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94話 対決

「カナデは、俺と一緒に二人の相手を! タニアは密猟者達を、もう一度捕縛! ソラとルナは周囲の警戒! ニーナはタニアの手伝いを!」


 素早く指示を飛ばして……

 みんなは軽く頷いて、それぞれの持ち場に飛んだ。


「いくぞっ、カナデ!」

「りょーかいだよ!」


 カナデと一緒に駆けた。


 こちらの動きに合わせて、オーグが剣を振りかぶる。

 鋭く、早い一撃だ。

 さすがに、Cランクの名前は伊達じゃない。


 ただ……今の俺からしたら、それは脅威でもなんでもない。

 アリオスと戦い、魔族とも戦った。

 それらの経験が、俺の技量を底上げしてくれている。

 今更、ただの冒険者の攻撃に当たるようなことはない。


 体をひねるようにして、余裕を持って刃を回避。

 続く連撃も、その場に伏せるようにしてやり過ごす。

 オーグの剣が、チリッ、と髪先をかする。


「こいつ、ちょこまかと! おとなしくしやがれっ」

「はいおとなしくします、なんてヤツはいない!」


 オーグの剣をかいくぐり、拳を……


「ウインドカッター!」


 オーグの隙を埋めるように、クロイツの魔法が放たれた。

 風の刃が木々の枝を切り飛ばしながら、こちらに飛来する。


 パートナーの隙を補う、見事なサポートだ。

 長年、相方を務めているからこそ、できた芸当だろう。


 ただ、頼りになる相方がいるのはオーグだけじゃない。


「にゃんっ!」


 カナデが俺をかばうように、前に飛び出した。

 その場で、全力で拳を振る。


 ブォンッ!!!


 巨大な鉄球が通過したような、ものすごい音が響いた。

 それと同時に、衝撃波が発生する。

 カナデの超速の拳によって生み出された衝撃波は、風の刃を相殺して、打ち消した。


「なっ……!? そ、そのような方法で、私の魔法を防ぐなんて……!?」

「ふふーんっ、レインには指一本触れさせないよ!」

「ありがとな、カナデ」

「どういたしまして!」

「この調子で、一気にたたみかけるぞ!」

「ラジャー!」


 今度は二人で突撃した。

 俺は右から。

 カナデは左から。

 オーグとクロイツを左右から挟み込むように、弧を描きながら駆ける。


「このガキ共がっ!」

「私達を舐めないでいただきたいっ! フレアアロー!」


 オーグが投げナイフを。

 クロイツが炎の矢を、それぞれ放つ。


 こんなもの、避けるまでもない。

 ナルカミの特殊機構を起動。

 針を射出して、投げナイフを一本残らず叩き落とした。


「うにゃー、にゃんっ!」


 カナデは手頃な石を拾い、炎の矢めがけて投擲。

 剛速球が炎の矢を打ち貫いていく。


 カナデは猫霊族で、魔法には弱いけれど……

 だからといって、そんな中級魔法でどうにかなるほど弱くはない。

 ホント、頼りになる仲間だ。


「これで……」

「終わりっ!」


 俺とカナデの拳が、オーグとクロイツを捉えた。

 それぞれ、腹部に一撃。


 強化されている俺の拳と、猫霊族の一撃だ。

 耐えられるわけがなく、オーグとクロイツはその場に膝をついた。


「ぐっ、な、なんだ、この力は……この俺が、こんなガキに……」

「あ、ありえません……猫霊族はともかく、この男の力は一体……?」

「ふふーんっ、レインは強いんだからね? あなた達の何倍もすごいんだから!」


 なんで、カナデが得意げになるのだろうか?

 まあ、いいんだけどね。

 褒められているみたいで、ちょっとうれしいし。


「くっ、このままで……! パラライズショック!」

「うにゃっ!?」


 最後の悪あがきというように、クロイツが魔法を詠唱した。

 白い植物の蔦のようなものが俺たちの足に絡みついた。

 チクリと、針に刺されたような感覚。


「にゃっ、にゃにゃにゃ……!?」


 カナデがガクガクと妙な動きを披露する。

 披露するというか、そうすること以外はできないというか……


「か、体が痺れて……ま、まともに動けないよぉ!?」

「くくく……油断しましたね。これで、あなた達は一時間はまともに動くことができないでしょう。安心してください。同じ冒険者だ、殺すなどという野蛮な真似はしません。ただ、しばらくの間、ここでおとなしくしててもらいましょうか。その間に、私達は密猟者をギルドに連れて……」

「あー……得意そうに喋っているところ悪いが、それは無理な話だ」

「なっ!?」


 特に変わらず、普通に動いている俺を見て、クロイツが驚きの表情を浮かべた。


「ど、どうして動けるのですか……!? 確かに、魔法は発動したはず!」

「悪いな。俺には、そういうものは効かないんだ」


 ルナと契約したおかげで、今の俺は、『状態異常完全無効化』という能力がある。

 即死魔法を防いだくらいだ。

 麻痺なんて通用するわけがない。


「ば、バカな……状態異常に対する高い耐性? いや、そんなもの、普通の人間にあるわけが……だとしたら、アイテム? もしかして、こうなることを見抜いていたというのですか……!?」

「まあ、そういうことでいいか」


 わざわざ、こちらの手の内を明かす必要はない。

 勘違いしているようなので、訂正することなく、そのままにしておいた。


「ぐっ……! この俺が、ガキ共に負けるなんてありえねえ!!!」


 クロイツは心が折れたみたいだけど、オーグの方は諦めが悪いらしい。

 腹部を痛烈に打たれ、普通ならば動けないはずなのに……

 気合と根性で、無理矢理に体を動かした。


 跳ね上がるように起きて、剣を振るう。

 Cランクということもあり、鋭い一撃だ。

 さらに、俺とカナデは、もう動けないだろうと油断していて、不意をつかれた形になる。

 普通ならば、必中必殺の一撃になる。

 ……普通ならば。


「痺れてるけど、これくらいなら動けるよ……うにゃんっ!」

「なぁっ!?」


 カナデの拳がオーグの刃を弾いた。


 オーグからして見れば、信じられない光景だろう。

 完全に不意をついた。気づかれていない。

 それなのに、弾かれた。攻撃を防がれた。


 カナデが不意打ちに気がついていた、なんていうことはない。

 俺もオーグも、カナデはもう動けないと思っていた。

 それなのに、カナデはオーグの攻撃を防いだ。

 なぜか?


 答えは、ひどく単純なものだ。

 カナデはオーグの攻撃に気がついて、即座に行動を起こした。

 常人には考えられないほどの反射神経と超人的な速度で、オーグの攻撃を防いだのだ。


 カナデの力は、普通の人間では決して到達できない域にある。

 それを目の当たりにしたオーグは、これ以上、抵抗するつもりは起きなかったようだ。

 剣を手にしたままへたり込み、うなだれてしまう。


「とはいえ、このまま放置ってわけにはいかないよな」


 ナルカミからワイヤーを取り出して、オーグとクロイツを動けないように縛り上げた。


「さてと、みんなは……」

「レイン、おまたせ」


 タニアがニーナを連れてやってきた。

 密猟者達が見えないけど……?


「ああ、あの連中? 逃げられないようにしておいたから、安心していいわよ」

「何か、縄でも使って捕縛したのか?」

「そんな面倒なことしないわよ。逃げようとしたら、また火球を食らわす……って脅したら、一発でおとなしくなったわよ」

「あぁ……」


 そんなことを言われたら、密猟者達はおとなしくするしかないだろう。

 タニアの火球は強烈だからなあ……

 あんなものは、もう二度と味わいたくないだろう。


「あと、ニーナのおかげね」

「ニーナが?」

「亜空間収納を見せつけて、おとなしくしないヤツはこの中に放り込むわよ、ってね」

「……わたし、そんなことしないのに……」

「ハッタリよ、ハッタリ。でも、効果は抜群だったじゃない」

「……ん」


 よくわからない亜空間の中に放り込まれると言われて、逆らえる者は少ないだろう。


「ただいま戻りました」

「待たせたのだ」


 周囲を警戒していたソラとルナも戻ってきた。


「何か問題は?」

「いいえ、何もありません」

「強いて言えば、騒ぎにつられて森の動物が集まってきたことだな」

「魔物もいくつか引き寄せられてきましたが、撃退しておきました」

「ありがとな。二人のおかげで、安心して戦いに専念できたよ」

「ふふんっ、褒めるがよいぞ。撫でるがよいぞ」

「ルナ! あなたは、すぐに調子に乗らないようにしてください」


 争いの終わりを告げるように、穏やかな空気が戻る。

 さてと……これからは、どうしてこんなことをしたのか? 尋問タイムだ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 勧善懲悪が多い気がします 悪い冒険者が出てそれを懲らしめてスカッとするのはいいですが、普通な冒険者や世話好きな冒険者などもいていいと思います
[気になる点] >「悪いな。俺には、そういうものは効かないんだ」 ……わざわざ、こちらの手の内を明かす必要はない。 確かに手の内を明かす必要はないですけど、わざわざ「効かない」なんて言わずに、麻痺し…
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