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存在自体が“厄災”

 グド王子が宿に戻るとコミヤがいつものように不機嫌そうにそこにいた。

 それを見ながらグドは、どうして自分がこんな女を選んだのかと思う。

 積極的なアプローチに魅了されたのか?


 リズの控え目さとは違った刺激に目をくらませられたのか?

 自分を見てもらえるような気がしていただけなのか?

 この女は、グド王子の地位と財産にしか興味がないというのに。


 違う、行き過ぎたリズへの敵対心も、か。

 そう心の中で思ったグド王子は、リズのあの皮肉の応酬を思い出して苛立ちを覚えた。

 確かにこちらにも悪い部分はあるが、あそこにいたリズは、見知らぬ男と一緒に居た。


 どこかで見たことがある気がしたが、思い当る人物はここに来る前に一度会っていて、まだ都市の方に滞在しているはずだった。

 だから別人のはずだ。

 そう思いながらふと、コミヤを見ていて悪戯心が湧く。


「コミヤ、リズにこの村であったよ。焼き菓子を作って販売していたらしい」

「……“悪役令嬢”のリズがどうしたの? あんな性悪女、こんな場所に居たのね」

「……ああ」


 そう答えながら、グド王子は果たして本当に性悪なのはどちらだろうと心の中で思う。

 けれど不愉快だから黙っていた。

 そしてグド王子がコミヤの傍からいなくなって、コミヤは呟く。


「忌々しい女」


 そう、憎々しげにつぶやいたのだった。









 焼き菓子がようやくすべて売り切れた。

 沢山の人が購入してくれて、しかも後の方では人が少なくなったために感想を聞けたのは良い収穫だと思う。

 けれどほとんどは、“美味しい”という感想ばっかりだった。


 贅沢を言うならば、もう少しどのように美味しかったのか聞きたかったけれど、よくよく考えると私は何が美味しいだのなんだの考えず、食べてみて“美味しい”としか考えていなかったような気がする。

 これは作り手の我儘であるのかもしれない。

 けれどおおむね好評だったのは良かったように思う。


 そして家に帰ると、トレドが来ていた。そして、


「リズ様のお父様たち経由で都市での菓子の販売が出来るようになりました。ただ、貴族の方々に売る場合には、リズ様のお父様経由にといった話になっています。……それ自体も交渉に使えるカードにもしますが、やはりリズ様への暴言は許せないのでリズ様のお母様と一緒に何かをするそうです」


 といった話を聞いた私はどうするのかと思ったが、聞くのはやめておくことにする。

 後でのお楽しみだ。

 また、あの巨大な魔石に関しては、現状ではそこまで有名ではないので放置するが、このまま村おこしなどで村が有名になってしまえばその存在も知られてしまうから、その頃に手を打つか……それとも今のうちに切り出して全て秘密裏に回収しておくか、現在もまだ検討中であるらしい。


 あの魔石に関してはあんなものがあるなんて、というのが本音であるらしい。

 もしかしたならここの土地自体が魔石が自然に形成されやすい場所なのかもしれないため、一度、この村について正確な情報手に入れるために調べるそうだ。

 そういった話と共に、最近都市の幽霊が減少はしているらしいと聞く。


 だから私は、


「他の国の魔法騎士団だか何だかが来たと聞いていたけれど」

「ええそうです。彼らの働きは確かにあるのですがそれよりも、“幽霊”の発生する原因が、城から“無くなった”からといった話があります」

「……この村に、私を婚約破棄したあの王子と令嬢コミヤが来ているのだけれど」

「あ~、はい、そうですか」

「他に城からいなくなった人物は?」

「いませんね」


 それを聞いた私は遠い目をしながら、


「あの令嬢コミヤ、“呪われて”いるわね」

「“呪われて”と言うか、存在自体が“厄災”なのでしょう。そこにいるだけで周りにも被害を及ぼす」

「でもどうして今までそんな事が起こらなかったのかしら」

「本当にどうしてなんでしょうね」


 トレドも首をかしげる。

 そこでシルフが、


「リズの“祝福”のおかげでどうにか持っていただけ、というオチでは?」

「まさか~」

「周りを幸せにする“祝福”がリズにはあったから」


 それを聞きながら私は、気のせいだと思うととりあえずは答えたのだった。


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