都市へ
トレドが急ぐように家に飛び込んできた。
「リズ様、今すぐ俺と一緒に都市に戻って頂けますか? すぐにでも、“婚約”に関して話をしたいそうです」
「昨日の今日では……」
「先方の都合でそうなってしまったようです。ですから一度リズ様とご両親がお話ししたいと」
そう私は言われて、トレドの謎の方法で都市に戻るよう言われてしまう。
どうしようかと思って、そしてヘレンも一緒に行くか聞こうと思っているとそこで私は気づいた。
ヘレンとクロト、サナの全員がシルフを何も言わず見ている。
どうしたのだろうと私が思っているとそこでシルフが、
「そうなんだ。だったらこのエッグタルトも持って行ったらどうだい?」
「そうね、数も少ないから、自宅用とトレドへのお土産の二つに分けようかしら」
私がそう答えると、ありがとうございますとトレドが言う。
そこでヘレンが、
「では私もご一緒させていただきます。トレド、構いませんね」
「丁度三人まで連れて行けますから、問題ありません」
そうトレドが答えるのを聞きながら私は、夜にはここに戻って来れるのかと聞くと、トレドは戻れますと答える。
だから私は、すぐに作ったばかりのエッグタルトを箱に詰めて、トレドと一緒にその、転送してもらえるらしい場所に向かったのだった。
リズとヘレン、トレドがいなくなった所でクロトは小さな声でシルフに問いかける。
「シルフ様……大丈夫なのですか?」
「うん“丁度”帰った所だよ」
「……そうですか」
微笑みながら、またこそこそ何かをやって来たと言い出したシルフに、クロトは遠い目をしながら、
「偶然会う事もあり得たかもしれないのに」
「……それにリズはご両親と話すだけだと言っていたからね」
「興味を持って婚約者の素顔を見に来るかもしれませんよ?」
「その時は……美味しく頂いてしまおうか」
「! まだどうにか婚約ですよ!?」
「冗談だよ、楽しみだな」
そうい出したシルフにクロトは、それ以上何も言わずサナも何も言えずにいる。
そこでシルフが、
「それでいつ頃君たちは“戻って”来る気なんだ?」
「! 僕はサナとここで生活をするんです。ここが二人の“愛の巣”なのです!」
「まあいい、そちらはその内だ」
そういったシルフにクロトが、これだけうぁ絶対に譲れませんと返していたのだった。
謎の場所に案内されて、全身黒ずくめの謎の人物によって、私は懐かしい都市に戻ってきた。
するとすぐそばを白い幽霊が、すうっと飛んでいくのが見える。
どうやらただ飛んでいるだけらしい。
そう思っていると二人組のお化けが目の前をすうっと飛んでいくのが見えた。
今は明るい時間なのに、幽霊には時間は関係ないらしい。
「こんな風にお化けだらけだったのね」
「今はここまでになったという感じです。あ、ここのすぐ近くなので先に孤児院によってもいいですか?」
「ええ。エッグタルトを渡すの?」
そう問いかけるとトレドは頷く。
孤児院には両親に連れられて援助をしている所を幾つかいった事がある。
その時の記憶を思い出しながら向かったその先で、赤いレンガで作られた古びた建物が見えたのだった。
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