第百話 初めての共闘
やった! 百話目!
これも皆様の応援のおかげです!
「違う。厄介なのは回復することじゃない」
クロエの言葉に二人は意味が分からず顔を見合わせる。そんな二人に彼女が何かを答える前に、その場にロビンの声が響いた。
「急に済まない。そちらはどうなってる?」
「どうって……戦闘中だ。襲われてる」
「何? 一体誰にだ?」
どうやらロビンはユァーリカ達の現状を全く知らないらしい。ユァーリカがかいつまんで現状を説明すると、驚いた声を上げた。
「一体誰がこんなことを? ……いや、皇帝に直訴できるレベルの貴族だろうな。だが、今はどうでもいい。それよりも、ユァーリカ! 奴を早く倒さなければ大変なことになる!」
「大変なこと?」
「今、帝都ではそいつが吐いたガスのせいで民衆が次々に身体的な不調を訴え、大混乱に陥っている。おそらくだが、その魔道兵器がマナを大量に使うと有毒なガスを吐くのだろう。ちゃんとした住宅がある貴族はともかく、一般市民は……」
「何だって!? じゃあ、まさかとは思うが奴が再生したり、攻撃したりする度に……」
ヨルクはそう口にしながら、恐る恐るクロエの方を向く。すると、クロエはゆっくりと頷いた。
「奴を傷つければ、その分、帝都の人間が苦しむってわけか。クソッ! 帝都の貴族も腐ったことしてくれるじゃねーか」
スコットが怒りに燃える。本来、そんな彼をなだめるのがティーゼの役割だったが、今回ばかりはそうも出来なかった。何故なら彼女も帝国貴族の非道に怒っていたからだ。
「とにかく、オレも協力する。そちらに行って良ければそうするが?」
ユァーリカはクロエが頷くのを確認してから“構わない”と返答した。その後、ユァーリカは約束した場所にロビンを迎えに行ったのだが……
「エメリー! ついてきたのか!」
ロビンの元についたその時、ユァーリカはロビンが驚いた声を上げるのを聞いた。が、彼の傍にいるエメリーは何も答えず、怒ったように彼を見上げるだけだ。
「断りもなしに姿を消そうとして悪かった。だが、ここは危険なんだ」
「だからこそ。ロビンはユァーリカとあいつを倒す。私はあいつからあなたを守る」
「しかしだな……」
ロビンはなおも何か言おうとするが、消して退かなさそうなエメリーの顔を見ると、すぐに白旗を上げた。
「分かった、よろしく頼む」
その一言でエメリーは満面に笑みを咲かせる。ロビンはそんな彼女にまんざらでもない顔を向けながら、手を伸ばそうとする……が、流石にすぐに動きを止めた。
「緊急時に悪かった。で、案内を頼めるか、ユァーリカ」
「あ、ああ」
見てはいけないものを見てしまったようなばつの悪さを感じながら、ユァーリカはロビンと共に《蒼風》の力を使って飛び、二人を艦橋へと案内した。
「凄いな、これは! 資料通りだ!」
ムサシに入ったエメリーが唖然とする一方、ロビンはひたすら興奮していた。
「後でゆっくり見ればいいから! 急ぐぞ」
何度もそう言って急かし、艦橋へと続く扉まで二人を連れてきた時にはユァーリカはへとへとになっていた。
「まさか剣と魔法の世界で戦艦とは……な……」
嬉しそうに艦橋内を見渡すロビン。その中にクロエの姿を見つけると、ロビンは驚きのあまり一瞬動きを止める。が、すぐに旧知の間柄のようにクロエに会釈をした。
尚、エルは驚きのあまり棒立ちになっている。急にエメリーが現れたことに驚いているのか、それとも別のことに驚いているのかは分からないが。
「で、どうする? オレに出来ることがあればするが」
「これ以上帝都の人を苦しめるわけにはいかない」
断固とした口調でユァーリカが言うと、ロビンとスコットも頷いた。
「つまり、再生させずに倒す。しかも、出来るだけ早く。でも、波動砲以上のダメージのある一撃って……」
ティーゼが頭を抱える。ロビンは彼女の“波動砲”という言葉に反応し、一瞬クロエの方を見たが、すぐに視線を戻した。
「あるとすれば、やつの体内にある魔道文字を破壊するとかか。でも、手当たり次第じゃ駄目だ。核となる部分を破壊しないと」
ユァーリカがそう言うとヨルクは間髪入れずに質問した。
「その核になる部分って何処にあるんだ?」
「体の中心部。最も破壊しにくい場所だ」
今度はクロエが答えた。
「一度、エフレイアスの内部を見学したことがある。当時はさっぱり分からなかったが、今思い返してみれば、中心部から手足へとマナの流れを作る術式が書かれていたと思う。あの巨体の最も奥まった場所にマナを溜めておくような魔道具があるはずだ」
「クソッ!、波動砲でも顔面に穴を開けるのが精一杯なんだぞ。なのにどうやってそんな場所を攻撃するんだよ!」
「いや、たった一つだけ手があるぞ」「一つだけ方法がある」
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