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俺は救世主なんかじゃない!~転生勇者に最愛の姉を殺されたシスコン救世主の復讐劇~  作者: 赤羽ロビン
第二章 魔王の弟子ハンス

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第五十五話 ハンスvsロビン

興味を持って頂きありがとうございます!

「疲れた!」


 夕方の公演が終わると、ハンスは思わず地面に寝転んだ。その後も襲撃は続いたため、ハンスは演目を行いながら、それらに対処せざるを得なかったのだ。


(【紅炎鳥フェーベ】や【紫炎鳥ロキ】を召喚して密かに撃退したり、目に見えない【水角獣ノトス】に攻撃させたりと本当に忙しかったな。そう言えば、公演の合間に直接襲ってきたこともあったな)


 皆が準備で忙しくしている間、一人で休んでいるハンスを襲いに来たのだ。だが、リウルの力とクロエに鍛えられた剣で難なく撃退することが出来た。


(まあ、最初から分かってたけど、やっぱり勇者だな。しかも、《自己複製アルテ・エゴ》を使ってる。ということは、《断罪の光(グランドクルス)》も使ってくる可能性があるな)

 

 今まで戦ってきた勇者の固有技能ユニークスキルを使ってくる相手。それだけでも脅威だが、それよりも問題なのはハンスがキャラベルにいることが帝国にばれていることだろう。


 ハンスがそんなことを考えていると、ルツカとエルヴィールが一緒に彼の元へやって来た。少し離れてロミオもいる。


「ハンス、エルヴィールはそろそろ帰らなきゃ行けないんだって」


「本当は最後まで片付けを手伝いたいんですが……」


 ロミオが申し訳なさそうに頭を下げる。


「いや、あんたには色々してもらったし、気にするな。それに、まだ最終日じゃないし、片付けと言っても大したことはないよ」


 いつの間にか、その場にいたヨルクが普段見せないような気遣いをロミオに見せる。ルツカはエルヴィールと別れるのが名残惜しそうだったが、それを吹っ切るようにハンスの背を叩いた。


「じゃあ、ハンス。気分転換を兼ねて、近くまで送ってあげて。後は私達でやっておくから」


「分かった」


 寂しそうなルツカの思いを背に受け、ハンスは密かにエルヴィールにまた来てくれるように頼もうと考えつつ、歩き出した。


 が、正直、送って行くほどの距離ではない。エルヴィールは短く礼を言うと、建物に入り、ハンスはロミオと二人になった。


「ハンスくん、少し話せないかな?」

「えっ、あ、はい」


 予想していなかった申し出にハンスは少し戸惑った答えを返す。だが、ロミオは気にした素振りもなく、歩き始めた。


「どんな話だろうという顔だね」


 自分について歩くハンスの顔を見て、ロミオはそう声をかける。彼はハンスが曖昧に頷くのを見ると、薄く微笑んだ。


 程なく二人はちょっとした広場に行き着いた。小さな噴水とベンチがあるだけの場所だが、立ち話をするには十分だろう。


「オレの要件というのは、これを見て貰えばわかると思う」


 そういうが早いか、ロミオはどこからともなく一本の剣を取り出した。それは、今日嫌というほど見た剣だ。


 それを見るなり、ハンスは紫炎の剣を生み出しながらロミオに斬りかかった。


「今日の騒動はお前の仕業かっ!」


 ロミオ、いやロビンは涼しい顔でハンスの攻撃を受け止める。


「そうだ。悪かったと思ってるが、理由がある。そして、今、君の前にいるのにもね。少し話を聞いて──」


 ロビンの言葉が不意に途切れる。それは、受け止めたはずのハンスの剣が電気に変わり、彼が手にした《霊剣アンドゥリル》をつたって自分の腕に這い上がろうとし始めたからだ。


「っ!」


 ロビンが霊剣を投げ捨てたのと、ハンスが後退して距離をとったのはほぼ同時だった。


「俺が一人の時を狙ってきたんだな、ロビン!」

「いや、違う」


 ロビンの言葉を聞かず、ハンスは次の手を打つ。


「【土人クレイマン】!」


 まるでうつ伏せになって寝ていた人が起き上がるかのように、地面から成人男性くらいの背丈の土人形が姿を現し、ロビンに飛びかかる。


「《自己複製アルテ・エゴ》!」


 いうが早いか、三人のロビンが現れる。一人は【土人クレイマン】の攻撃を受けて倒れるが、その隙に別の一人が背後に回り、【土人クレイマン】に《霊剣アンドゥリル》を突き立てた。


 不意を突かれた攻撃に【土人クレイマン】の動きは止まり、末端から崩れ、土に還っていく。だが、それはハンスの目論見通りだった。


「行けっ、【紫炎鳥ロキ】っ!)」


 【土人クレイマン】が稼いだ時間で【紫炎鳥ロキ】を生み出し、追撃するハンス。修行の成果もあって、【紫炎鳥ロキ】は中級の精霊と同程度の力を持っている。一撃必殺とは行かないまでも、身動きが取れなくなるレベルのダメージは与えられるはずだ。


(しかも、《自己複製アルテ・エゴ》で現れた術者はある程度ダメージを与えると消える!)


 理由は分からないが、これがハンスの経験則だった。従って、隙を作って一網打尽にするのが最良だ。


 いや、最良のはずだった。


「まあ、戦術的には正しいな」


 【紫炎鳥ロキ】が二人のロビンに肉薄したその時、片方が壁になり、もう片方は手を天にかざす。その手は急速に光を帯び始め、その輝きが頂点に達した時、それは何かを断ち切るように振り下ろされた。


「これはっ!」


 ハンスは強い光にひるみ、思わず顔を腕で庇う。その隙に奥にいたロビンが壁になっていたロビンごと【紫炎鳥ロキ】を《断罪の光(グランドクルス)》でなぎ払った。


 光が収まり、目を開いたハンスの前には【紫炎鳥ロキ】もロビンもいなかった。そう、前には誰もいなかったのだが……


「まあ、今回は私の勝ちだ」


 ハンスの後ろには彼に《霊剣アンドゥリル》を突きつけたロビンがいた。恐らく、ハンスが光から目を守っている間に移動したのだろう。だが、ロビンはすぐに《霊剣アンドゥリル》を引き、数歩後ろへ下がった。


「オレは君と戦う気はない。今は少し話がしたいだけだ。聞いてくれたら、今日は帰る。とりあえずそれだけでも信じてくれないか」

読んで頂きありがとうございました! 次話は明日の七時に投稿します!

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