表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/1152

84話 ソラとルナの想い

 楽しい時間はすぐに過ぎると言いますが……

 みんなと一緒の食事は、すぐに終わってしまいました。


 ソラは、ルナと一緒に割り当てられた部屋に戻りました。

 ちなみに、お風呂はなしです。

 まだ引っ越しが終わったばかりなので、準備ができていません。

 蒸らしたタオルで体を拭いて、今日はそれで我慢しました。


「おやすみなのだ、ソラ」

「おやすみなさい、ルナ」


 挨拶を交わして、ベッドに横になりました。


 ソラとルナは同じ部屋です。

 部屋はたくさんあるのだから、一人一部屋でも構わないと、レインは言ってくれたのですが……


 ソラは、生まれた時からルナと一緒でした。

 ずっとずっと一緒でした。

 だからなのでしょうか?

 別々の部屋だと困るというか、同じ部屋でないと逆に落ち着きません。


 それはルナも同じらしく、ソラと一緒にいることを選びました。

 やれやれ、ですね。

 まだまだ姉離れできない妹です。


「……」


 横になったものの、眠気はやってきません。

 朝から引っ越しの作業をして……

 疲れているはずなのに、眠くなりません。


「……レイン……」


 考えることは、ソラ達のご主人様のことです。


 ソラ達精霊族が嫌っていたはずの人間。

 それが、契約を交わした、ソラ達のご主人様です。


 正直なところ、今でも人間は苦手です。

 嫌いというほどではないのですが……

 精霊族の里にいた頃、ずっと、人間の悪い話ばかり聞いてきましたからね。

 その影響もあって、なかなか、人間というものを好きになれません。

 事実、領主とその息子のような、ろくでもない人間もいましたから。


 でも、レインは違います。


 優しくて、いつもソラ達のことを考えてくれていて……

 ソラ達のために、自分が傷つくこともいとわない。


 ソラが知る人間とは、全然違います。

 もしかして、レインは人間ではないのでは?

 そんなバカなことを考えてしまうくらい、レインは『良い人』でした。


「……ん……」


 どうして、レインはあそこまで優しいんでしょうか?

 勇者パーティーにいた頃に受けた影響のせいなのでしょうか?

 それとも、それ以前の……レインの故郷の影響なのでしょうか?


「よく、わからないですね……」


 ふと、思います。


 レインは、誰に対しても優しいのでしょうか?

 それとも……ソラ達だから、優しいのでしょうか?

 ちょっとだけ、そんなことが気になりました。


 レインの性格を考えると、前者なのでしょう。

 ソラ達だけが特別、なんていうことはないはずです。


 でも。

 それでも。


 少しでも、ソラ達のことを特別に思ってくれているのならば……

 それは、とてもうれしいことのように思えました。


「……あれ?」


 疑問に思いました。

 ソラは、どうしてあれこれとレインのことを気にしているのでしょうか?


 一緒に冒険をする仲間だから?

 ……そうかもしれません。

 仲間のことが気になるということは、ごくごく自然なことです。

 当たり前のことです。


「でも……」


 それだけではないような気がしました。

 そういう理屈抜きで、レインのことが気になっています。

 なんででしょうか?

 レインのことを考えると、少しだけ、胸がドキドキします。

 不思議な感覚……

 でも、どこか心地いいです。


「これは、いったい……?」




――――――――――




「これは、いったい……?」


 何やら、部屋の反対側に置いてるベッドから、小さなつぶやきが聞こえてきたぞ。

 あまりに小さいから、何を言っているのかよくわからないが……

 うむ。

 我の悪口ではなさそうだ。


「……まあいい」


 ソラはソラ。

 我は我。

 寝ることにしよう。


 布団をかぶり、枕に頭を乗せる。

 目を閉じて、眠気がやってくるのを待つ……けれど。


「……むむむっ」


 眠れないではないか。

 妙に頭が冴えてしまっている。

 こういう時は、眠くなるようなことを考えるのだ。


 羊が一匹……羊が二匹……羊が三匹……


「……羊ってもこもこしてて、気持ちよさそうだな」


 はっ!?

 まったく関係ないことを考えてしまった。

 何匹まで数えたか、忘れてしまったではないか。

 くっ、我としたことが、なんていう凡ミスを。


 仕方ないから、他のことを考えることにしよう。

 他のこと、他のこと……


「……レインは、どうしているのだろうな?」


 ふと、レインのことが思い浮かんだ。

 なぜだろうか?

 なぜ、レインなのだろうか?

 理由は……わからない。


「……そういえば」


 たまにだけど、疑問に思うことがある。

 レインは、なぜ我らをもっと頼ってくれないのだろうか?


 我らはレインに恩義がある。

 それに、その人柄を好ましくおもっている。

 故に、レインのために力を使うことはやぶさかではない。


 それなのにレインときたら、我らを前に出すことを良しとしていない節がある。

 魔族が現れた時は、さすがにそんなことは言ってられなかったみたいだが……

 領主が絡んできた時は、そんな傾向があった。

 我らの力があれば、回りくどいことをせず、館ごと領主を吹き飛ばせたというのに。


 我の力を見せつけるチャンスがなくなってしまったではないか。

 まあ、力をひけらかす趣味はないが……

 レインには、見せつけておきたい気がするな。

 そして、褒めてもらうのだ!


「むぅーん」


 レインは、もっと我らを頼りにしてよいと思うぞ?

 大事にされるのは、まあ、悪くない気分ではあるが……

 でも、それはそれで、少し寂しいというものだ。


 我はレインの力になりたいのだ。

 だから、もっと頼りにしてほしいのだ。

 でも、困らせたくないから、無茶なことはしないのだ。


 あれ?

 我が何を言っているのか、ちょっとわからなくなってきたぞ。

 我は混乱してしまう。


「……ふぅ」


 吐息をこぼして、心を落ち着かせた。


「それにしても……」


 どうして、我はレインの力になりたいと思うのだろうな?

 恩義があるから?

 人柄を好ましく思っているから?

 褒めて欲しいから?


 ……よくわからない。


「ただ……」


 レインのために何かしてあげたい。

 我の心が、そう訴えているのだ。


 その気持ちは、どういうものなのか。

 今はよく、わからぬ……

『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、

評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。

よろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://book1.adouzi.eu.org/n8290ko/
― 新着の感想 ―
[良い点] キャラクタがかわいい!おもしろい! [一言] まだ読みはじめたばかりだけど面白くて好きです。 テインの優しいさが好きです。そんな人に私も知り合いたいです
[一言] 羊を数えるときは、 ワン シープー、ツゥー シープーと 横文字で長く伸ばして数えるのが有効だそうです。
[良い点] 振り返り見ています。 ソラとルナがレインに対して恋心を思うのはここからなのか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ