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俺は救世主なんかじゃない!~転生勇者に最愛の姉を殺されたシスコン救世主の復讐劇~  作者: 赤羽ロビン
第三章 救世主ユァ―リカ

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第八十話 窮地

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 その後、ムサシは三日程ベルバーンに滞在した。物資を補給する必要があったことに加え、ムサシへの乗船を希望する者が多数人出てきたために居住スペースの拡大が必要になったのだ。


 尚、乗船を希望した人の動機はさまざまだ。スコットのようにユァーリカに魅せられた人がいれば、ティーゼのように大切な人の力になりたいと思う人もいたし、中にはユァーリカと同じように帝国に連れ去れた家族を自らの手で救いたいという人もいた。


 しかし、ムサシには新しい仲間には明かすわけにはいかない秘密が多々ある。その内の一つが魔物達の存在である。幸いムサシでは魔物の住み処と人々の住居スペースははっきりと分けられているため、新たな仲間がムサシにいる魔物に気づくことはなかった──たった一匹を除いては。


「救世主!」


 尾が三つある狐の魔物、トライフォックスのリウルをつれたユァリーカをみた者が、一斉に声を挙げる。


「俺は救世主なんかじゃないよ!」


 ユァリーカのお決まりの言葉にその場に居る二~三十人くらいの人々が喝采を上げる。年齢は十代後半から三十代の者が中心で、そのほとんどはベルバーン解放戦線に参加していた者だ。


(急ぎだったけど、なかなかいい出来だ)


 そういってユァリーカは辺りを見回した。ここはムサシ内部にある新人を訓練するための場所だ。かつてクロエが日々の訓練をしていた場所とは違い、大勢の人々が集まるために新たに作られたのだ。


「ユァリーカ! こいつらなかなか根性があって苛めがいがあるな」


「クロエさん、苛めがいって……」


 苦笑するユァリーカに周りの人々はガッツポーズを作って見せる。彼らは何らかの形で戦闘技術を身に付けていた者がほとんどだったことに加え、何より士気が高い。兵役で徴兵された兵士程度なら倍の人数でも何とかなるかも知れない。


「あと、そろそろ会議ですよ」

「分かってる!」


 そう言いながらもなかなか切り上げられなさそうなクロエを置いて、ユァーリカは広間を後にする。すると、彼に向かって方々から気合の入った声がかかった。


「初陣では必ず役に立って見せます!」


 息巻く若者達に声をかけながら、ハンスはエルとヨルクがいるはずの会議室へと移動した。



※※



「悪いな。遅くなって」


“構わない。キミの難しい立場は分かっている”


 会議はとうに終わり、皆が寝静まる頃、ヨルクは人気の無い場所で【通念マインドコール】を発動した。相手は勿論ロビンだ。


「俺にはよく分からないが、ユァーリカは魔法でとんでもない兵器を作った。一発でベルバーンの城壁に穴を空けるような威力だ。後、数は多くないが、ユァーリカの元に人が集まりつつある」


“魔法を使った兵器に加え、集まりだした手勢か。もはやパーティというよりも軍勢になりつつあるな”


 軍勢。確かにそうかもしれない。だが、ただの軍勢と違うのは何か違う。ヨルクは、ユァーリカの周りに集まる人々がもっと血の通った何かを共有しているような印象を抱いていた。


「そっちはどうなんだ? ルツカは今、どこにいるんだ?」


“それなんだが、厄介なことになった。帝国からは首都にいる勇者と私が率いている勇者で挟み撃ちにしろとの指示が出ている”


「なんだと!?」


“落ち着いてくれ。オレの方はキャラベルの支配とか、教皇派への対策とかで先延ばしには出来る。だが、首都にいる奴らについてはどうこうすることは難しい”


「……数は?」


“全部で五千。だが、差し向けてくるのは二~三千といったところだろう。奴らもいざという時に自分の身を守る手勢が欲しいはずだ”


「約百倍の相手か」


 ヨルクはそういったが、それ以上に困難な話であることは彼自身分かっていた。勇者は、皆、固有技能ユニークスキルを持つ強者つわもの。こちらの戦士達とは実力において大きな隔たりがあるのだ。


「正面突破はないな。陽動とかで揺さぶって、何とか手薄なところを突くか……」


“確かにそうだ。だが、それは出来ないだろう”


「何?」


“ルツカはキアラの手で帝都に運ばれたが、帝国は罪人(ルツカ)を帝都の南にあるロスリック平原で処刑するといっている。無論これは、ハンス、いやユァーリカに対する罠だ。処刑は二週間後。そして、そこでミリオンメサイアが待ち構えているんだ”


 北を山、東を海、西を樹海に囲まれた帝都だが、南はロスリック平原という平らな土地が広がっている。ミリオンメサイアは遮蔽物がない平野で待ち構えることでユァーリカ達に正面突破をせざるを得ない状況を作っているというのだ。


「何とかならないのか! せっかく帝国領まで来たってのに!」


“勿論、道はあるはずだ。だが、我々だけでは見いだせないだろう。明日、皆の前でこのことを話すつもりだ。それまでにキミも考えをまとめて聞かせてくれないか?”


 言われるまでもなく、ヨルクは思考をフル回転させて策を練る。無理でも無駄でも諦めきれないからこそ、彼は今、ここにいるのだから。

読んで頂きありがとうございました! 次話は12時に投稿します!

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