076話「ハデス領幹部会②」
「と、言う事だが理解できたか?」
「ワシは理解できたが、ゴブリン氏族長、コボルトジェネラル、オークリーダーはどうだ?」
「ううぅむ?」
「ぐぬぬぬっ」
「りがいぶのぉ」
「つまり、金銀銅へ疑似的に価値を付与して物と交換する事で対価を支払うに付ける手段といった所か?」
ケンタウロスのオウガが理解した所を口に出す。
「態々価値を付与する理由が理解出来んのじゃ」
「それで物々交換できる意味も理解できないでござるよ」
「あだまがオイづがナイ」
「よし、実例をだそう」
チャリッ
幾つか試しに作ってもらった銅貨、銀貨、金貨、野菜のトマッツを取り出す。
「お前たち幹部は良い働きをしているから、この金貨を支払おう」
「ちゃんと評価してもらって幸せだ」
「食えない物を貰うより食べ物が欲しいのぉ」
「同じ意見でござる」
「オデも」
「その説明をしているのだろ?」
「まずは一つ一つ説明する。この金貨の価値は銀貨100枚分に相当する」
「銀貨は銅貨何枚分なのだ?」
「銀貨は1枚で銅貨100枚分だ。つまり金貨というのは銅貨1万枚になる」
「この食べられない物が増えてものぉ」
「いいか、逆に食べ物と交換したなら時間が経って食べられなくなるだろ?」
「ワシらは悪食じゃ、腐っていても食べられる」
「それでも新鮮な野菜の味は知っているだろう」
「う、うむ」
「新鮮な食べ物をいつでも食べられるようにしてくれるのが貨幣システムだ」
「「「おぉ!」」」
「ただし貨幣を持っているからといって商品に対して同価値を持っていないとだめだ」
「そうなので御座るか?」
「このトマッツという野菜を銅貨5枚の価値だとしよう。お前は銅貨2枚しか持っていない。さて同価値だと言えるか?」
「・・・リンドール殿ぉ」
困ったコボルトジェネラルはリンドールを見る。
「魔族といえども計算が出来ないとな」
唯一計算が出来るリンドールとオウガは笑っていた。
俺はてっきり足し算引き算が出来ると思っていた。
「まずは足し算や引き算を覚えてもらわないとな・・・」
「王よ、その役目はダークエルフが担うぞ。他の魔族達に貨幣システムを教えよう」
「ケンタウロス族もその程度の事は出来るからな」
「分かった、ダークエルフとケンタウロスの共同で他の3氏族に貨幣システムを教えてくれ。それまでは物々交換だな」
「あのぅ、私が蚊帳の外なんですが」
「ララは今の話は理解できただろ?」
「当然のようにいいますね・・・理解できましたけど」
「人魚の自由行動が出来ない以上、あまり役立たないと思うが」
マーメイドやマーマンは水に長く浸かっていないと能力が低下して最悪死ぬことすらある。
「一応、混ぜてくださいよ」
「マーメイド達のヒーリングソングは助かっている。後々貨幣システムで支払うつもりだが・・・」
「その事で疑問が」
リンドールが挙手する。
「なんだ?」
「このエリアは空気もあるし地上と変わらない環境ではないか? なぜマーマンやマーメイド達は生きていられる?」
「この場所は湖の中に作られた特別な空間です。古来から私たちの住める環境を維持する物があります」
「そういった魔道具ということか?」
「はい」
「なるほど・・・それは作り出せないのか?」
「無理です・・・」
「そうか・・・では、マーメイド達はバケツの中で今と同じ足に変化する事は可能か?」
リンドールは何かを考えついている様だ。
「変化可能です」
「あとは・・・あの問題か」
「リンドール、一人で考えてないで教えろ」
「あぁ、人魚達を自由に行動できるように考えてはいたんだがな」
「ここはそういった場だ。言ってくれないと分からないだろ?」
「ワシの考えているのは人魚の自由行動化だ。それにはいくつか条件があるのだ。一つはバケツの中で動力源を作り出す事だ」
「動力源か」
「考えているプランはバケツの中で車輪を踏むことで回転させる、回転力を外に出して更に外に取り付けた車輪へと連結させて前へ進むことが出来ればいいのだが」
「外に軸を出すときに隙間から水が漏れるだろうな」
「そこが問題点だ・・・」
「逆転の発想で、腕で回せばいいだろう」
ポンッ
「確かに」
「クランクと歯車を組み合わせて使おう」
「えぇ、あれなら」
「私たちの事を思って話し合っている所、御免なさい。どういう事ですか?」
俺とリンドールだけで盛り上がってしまった。
リーンドールは新たなプランを構築して図を持って全員に説明する。
「なんて素敵な提案でしょう。これなら移動ができますね」
今はバケツの水に浸かって首都で生活を送ってもらっている。
それでも誰かに運んでもらわないと移動もままならない。
なら浸かりながらも移動できるようにバケツを改良する事にした。
バケツにダークエルフ達のつくる車輪を取り付ける。
水位より高い位置に動力となるクランクを取り付けて手で回し外側に取り付けた歯車で動力を増大させ車輪に伝える事により誰の手を借りずに移動が出来る提案だ。
自転車と同じ原理で動かすような物だな。
手で回すため他の種族よりも動く速度は遅いだろうが全く動けないよりマシだろう。
こうして新たな問題点を見つけては解決策を模索して分担して事にあたる。
ハデス領の領民が一団となっていく事が嬉しく思う。
なぜ、内政っぽい事しているんだ?




