および労働刑――虚偽の罪が明らかに』


見出しには、堂々とした文字が並び、その下に、仮面舞踏会での事件のあらましと、王妃陛下の裁定内容が詳細に記されていた。


「“冷徹公爵の隣に立つに相応しい女”――だそうですわ、私」


「当然だ」


隣に座るクレイグ様は、パンにバターを塗りながら、平然と告げる。


「君がこれまで耐え、戦ってきた結果だ。“正しさ”は、時に痛みを伴うが、必ず報われる」


「……ありがとう、ございます」


私は、思わずナイフとフォークを置き、彼の顔をじっと見つめた。


「この立場にいることは、まだ少し怖いです。でも……今は、それ以上に誇りに思えるんです。私が選ばれた“意味”を、ようやく理解できた気がして」


「なら、もう迷うな」


クレイグ様は、そっと私の手を握りしめる。


「君は公爵家の“誇り”だ。名ばかりではない、“力”がある。だからこれからは……」


彼の瞳が、強く私を見据えた。


「私の代わりに、“社交界”をまとめろ」


「え……?」


「次代の社交界は、君のような者に導かれるべきだ。偽りを許さず、誠実さで周囲を照らす者に」


「……それは、命令ですか?」


「願いだ。そして、信頼の証明でもある」


私はその手を、ぎゅっと握り返した。


「……わかりました。アリシア・アルディネ、公爵家の名に恥じぬよう、誠実に務めを果たします」


二人の手のひらが、しっかりと重なる。


それは――

ただの契約妻ではなく、ただの“愛する者”でもない、

“共に未来を築く”パートナーとしての誓いだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ