パイを作ろう
こうして私はシルフと二人きりでお菓子作りをする事になった。
戻ってくると先ほど作ったフィナンシェは程よく焼きあがっていたので、取り出して冷やす。
これを後で一つづつ紙袋に包む。
さて、次は何を作ろうと私は考えて、
「ビスコッティもいいわね。沢山の木の実が入った焼き菓子。うん、そうしよう」
「チョコレートが入っているのが俺は好きだな」
「じゃあチョコレートも入れましょう。……あったかな?」
そう呟いて私はチョコレートを探してみるが見つからない。
どうやら切らしているようだ。
「どうしようかな。今から村のお店にもいって、買ってみる?」
「あ、食品のお店なら俺も知っているよ。村長さんが経営している店だったはず」
「そうだったんだ……サナ達にちょっと声をかけてくるね」
私はそう言って声をかけに行こうとするとシルフが、
「食品店はまだまだ開いているから、別の物を作ってはどうだろう?」
「別の物……小さなパイはどうかな。中に果実のフィリングを入れて……りんごでもいいし、ベリージャムとカスタード、カボチャも美味しいわ。どれがいいかしら」
「リズが作る物はどれも美味しいから、どれでもいいよ」
「……普通にリンゴのパイにしましょう。バターと砂糖で炒めて、ハーブを入れて香り付けをして、うん、美味しそう。丁度、リンゴも何個かあるし、そうしましょう」
といったシルフの提案で先にパイを作ることになった。
一口サイズのパイ。
まずはパイ生地から作ることに。
小麦粉、水、塩、バターを使って混ぜていく。
バターが溶けないように、冷却の魔法を使ってこねて、それから一塊にして休ませてから、それを伸ばして折りたたんでいく。
その間に見えた光は水色だった。
折り畳むだけで光るのですか、そうですか、と私は頭の中がとろんとしながら、それを作っていく。
そして休んでいる間に作っておいたリンゴのフィリングを挟んで、鉄板に並べて、さて、オーブンで焼こうと思った所で、
「リズ、危ない!」
「え? あ!」
そこでつい傍にあった壺に躓き、転んでしまいそうになる。
その時腰のあたりを抱き留められて、どうにか大丈夫だった。
「危ないな。疲れているんじゃないのか?」
「う、朝から色々作っていたから……」
「今日はこれでいったん休んだらどうだ?」
「でも明日にはできる限り、楽しんでほしいの」
「……わかった」
そうシルフが呟くと、小さく何かを呟いて、シルフの顔が私に近づいてくる。
何をされるのだろうと私が緊張と共に胸の鼓動が速くなる。
シルフの額が私の額にこつんと当たった。
ふっと私の中から疲れの様なものが消えてなくなる。
「……回復魔法?」
「疲労のね。でもあまりこういった事は魔法に頼ると、リズが本来持っている能力で回復しにくくなるから、使いたくはないんだ。でも今は少しだけ、ね」
「う、うん、ありがとう」
そう答えながらも私はシルフの顔がまともに見れない。
一瞬、キスされるのかと思った。
でもそんなの……そう私が思っていると、
「リズ、どうしたの?」
「な、何でもないわ。さあ、パイを焼いて、それから覚ましている間にチョコレートを買いに行きましょう!」
そう焦る気持ちを抑えながら私は答えたのだった。
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