094話「白き魔狼」
「準備は整ったな」
ワイバーンボーンアックスを持ったスケルトン達を従えて魔の森最後の木々を倒しにやってきた。
ここまで来ればグレートウルフのリポップもあり得ない。
「一応、兵器も出しておくか」
ダークホール内に入れておいた、対飛竜弩、カノン砲、投石器の3種を等間隔に設置していく。
「完全なオーバーキルよね?」
たとえ白き魔狼が出てきたとしても、こちらは戦争で使うものまで用意してきた。
「ウルフ系しか出てこない森・・・ゲームの解釈でいけば魔狼とはフェンリルだろう。それに戦いに卑怯もない」
「言い切ったっすねぇ」
「さすが、人質をとる作戦を思いついた者だ」
「ゲームだからこそ許される行為ですけどね」
「だんだん、悪に堕ちてないかしら?」
「魔族ロールプレイなんだ」
「まぁ、私もサキュバスプレイの時もあるけどね」
「ウチはヴァンパイアプレイしてもダメっすけどね」
「小さいからな」
「逆にラースさんはオーガらしくは無いですね」
「オーガらしいと言うのが分からないだけなんだがな」
「私なんか、どうやって移動しているのかすら分からないんですよねw」
蛇の体を器用に動かして移動しているグリード、どうやって体を動かして移動しているのか本人も分かっていないらしい。
「それを言ったら私も飛べている理屈が分からないわよ」
「同じくっすね」
スキルで飛べているだけだと思っているんだがな。
「やってこい」
命令を下して、スケルトン達は森の木を切り倒し始める。
俺達は木々が減るのを待つばかり。
アォオオオオオン!!
森の最奥から遠吠えが聞こえだした。
バキバキバキバキバキッ
白く巨大なものが木々をなぎ倒して姿を現した。
【フェンリル(Lv57)】
「貴様にムーンが救えるか!」
唐突にラストが叫んだ。
「な、なんだ?」
「も〇の〇王子を思い出しただけよ」
「あ~、確かに似てるっすね」
「うむ」
「かなり古い作品ですが、みんな見ている物ですね」
「ブリ〇作品は見ちゃうものよ」
「うんうん」
アォオオオオン!
ブワァッ
フェンリルの吠えた声に合わせて暴風がスケルトン達を襲い、木々ごと薙ぎ払った。
「強っ!」
「行くぞ!!」
「そっちは任せたからな」
「分かったわ」
「頑張るっす」
「任せてください」
ラース、グリード、ラスト、スロウスの4人がフェンリルへと突っ込んでいく。
俺はパーティに入らず、引き続き木々を倒す作業を続行させる。
「こっちに来い」
ラースのスキルでフェンリルのターゲットが移り、森から引きはがしていく。
これで邪魔されずに仕事が捗る。
俺がスケルトン達を率いて一緒に戦ってしまったら経験値が持っていかれてしまうからな。
時折、戦いの余波で暴風が襲ってきてスケルトン達が吹き飛ばされるが微々たる被害だった。
・魔の木×124026
「あれが、フェンリルの巣か」
もはや木々の生えていない元魔の森の奥には小さな湖があった。
その奥が山脈の麓になっており洞穴が見えていた。
ミィミィ
ん?
洞穴から鳴き声が漏れ聞こえてきた。
ザッザッザッ
近づくと葉っぱの山の上に2頭の白い狼が寝ころんでいた。
【ベビーフェンリル(Lv5)】
現実にいそうな、ふわふわもこもこの毛並みを持つ犬に見えた。
「これも弱肉強食の世界の理か」
2頭のベビーフェンリルを小脇に抱えて洞窟を出ていく。
遠くではフェンリルと戦っているラース達が居る。
ザッザッザッ
戦っている場所へとやってくる。
「フェンリルよ。貴様の子供たちは預かったぞ!」
俺が声を張り上げていうと双方の動きが止まった。
ミィミィミィッ
ベビーフェンリルの首根っこ掴んで見せつける。
グルルルゥ
明らかに敵意が増して唸り声をあげる。
「さぁ、貴様の子供がどうなってもいいなら戦いを続けるがいいぞ!」
ゴンッ
「なんだ?」
いつの間にか近づいてきたラストに頭を殴られる。
「なんだ? じゃなないわよ。貸しなさい!!」
ラストにベビーフェンリルを奪い取られた。
「親元に帰りなさい!」
ブンブンッ
ベビーフェンリルを豪快にフェンリルに向けて投げた。
パクッ
フェンリルは子供達を器用に咥えこみ地面に降ろした。
タッタッタッタッ
ベビーフェンリル達は離れていった。
「これで、よし」
「せっかくのチャンスを」
「チャンスじゃ無いわよ。戦いに水を差さないでよね!」
「パーティに入れ」
「ハデスさん、アレは無いっすよ」
「本気じゃなかったですよね?」
・・・流石に本気で人質作戦をした訳じゃない。
アレで戦いが収まるならと思っての行動だ。
≪ラースのパーティーに加わりました≫
「あまりスケルトンは出さないでよね」
「わかっている」
スケルトンでの物量作戦はパーティ向けではないからな。
「再戦と行くか」
「えぇ」
「気合いれるっす」
「勝ちましょう」
「あぁ」
グルルァアアアア!
暴風が俺達を襲うがラースの防御に後ろに隠れてやり過ごす。
「対飛竜弩、カノン砲発射!」
少数のスケルトン達で構成させた兵器を動かす。
ヒュヒュンヒュンッ
ドガァン
シュタッ
だが、フェンリルは軽くかわした。
「よそ見はいけませんよ!」
「シールドバッシュ!!」
着地地点へと駆け込んだラースとグリードが果敢に攻める。
アォオオン!
「「トリプルファイアーボール!」」
2人が暴風で強制的に弾き飛ばされた瞬間を狙って6つのファイアーボールが襲い掛かる。
ボボォン
グルルゥッ
火傷を負いつつもシッカリと立っている。
「シャドウワープ!」
シュッ
影から影へと移動してフェンリルの背後から飛び出す。
ガゥ!?
予想外の動きでフェンリルの反応が一瞬遅れる。
グズッ
2本のワイバーンボーンソードがフェンリルの背中に突き刺さる。
ガルルルウッ
暴れて俺を振り落とそうとする。
ズブッ
遠心力で剣が外れて振り落とされる。
「シャドウワープ!」
今度はラストの影へ移動して転ぶことが免れる。
「本当に卑怯よね、影から出てくるなんて」
「もはや、死霊術師というより暗殺者っすよ」
「これ位しかパーティ用のスキルとして使えないんだよ。後の魔法は多分通用しないし」
フェンリルとなればダークフレアアローは通用しないだろう。
「喋ってないで手伝ってくれ」
「はぁあああ!」
前衛の2人がフェンリルに対して接近戦を始めている。
「スロウスちゃん、アレやるわよ」
「ちゃんって呼ばないで欲しいっす」
「いいから、やるわよ!」
なにやら2人が何かやるようだ。
「ロックランス!」
「トリプルファイアーボール!!」
ドガガッ
ロックランスの後ろに3つのファイアーボールが殺到した。
ドヒュッ
爆発力に押されたロックランスが凄いスピードで飛んでいく。
「2人とも避けなさい!」
「うぉ!」
「うわっ!」
背後から迫ってきたロックランスに2人が慌てて避ける。
グサッ
ブシュゥウウウ
ギャウゥンッ
2人に集中していたフェンリルがよけ切れずロックランスが深く食い込み鮮血をまき散らした。
「カノン砲の仕組みから編み出したのよ」
「魔法使い2人掛りっすけどね」
俺がオークジェネラル戦でスピアにダークボールをぶつけて飛ばした事を2人はやっていた。
「あと少しだ」
「勝てますよ!!」
「もう少しね」
「畳みかけるっす!」
「顕現:スケルトンドラゴン!」
他のスケルトンをしまって、スケルトンドラゴンを呼び出す。
「やれ」
・・・・
アォオオン!
ドォンッ
遂にフェンリルは断末魔をあげて地に倒れた。
「倒したのか?」
「えぇ」
「1時間くらい戦っていたわね」
「長かったっすね」
「それだけ強いモンスターだったんだろう」
ミィミィ
フェンリルの死体にベビーフェンリル2頭が近づき舐めている。
「これが弱肉強食の世界か」
スッ
解体用ナイフを取り出す。
「ちょっと、その2頭も殺すの?」
「それは、あんまりにも可哀そうっすよ」
「どの道死ぬしかないだろ? 親も仲間も倒したんだしな」
ベビーフェンリルが生き残る道は殆どないに等しい。
「なら、私がこの子たちの親になるわよ」
「ずるいっす!ウチもなるっすよ」
「モンスターをペットには出来ないんだぞ?」
「出来るわ」
「今、アナウンスで従属化が出てきたっすよ」
なんだと?
「さぁ、シロちゃん。私が親よ」
「ふふっ。これからユッキーっすよ」
モンスターの従属化なんてアリかよ。
ポンッ
「これで良かったのだ」
「あの2人に任せましょう」
「くっ」
何かを察したラースとグリードが俺を慰める。
とりあえずフェンリルの素材を回収して俺達は元魔の森を後にした。
・・・・・・
「よくぞ、魔の森に巣食うフェンリルを倒したのじゃ」
今回は全員揃って謁見の間で魔王と謁見している。
「しかも、魔の森ごと無くしてしまうとは見事じゃな」
フェンリルの素材は全て魔王に献上する事で討伐した証拠とする。
「妾の願いを叶えてくれた褒美は何が良いのだ?」
『お待ちください。確かにフェンリルの素材がある以上討伐したのでしょう。しかしこの者達が倒したという証拠には』
「黙らぬか!」
文官の言葉を遮ってイヴが声だけで口を閉じさせる。
「そう思ってラルフに様子を見てもらっておったわ。出すのじゃ」
「はっ」
傍に控えていたラルフが記憶水晶という魔道具を床に置いた。
パァアアア
空中には俺達がフェンリルと戦っている映像が流れる。
「これが討伐した証拠じゃ。褒美を受け取る資格はあるのじゃよ。妾とこの者達との約束を違えると申すか?」
『ひっ、申し訳ございません』
「他の者も異論はなかろう。褒美はなにが良い?」
≪グランドクエスト、白き魔狼討伐をクリアしました。SPが4増えます≫
≪経験値:2,387,000取得。報酬としてガレオン船のレシピが与えられます≫
≪ハデスのレベルが57になりました≫
≪SPが1増えます≫
≪死霊術師のレベルが53になりました≫
≪種族スキル:黒のベール取得可能です。消費SPは7となります≫
ラストとスロウスはフェンリルの所有権をラースとグリードは武器や防具を褒美として受け取る。
「ハデスよ。主は何が望みじゃ?」
「ガレオン船のレシピが欲しいです」
ザワッ
『なぜ、海軍が極秘裏で作っている船を知っているんだ!?』
一人の魔族が驚き、声を上げる。
「以前、妾が褒美で渡そうとしたからじゃよ。しかし、何故なのじゃ?」
「俺は聖大陸を目指している。その為にはガレオン船が欲しくなった。それで」
「妾の所へと来たか。聖大陸への進出・・・妾としては許可できぬ」
「魔王様、流石に今の理由で聖大陸へ向かうのは危険かと」
ラルフが忠告の意味を込めて口を開く。
「であるか」
『その通りですぞ。魔の森ならともかく、聖大陸に進出して奴らが渡ってきたらどうするつもりか』
「貴様は黙っておれ! 次、口を開いたら不敬罪に処すぞ」
『うぐ・・・』
「此度の報酬はくれてやる。しかし許可を出すことは出来ん。妾達、魔族は次なる戦に備えておる・・・聖大陸の連中と戦う理由をくれてやる訳にもいかぬ。しかし、先々代の時代から聖大陸の情報は一切入っていないのも事実じゃ。よって五天辺境伯達に新たな任務を与える。聖大陸の情報を持ち帰ってくるのじゃ」
≪グランドクエスト、魔王の依頼が追加されました≫
「「「「「はっ!」」」」」
「謁見は以上じゃ」
バサッ
イヴが椅子から立ち上がってマントを翻し退室していく。
俺達も謁見の間を後にする。
【ステータス】
名前:ハデス
種族:スケルトンキング
レベル:57
職業①:死霊術師(Lv53)
職業②:細工師(Lv10)
体力:3193.5/3193.5(+1064.5)
魔力:4647/4647(+1549)
攻撃力:772.5(+203.5)(+162)
防御力:622(+120)(+252)(+10)
【装備】
頭:ワイバーンボーンヘルム
体:ワイバーンボーンアーマー
腕:ワイバーンボーンアームガード
腰:ワイバーンボーンウェストガード
足:ワイバーンボーンロングブーツ
右手:ワイバーンボーンスタッフ
右手:なし
・セットボーナス、5か所(防+10)
【死霊術師スキル(Lv53)MAX.1431】
▶死霊召喚リスト
▶闇魔法リスト
【細工師スキル(Lv10)】
▶武具・防具クラフトスキル
▶アイテムクラフトスキル
▶素材クラフトスキル
【種族スキル】
・骨特化
・騎乗
・武装制限解除(小)
・一括制作(小)
・霊感
【召喚物一覧(1271/1431)】
・スケルトンナイト×1000
・スケルトンガーディアン×200
・スケルトンドラグナー×70
・スケルトンドラゴン×1




