第七十四話 魔道具
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【戦乙女】達はユァリーカの意志に従い、あちこちで起こっていた争いを静めると、青竜騎士団の駐屯する詰め所へ向かった。
「あっちだ! 続け!」
そして、ベルバーン解放戦線の面々も皆でその後を追う。【戦乙女】は並み居る敵を造作もなく排除しながら進み、遂には青竜騎士団の団長が占有するフロアにまで辿り着いた。
「ほう、精霊魔法! 面白い!」
【戦乙女】に導かれたスコット達が扉を開けた時、青竜騎士団長ロマノフは二~三十人はいるベルバーン解放戦線のメンバーには目もくれず、そう口にした。
「ということは救世主が来るか。それは面白い!」
「そうだ、俺達がこの街の救世主だ!」
若い冒険者達が己を鼓舞するようにそう言い放つ。それを聞いたロマノフは彼をことさら馬鹿にしたような声色を出した。
「おいおい、お前は馬鹿か?」
「何だと!」
神経を逆なでするようなロマノフの物言いに苛立ち、飛び出そうとした若い冒険者をスコットが止める。
「止めろ、挑発に乗るな」
「っ! すみません」
スコットに諫められ、若い冒険者が後ろに戻るのをみると、ロマノフはつまらなさそうな顔をした。
「救世主は来ない。ここは俺達の持ち場だ」
「ということは、お前達だけで私を何とかしようというわけか。それは面白くない」
「この人数差だ。不利なのは分かるが、もう少し格好をつけてくれても良いんだぜ」
スコットはそう言ったものの、ロマノフが一人なのには何らかの理由があると踏んでいた。
(何かしらの罠か、伏兵を潜ませているか、それとも)
会話をしながらも、油断なく周りを確認し、ヒントを探す。だが、その答えは他ならぬロマノフからあっさりと与えられた。
「ここには罠なんてないし、この部屋にいるのは私と君達だけだ。警戒する必要はない」
「何ぃ」
相手の言葉を信用するわけではないが、それはおおよそあり得ない話だった。青竜騎士団を束ねるくらいだがら、武勇には優れているのだろうが、それでも同時に四~五人を相手取るのは難しい。ましてや、それが自分達のようなそれなりに戦い馴れている相手ならなおさらだ。
「まあ、見てろ」
そう叫ぶ言うなり、ロマノフはゆっくりと腰の剣を抜く。それを見てスコット達も油断なく、それぞれの武器に手をかける。だが……
「“天龍”!」
なんとロマノフがそう言うと切っ先から雷が迸ったのだ。声を出す暇もなく雷はスコットの胸を貫き、続いてその後ろにいた冒険者達も一瞬の内に同じ運命を辿った。
「ばらけて!」
ティーゼが叫び、すぐにスコットの救命に入る。そして、指揮の不在を埋めるように冒険者達が攻撃を仕掛けようとするが、それよりも早く、七体の【戦乙女】達が攻撃を始めた。まるで朝日のように白い光が辺りに満ち、冒険者達は思わず視界を腕で遮った。
「この威力……」
ティーゼがその光景に思わず見とれていると、攻撃に参加していなかった【戦乙女】の内の一体がスコットに近づき、その白い炎で彼を癒す。周りを見れば、他の【戦乙女】達もケガ人を癒すために力を振るっている。
(まさかまだこんな力が残っているなんて!)
今さらながらに術者の法外な力を感じつつ、ティーゼは傷の癒えたスコットを起こしにかかる。ティーゼに顔をはたかれ、徐々に意識を取り戻していくスコット。だが、そんなまどろみを打ち破るような大爆発が起き、彼の意識は一気に覚醒させられた。
「何だ!」
スコットが目をやると、先ほどまで優勢にことを運んでいたはずの【戦乙女】達がその数を減らしていること、そして、その奧には盾を構えたロマノフがいるのが見えた。
(あれは、魔法文字か! 何か細工をしてやがるのか)
ロマノフが手にした盾にはびっしりと魔法文字が書かれている。
「あいつ、魔道具を二つも持ってやがるのか!」
魔法文字を用いて魔法が引き起こす事象を封じ、望む時に呼び出せるようにした道具を魔道具という。ちなみに魔法を封じた対象が道具ではなく、地面や壁であった場合には魔方陣と呼ぶが、本質的には同じものだ。
手にしただけでいつまでだれでも魔法が使えるようになる魔道具だが、欠点もある。それは制作が大変困難だということだ。そのため、魔道具は大変高価なもので、日常生活で使うようなものでさえ、家が立つような金額がかかるのが普通だ。
「戦闘に使えるレベル、しかも、これほどまでの力を持った魔道具なんて一体どうやったら手に入るっていうの?」
戦闘中にも関わらず、そんな答えの出ない問いをしてしまうティーゼ。ただ、それくらい異常な武装ではある。
「やつの自信の源はこれか。だが、別にやることが変わるわけじゃない。まずは、魔道具の力を見極める。ティーゼ、あれを頼むぞ!」
そう言って駆け出すスコットにティーゼはしっかりと頷き、皆に指示を飛ばした後に準備にとりかかった。
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