腹黒かしら?
自分の部屋に戻ってきた私は、鏡の前に座り小さくため息をついた。
「おめでとう、リズ」
シルフのそういった時の笑顔を私は思い出して、深々とため息をついた。
あれは心から祝福するような笑顔だった。
そう考えると私はイラっとした。
友達として祝福してくれたのだと思う。
でも、もう少し何とかならないのか、と思うのは……。
「……私は、本当はシルフを異性としてみていたのかな?」
小さく呟いてみて、私は下にうつ向く。
今まであった出来事が次々と思い出されて、シルフとの楽しい出来事が頭の中かに浮かんでは消える。
それと同時に今日再会してしまったあの王子の言葉。
「こんな一般人の庶民の男と一緒になれると思っているのか?」
とりあえず頭の中であの王子の顔を思い出しながらぼこぼこにしてみた。
けれど大して気が晴れない。
悔しさだけが募る。
「言っている通りだったから」
そう、私は公爵令嬢。
立場があってそれ相応の物を求められてしまう。
窮屈に感じはするけれどでも、それでよかったのだ。
これまでは。
「シルフと出会わなければ、これまでのままでよかったのに」
出会って、彼と一緒に居る楽しさを知ってしまった。
心に傷を負ったこの時だって、“偶然”にもこの村で再会して、一緒に居るのが楽しくて。
気づけば私は彼とここにいる生活が楽しくなってしまっていた。
それはシルフも同じだろう、とは思う。
でもきっと私が嬉しくて楽しかったのはそれだけではない。
「シルフと一緒に居たから。だから私は楽しかったのかもしれない」
一緒に遊べるのが楽しい、友達と一緒だからと思っていた。
否、そう思うしかなかったのだ。
だって私は、公爵令嬢だったのだから。
あの王子のいう事を、心の何処かで私は理解していたのかもしれない。
彼と私は住む世界が違う。
だから一緒になれない。
それでも私はシルフと一緒に居たかったのだ。
だから私は自分に言い訳をした。
シルフとは“異性”の“友達”だと。
でももう言い訳できなくなってしまった。
自覚してしまった。
そしてシルフは私と、王子との婚約を祝福してくれている。
「……酷い」
そう私は呟いてため息をつく。
ふと、もしも私が今シルフに“好き”だと伝えたならどうだろうと思う。
あのクロトとサナのように私と“駆け落ち”してくれるだろうか?
そう考えてみるけれど、理性が駄目だと訴えかける。
それは駄目だと。
貴方は公爵令嬢だと。
くらくらすると私が思っているとそこで扉が叩かれる。
入って来たのはヘレンだった。
「落ち着くようにとココアを持ってまいりました」
「ありがとう」
そう答えてそれを貰い、飲む。
甘さと温かさで、少し緊張がほぐれる。
そんな私を見てヘレンが、
「リズ様は“リザール国”の王子とのお見合いにあまり乗り気ではないのですか?」
「直球ね。でもそうね……少し我儘な気持ちになっただけ」
「我儘ですか?」
「ええ、シルフが……焦ったりしてくれないかなって。笑顔で送り出されたけれど」
「……あの腹黒男のどこがいいのか、私には分かりかねます」
「そんなにシルフは腹黒かしら?」
「ええ、リズ様をこれほどまでに悩ませて、あの笑顔でいるわけですから」
ヘレンのその言葉に、味方でいてくれるのを私は嬉しく思う。
だからそれ以上聞かず、けれど、
「明日クロトとサナに少し話を聞いてみたい」
「そうですか。ではどんなケーキのご予定ですか?」
「タルトかな。……後は、コミヤの件もあるから魔石を持って居よう」
「そうですね。ですが私がお守りしますので問題ありません、リズ様」
そう答えたヘレンにありがとうと私は答えたのだった。
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