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90話 捕縛

 密猟者を見つけた。

 すぐに同化を解除して、みんなのところに戻る。


「見つけたぞっ!」

「ふにゃっ!?」


 カナデがぴょーんと飛び上がり、尻尾を逆立てた。


「なになになに!? なんなの!?」

「あっ……わ、悪い。驚かせたか?」

「すっごく驚いたよ!? 戻ってくるの、いきなりすぎるよ!?」


 よっぽど驚いたらしい。

 カナデは、軽く涙目になっていた。

 そういえば、猫は驚くと、すごい反応を見せるからな……

 猫霊族も、それと同じようなものなのかもしれない。


「急いでいたんだ、ごめん」

「ううん、気にしてないよ」

「急いでいたって、どういうこと?」

「密猟者を見つけたんだけど、連中、ちょうどホーンウルフを追いかけていたんだ」

「なら、急がないと! 場所は?」

「ここから北東に1キロほどいったところだ」

「1キロだね? いくよーっ!」


 カナデが駆け出して……


「カナデっ、まった!」

「なに!?」

「そっちは南西だ!」

「……知っていたよ?」

「ウソですね」

「ウソだな」


 ソラとルナが冷静にツッコミを入れて、カナデがたらりと汗を流した。

 気まずそうに目を逸らして……


「いくよーっ!」


 なにもなかったことにして、カナデは、今度こそ北東に向けて駆け出した。

 俺達ものんびりしていられない。


「急ごう!」

「ええっ」

「ソラ達は、ニーナと一緒に空からいきますね」

「走るなんて面倒なのだ。フライ!」


 ソラとルナは、ニーナを抱えて魔法で空を飛ぶ。

 走るよりも、そちらの方が速いのだろう。


 俺はタニアと並んで、森の中を走る。

 まったく整備されていないところを突っ切らないといけないので、速度が出ない。


「ああもうっ、急がないといけないのに……レイン、ここら辺、焼き払ってもいい?」

「いいわけないだろう!」

「もうっ、面倒ね!」


 タニアは、いちいち発想が物騒だな。

 しかし、このままでは間に合わないかもしれないというのも事実。

 急ぐためには……


「タニアっ、俺達も空から行こう!」

「あたしは飛べるけど、レインはどうするの? あたしが運ぶ?」

「大丈夫だ!」


 木の枝に飛び乗り、跳躍。

 枝から枝に跳んで距離を稼いでいく。


「器用なことするわねー」


 翼を出して空を飛んでいくタニアは、感心するような呆れるような、そんな声を漏らした。


「見えたっ!」


 視界の先に、四人組の男が映る。

 さらにその先に、一匹のホーンウルフが。

 四人組を相手にできないと判断したらしく、男達から逃げている。

 ただ、その体は傷つき、血が流れていた。


 今は、密猟者達の捕縛よりも、ホーンウルフの安全を優先させないと!


「ブースト!」


 俺は、自分に能力強化の魔法をかけた。

 体が羽根のように軽くなる。

 木の幹を蹴り、全力で跳躍。

 砲弾のように射出されて……


 密猟者達とホーンウルフの間に着地する。


 その瞬間、密猟者達が矢を放つ。

 計、三本。

 俺は、ホーンウルフの壁になるように立ちはだかり……

 二本の矢を宙で掴んで止めて、残り一本は蹴り落とした。


「なっ……!?」


 突然の乱入者に驚き、密猟者達の間に動揺が走る。


「やれ!」


 意外というべきか、密猟者達はすぐ動揺を収めて、立て直した。

 俺を敵と認定したらしく、再び弓矢を構えて……


 ドォンッ!!!


「え?」


 突然、爆発が起きて、密猟者達が吹き飛んだ。

 それぞれ地面に叩きつけられて、そのまま気絶する。


「あっけないわねー、もう終わり?」


 翼をバサバサとやりながら、タニアが空から降りてきた。

 そうか。

 今のは、タニアの火球か。

 さすがに空の警戒はしていなかったらしく、密猟者達はまともにタニアの一撃をくらったみたいだ。


 手加減はされているらしく、密猟者達の傷は浅い。

 ただ、至近距離で火球が炸裂したのだ。

 しばらくは動くことはできないだろう。


「む? もう終わってしまったのか?」

「ソラ達の出番はないみたいですね」


 やや遅れて、ソラ達がやってきた。

 魔法を解除して、ふわりと地面に降り立つ。


「ところで、カナデは?」

「そういえばいないわね……? あの子、先に行ったはずなのに……?」

「もしかして、道を間違えたのでしょうか?」


 ありえる。

 最初、正反対の方向に駆け出そうとしていたくらいだからな。


「にゃん?」


 ……なんて失礼なことを考えていると、ガサガサと茂みが鳴り、そこからカナデが顔を出した。


「カナデ。そんなところで、何をしているんだ?」

「もちろん、悪い人を捕まえていたんだよ。ほら」


 カナデは、見たことのない男を連れてきた。

 気絶しているらしく、ぐったりとしてる。

 密猟者達と同じ格好をしているので、仲間なのだろう。


「そいつはどこで?」

「この先のキャンプで見つけたんだ。いきなり襲ってきたから、とりあえず殴っておいた!」


 えっへん、と胸を張るカナデ。

 できれば、もう少し事実確認をしてから行動してほしい。


「ベースキャンプかな? だとしたら、そいつは留守番ってところか。どちらにしても、お手柄だよ」

「えへへー、レインに褒められちゃった♪」

「ちょっとレイン。密猟者を一網打尽にしたのは、あたしなんだけど」

「うん。タニアにも感謝しているよ。ありがとう」

「そ、そう。わかっていればいいのよ、わかっていれば」

「ソラ、ルナ。魔法でこいつらを捕縛してくれないか?」

「わかりました」

「うむ。我に任せるがよい」


 ひとまず、密猟者達を捕まえることはできた。

 あとは……


「グルルルゥッ……!」


 傷ついたホーンウルフが、牙を剥き出しにして、低い唸り声をあげている。

 逃げられないと判断したのかもしれない。

 一矢報いてやるという様子で、俺達を睨みつけていた。


「わっ、わっ。違うんだよ。私達は敵じゃないよ?」

「ガウッ!」

「ひゃっ!?」


 カナデが説得しようとするが、ホーンウルフは威嚇を続ける。

 まいったな。

 怪我をしてるから手当をしたいんだけど、この様子じゃあ難しい。

 どうにかして、落ち着いてほしいんだけど……


「……大丈夫、だよ」


 ニーナがゆっくりとホーンウルフに歩み寄る。


「ニーナ!? 危ないわよっ」

「そうだよ! がぶ、って噛まれちゃうよ!?」


 タニアとカナデが慌てるけれど、ニーナは歩みを止めない。


「大丈夫……だから。怯えないで、いいよ……」

「グゥ……」

「わたしたち、は……なにもしない、から……いい子だから……ね?」

「……」


 少しずつ、ホーンウルフがおとなしくなっていく。

 すごいな……

 魔法でも使っているのだろうか?


 いや……

 そういうことじゃないか。

 ニーナの優しさが、ホーンウルフに伝わったのだろう。


「ん……よしよし」

「クゥン……」


 ニーナがホーンウルフの頭を撫でて、

 ホーンウルフは、甘えるような鳴き声をこぼして、その場に伏せをした。

 それを確認して、ニーナが振り返る。


「これで……この子の治療、できる……?」

「あ、ああ……問題ないよ」

「よかった……」


 にっこりと笑うニーナ。


「なんか……ニーナの方が、ビーストテイマーみたいだね」

「言わないでくれ……」


 ちょっとだけだけど、悔しいと思ってしまう俺だった。

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