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俺は救世主なんかじゃない!~転生勇者に最愛の姉を殺されたシスコン救世主の復讐劇~  作者: 赤羽ロビン
第四章 和解する者ユァ―リカ

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第九十七話 ロビンとの対話 前編

興味を持って下さりありがとうございます!

 約束通りロビンは翌日に連絡をよこし、ユァーリカはそこでヨルクの身柄を引き受けための段取りも行った。


 話し合いの結果、ロビンと落ち合う場所へはユァーリカとスコット、ティーゼが行くことになった。クロエは帝国側であるロビンに会わせてよい存在ではないし、それはエルも同じ。ルツカは勿論論外だ。


「しかし、“ロビンは言わば私の後輩。顔を見ておきたい”だなんてクロエも無茶言うな。最終的に聞き分けてくれたから良かったが」


 道中、スコットはそうぼやくと、ユァーリカとティーゼも苦笑いをしながら頷く。落ち合う場所はロスリック平原を抜けた先にある小高い丘。今は帝都近くまでムサシを近づける訳には行かないため、彼らはそれなりの距離を歩いていた。


「まあ、姉さんもそういうところがあったよ」


「そう言えば、クロエとユァーリカのお姉さんは似てるって言ってたわね」


「そうなんだけど、そうかなって思えてきたのは最近で」


「えっ?」


 要領の得ない話にティーゼが思わず聞き返す。ルツカがいれば上手く彼の思考を読み取ってくれたかもしれないが、今はいない。ユァーリカは頭をかきながら、たどたどしい説明を始めた。


「何ていうか、違うところはあるんです。当たり前ですけど。前はその違うところが目についていたんですけど、今は逆に似ているところが目につくというか……」


「あー、なるほど。ユァーリカは一歩前に進むことができたのね」


「え?」


 今度はユァーリカが聞き返す。そんな彼の様子が可笑しくて、ティーゼはクスリと笑みを浮かべた。


「以前はお姉さんへの思いが強すぎたから、クロエさんがお姉さんに似ていることを認められなかったんじゃないかしら。だけど、今は違う。ユァーリカの目には色んなものが映っている。だから素直にクロエさんがお姉さんに似てるって認められる」


「……そっか」


 ティーゼの言葉はユァーリカの中にストンと落ちた。


 姉のことは忘れられない。いや、忘れられるはずもない。だが、それと姉への思いに囚われることは別物だ。自分の弱さに向き合い、認めたことで、ユァーリカは本当の意味でリンダの思いと向き合えるようになったのかもしれない。


「凄いですね、ティーゼさん。まるでルツカみたいだ」


「私はルツカほどは頭の回転が早くはないわよ。でも、まあ、人生経験がそれなりにあるからね」


「人生経験、ですか?」


 ティーゼは意味ありげにウインクをしながら、ユァーリカに答えた。


「女はね、恋をするほど賢くなるの。つまり、いい女は色んな恋をしているものよ」


「聞き捨てならないな、ティーゼ。一体どいつのことだ、それは」


「おっとっと!」


 ユァリーカは真顔で詰め寄るスコットと笑顔でやり過ごそうとするスコットに苦笑いをしながら歩くうちに目的地が近づいて来た。そして、そこに人の気配があることを感じると、二人の雰囲気はすぐに切り替わった。


「二人……か。隠れている奴はいなさそうだが」


 スコットがそう言うとマナサイトを使って相手を確認していたユァーリカが驚きの声を上げた。


「いるのはロビンと……まさか!」


 ユァーリカは様子をうかがうのをやめ、ロビン達の前に姿を現した。


「おお、来てくれて嬉しいよ」


 ロビンはユァーリカにそう声をかけた後、少し遅れて姿を見せたスコットとティーゼに目をやった


「キミ達とは初めてだが、ユァーリカの仲間だな。初めまして。察しがつくかもしれないが、私がロビン。ミリオンメサイヤの纏め役、勇者王をしている者だ」


「よろしく。俺達はスコットとティーゼ。元ベルバーンの冒険者だ」


 スコットはロビンが自分達にまで声をかけたこと、ロビンの隣に立っている人物にやや驚きながらも自分とティーゼの名を名乗った。


「オレの仲間も紹介してよいかな? 神聖エージェス教国の教皇の姉、エメリーヌだ。訳あって協力して貰っている」


 エメリーヌはエルの影武者をしていただけあって、容姿はエルと瓜二つだ。それに加えて、マナサイトに映るマナの流れもかなり似通っている。これは今まで受けた教育、環境でさえもほぼ同じという特殊な状況のなせる業だ。


 が、今、ユァーリカが注意を引かれたのはそうした点ではなかった。


「エルのお姉さんか何で!」


 帝国と対立している神聖エージェス教国側の人間であるエルの姉がロビンの隣にいるという事実はユァーリカにとってすぐには理解できないことだった。


「私は望んでエージェス教国にいる訳じゃない。それはエルも同じ。ロビンの目的が叶えば私は幸せになれる。多分エルも」


「一体どう言う……」


 ユァーリカはそう問いただしながら、エルが気にかけていたのは姉や住民の安否についてであって、教団そのものについてはあまり頓着していなかったことを思い出した。


「興味を持ってくれるなら是非話したいんだが、その前に今日の用件を済ませてしまいたいな。それでも構わないか?」


「……ああ、分かった」


 ユァーリカが返事をすると、ロビンの前に突如桃色の扉が現れる。そして、それがゆっくりと開くと、中からヨルクが現れた。


「ヨルク、無事か! 良かった!」


 ユァーリカは事前に注意されていたにも関わらず、ヨルクに駆けよってしまった。


「ああ、傷も癒えた。俺は健康そのものだ、ユァーリカ」


「怪我の治癒や必要そうなことはこちらでさせて貰った。不足がないといいが……」


 ユァーリカの様子をうかがうようにロビンはそう声をかける。事前の打ち合わせ通り、ティーゼが周囲を警戒している間にスコットがヨルクの体を探り、ユァーリカがマナサイトで彼のマナの流れに異常がないかを確かめる。それらが終わると、ユァーリカは大きく頷いた。


「特に問題はないみたいだ」

「良かった。肩の荷が降りたよ」


 ロビンは安心したように息をついた。実際、彼はほっとしていのた。ここで問題があれば、この先には進めないのだから。


「で、良かったら、さっき話していたオレの目的を話してもいいかな?」


「ああ」


 ユァリーカがそう言うと、ロビンはゆっくりと語り始めた。


「オレの目的は皆に自由を与えることだ」


「自由?」


 聞き慣れない言葉だが、ユァーリカには意味が分かる。しかし、それがロビンの口から出る理由が分からなかった。


「ユァーリカがどう思っているかは分からないが、帝国は腐っている。貴族は自分の保身といかに庶民から搾取するかしか考えていないし、皇帝はボンクラ。挙げ句の果てには、自分達のワガママを通すために世界のマナを消費する始末だ」


「確かにな」「ああ」


 すでにその代償も含めてミリオンメサイヤについて聞いていたスコットとヨルクが頷く。


「帝国があってはやがてこの世界は滅びる。だから、帝国を滅ぼし、新しいシステムを持った国を作りたい」


「それが皆に自由を与えることに繋がる、のかしら」


 ティーゼが半信半疑でそう問うと、ロビンは大きく頷いた。


「そうだ。オレが……いや、オレとエメリーは神聖エージェス教国と帝国を無くし、新たに民衆が自分達の統治者を選ぶ国を作りたいと思っている」

読んで頂きありがとうございました! 次話は明日の7時に投稿します!

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