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俺は救世主なんかじゃない!~転生勇者に最愛の姉を殺されたシスコン救世主の復讐劇~  作者: 赤羽ロビン
第三章 救世主ユァ―リカ

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第八十九話 再会、そして……

興味を持って下さりありがとうございます!

「ルツカっ!」


 小さかったその姿が次第に大きなる。そのことに励まされ、ユァーリカの走るスピードがどんどん上がる。息が上がり、疲労で足がもつれても彼の足は止まらない。


 走る、走る、走る。


 どれくらい走ったかなど最初から意識にない。だから、ようやくルツカに手が届くようになった時、ユァーリカは何かを感じるよりも早く、ルツカへ手を伸ばした。


「ハンス、痛いよ」


 やっと出会えた恋人が耳元で囁くとユァーリカは腕の力を緩める。が、離すつもりはなかったし、それはルツカも望んでいなかった。


「ごめん、ハンス、心配させて」

「いいんだ、こうして無事に会えたんだから」


 囁き合う二人の間に漂う甘い雰囲気。だが、それをぶち壊すようにムサシから放たれた砲撃音が辺りに響く。二人がお互いの元へと走っていたときには気づいていなかったが、《悪食竜ウロボロス》が倒れた後、残った勇者を掃討するために、再びムサシが砲撃を始めていたのだ。


「ハンス、会えたのは嬉しいけど、とにかく今は──」

「ああ、みんなの所へ戻ろう」


 ユァーリカはルツカに事前に決めてあった合流場所へ向かおうと言い、歩き始める。だが、そんな二人の歩みはすぐに中断させられた。


「待って……くれよ……ユァー……リカ!」


 呼び止めたのは息も絶え絶えなヨルクだ。ユァーリカの脚力は、既に常人離れした域にある。したがって、後を追いかけていたヨルクは息が上がってしまったのだ。


「ヨルク、あなたも無事なのね! クロエさんやエルも元気?」


 ついさっきまで走っていたわりにはルツカも元気だが、これは彼女が使った魔法が影響している。それはともかく、ヨルクは短くない時間をかけて荒い呼吸を整えてから、ルツカに返答した。


「元気そうで安心したよ、ルツカ。皆も大丈夫だ。まあ、状況はかなり変わっちまったが、それはおいおいな。とにかく、今はムサシに行こう」


 ルツカは聞き慣れない単語に首を傾げながらもヨルクの言葉に頷いた。それもまた、ヨルクが口にした“状況が変わった”という言葉に含まれるものだと考えたのだ。


「エルも大分容赦ないな」


 三人がいる場所から戦場までは大分距離があるが、それでもムサシから砲弾が打ち込まれる度に勇者達から悲鳴が上がり、混乱が増していくのが分かる。もはや、ミリオンメサイアは潰走状態だ。


「もうこっちの勝ちは決まったようなもんなのに、そこまでしなくてもいいのにな」


「ハンス、相手の方がまたまだ数が多いのよ。油断は出来ないわ」


「そっか。確かに」


 頷いた拍子にユァーリカはバランスを崩してよろめくが、まるでそれを予期していたかのようにルツカが腕をとる。彼女にはユァーリカが連戦で疲労していることが分かっていたのだ。


「ありがとう、ルツカ」

「いいの。これが私の役割なんだから」


 そう言いながら、ルツカはユァーリカに笑顔を見せる。ヨルクは甘い雰囲気を醸し出す二人に辟易へきえきしながらも、周りを見渡して状況を把握しようとする。


 と、その時、ミリオンメサイアが集まっている場所に向けて緑の光が放たれた。それは不吉な音を立てながらミリオンメサイアへと向かい、瞬時に爆風と轟音を生む。


「これは!?」


「ミリオンメサイアを攻撃している。しかも、ここから近いぞ!」


 光が放たれた音を聞いてヨルクが叫ぶ。だが、その言葉は続いて打たれた光が立てる音にかき消され、ユァリーカ達には届かなかった。無慈悲に連射された緑の光が止まった時、ユァーリカがポツリと呟いた。


「ミリオンメサイアが全滅……」


 ユァーリカの言葉はただ単に口からこぼれただけで、独り言に近いものだ。だが、この場には一人だけ、それに応えたものがいた。


固有技能ユニークスキル、《鬼火オーガフレイム》と《冷血地獄コキュートス》の合わせ技だ。極大の破壊力の代償として炎で自らの体を焼かれる《鬼火オーガフレイム》のデメリットを《冷血地獄コキュートス》のデメリットで相殺し、連射している。効果は見てのとおりだ」


「ロビン、あなた」


 ルツカは、ロビンの目が宿す妄執の光に何かを感じ、ユァーリカの前に立つ。だが、ロビンにはルツカのことは目に映っていない。


「ユァーリカ、キミとルツカは帝都で出会った方がドラマチックだと思うんだ」


「どらま……?」


 聞き慣れない言葉に戸惑うユァーリカだが、ロビンはまるで気にした様子もなく喋り続ける。


「キミにはもう帝国と戦う動機がないだろう? だが、ここで終わっては中途半端なんだ。白黒つかない結末の物語じゃ、読後感が良くない。読者は何時間も費やしてキミの冒険を読むんだ。それに見合うような結末を用意するのは書き手にとって義務だ。違うか? 違わないだろ」


「いや、一体なんの話をしてるんだ、あんたは!」


 理解の出来ない話にユァーリカは問い返す。


「端的に言おう」


 ロビンはミリオンメサイアを焼いた緑の光を剣の形にして、ユァーリカに向けた。


「ルツカは返してくれ」

「誰がお前に渡すもんかっ!」


 ユァーリカは吼えるようにそう言うと、ロビンに向かって突進した!

読んで頂きありがとうございました! 次話は明日の七時に投稿します!

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