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71話 決戦・1

「五対一では、私が不利だネ。ああ、怖い怖イ。なので、援軍を呼ばせてもらおうカ」


 魔族が指を鳴らす。


 影が波打ち、円形に広がった。

 ぼこっ、ぼこっ、と気泡が弾けるような音と共に、影が盛り上がる。

 やがて、影は異型の形になり……全身を黒く染めた魔物として、この世界に誕生する。


 一体、二体、三体……

 十体、二十体、三十体……

 数えきれないほどの魔物が、魔族の影から現れた。

 四本足に、鋭い牙と紅蓮の瞳。

 その姿は、さながら、影の獣だ。


「さあ、私のかわいい子供達ヨ。敵を貪り喰らうがいイ」


 魔族の合図で、一斉に魔物が襲いかかってきた。

 唾液を牙に滴らせながら、こちらの肉を食いちぎろうと、飛びかかってくる。


「うにゃー……にゃにゃにゃにゃにゃっ、にゃん!」

「ふんっ、その程度で!」


 カナデのラッシュとタニアの尻尾が獣を迎撃した。

 しかし、それは第一波にすぎない。

 第二波、第三波が襲いかかってくる。


「このっ!」


 ナルカミを使い、針を連続で射出する。

 横殴りの雨のように針が飛び、獣達を串刺しにした。


 さらに、ワイヤーを放つ。

 一匹の獣を捕らえて……

 そいつを振り回して、他の獣にぶつけてみせた。


「ソラっ、ルナっ」

「わかりました!」

「ふはははっ、我の力を見せてやる!」

「まとめて吹き飛ばしてやれ!」

「「ドラグーンハウリング!!」」


 竜の幻影が放つ咆哮が、漆黒の獣達を吹き飛ばした。

 衝撃波が荒れ狂い、竜巻のごとく渦を巻く。

 まとめて獣達を飲み込んで、塵に帰した。


「ふっふーん。これで、あとはあなただけだよ!」

「なんで、カナデが偉そうにするのかしら……?」

「我の手柄が横取りされたぞ」

「みなさん、油断してはいけません! まだっ……」


 さきほどの光景を再現するように、魔族の影が再び円形に広がる。

 そして……数十体の漆黒の獣が顕現された。


「やあやあ、ご苦労さマ。でも、言い忘れていたネ。この子達は、私の一部のようなもノ。こうして、何度でも、無限に生み出すことができるんだヨ」

「なら、何度でも倒すだけだよ!」

「ふム。その闘志は称賛に値するガ……私がいるということを忘れないでほしいかナ?」

「カナデ、逃げろっ!」

「にゃ!?」


 魔族がカナデに手の平を向けた。

 バチバチッ、と嫌な音を立てて、魔族の手が放電する。

 そして……


「ふぎゃんっ!?」


 漆黒の雷撃が放たれて、カナデを直撃した。


 ビクビク、とカナデの体が痙攣する。

 そのまま吹き飛ばされて、茂みに突っ込む。


「カナデ!」


 慌ててカナデのところに駆け寄る。


「大丈夫かっ!?」

「な、なんとかぁ……いたたた……」

「タニア! それと、ソラとルナはこっちへ!」

「了解!」


 俺の意図を察してくれたらしく、タニアが前に出た。

 壁になるように、俺達と魔族の間に立つ。


「これでも食らいなさいっ!!!」


 複数の火球が撃ち出された。

 着弾と同時に炎の嵐が吹き荒れて、獣達を飲み込む。


「それと、これはカナデの分よ!」


 タニアは、一部、人間になる魔法を解除した。

 竜の翼が背に生える。

 その翼が光り輝き……

 その輝きが一点に収束されて、放たれる。


 ドラゴンブレスだ。


 光を束ねたような極光の一撃は、魔族を包み込んだ。

 圧倒的な熱量と質量が魔族の体を喰らい尽くそうと、暴れまわる。


「ソラ、ルナ。今のうちに、カナデを」

「はい!」

「うむ、我らに任せておくがいい」


 タニアが時間を稼いでいるうちに、ソラとルナがカナデに治癒魔法をかけた。

 あちこちに負っていた火傷が少しずつ消えていく。


「はふぅ……ありがと、ソラ、ルナ。助かったよ」


 ほどなくして治療が終わり、カナデが体を起こした。

 ちょっとフラフラしているものの、ダメージが残っている様子はない。


「きゃっ!?」


 ゴァッ! という轟音と同時に、タニアの悲鳴が聞こえた。


 再び魔族が漆黒の雷を放ったらしい。

 タニアのブレスを相殺して、巨大な爆発が起きる。

 吹き飛ばされたタニアが、こちらに飛んできた。

 慌ててその背中を受け止める。


「ひゃ!?」

「大丈夫か!?」

「え、ええ……うん、大丈夫よ。その、ありがと」


 タニアを地面に降ろす。

 念のために体を確認するけれど、深刻な怪我を負っている様子はない。

 よかった。


「なかなか、どうしテ。こうもうまくいかないなんて……さすが、最強種と呼ばれているだけのことはあるネ。強い強イ」


 ある程度は、タニアのブレスを食らったはずなのに……

 魔族は特に堪えた様子はなく、不気味な静寂を保っていた。


 カナデを撃退して……

 タニアの攻撃に耐えて……

 無数の配下を生み出すことができる。


 とんでもない化物だ。

 改めて、魔族という驚異を思い知る。


「俺がヤツの注意を引く。タイミングを合わせて、みんなで仕掛けてくれ」

「らじゃー!」


 地面を蹴り、距離を詰める。


「ファイアーボール・マルチショット!」


 駆けながら、全力で魔法を放つ。

 特大の火球が魔族を中心に炸裂した。

 炎の柱が立ち上がり、獣達を焼き尽くす。

 しかし、その中心にいるはずの魔族の影が消えることはない。

 健在であることをアピールするように、魔族は笑い、両手を広げた。


「コイツ!」

「おヤ?」


 炎が消えたところで、ワイヤーを射出。

 魔族の羽に絡ませて動きを封じる。

 そのままさらに距離を縮めて、魔族の足を払う。

 体勢を崩したところに、腹部と顔に、それぞれ一撃を見舞う。


「レインっ!」


 カナデの声に、俺はワイヤーを離して、大きく後ろに跳んだ。


「うにゃあああああっ!」

「えいやあああああっ!」


 カナデとタニアの痛烈な一撃が決まる。

 魔族の体が仰け反る。


「「レッドクリムゾン!!」」


 そこに、ソラとルナの魔法が炸裂した。

 真紅の球体が魔族を包み込み、豪炎を撒き散らす。


 最強種達によるコンビネーションだ。

 これならば、と思うけれど……


「なるほど、なるほどなるほド。これだけの力……脅威と認識するべきなのかもしれないネ」


 依然として、魔族は存在し続けていた。

 さすがに、無傷というわけにはいかなかったらしい。

 ところどころにダメージの跡が見られる。

 が、致命傷には程遠い。


 あれだけの攻撃に耐えるなんて……

 こいつ、本物の化物か?


「ではでは、今度は私の番だネ。虫共々、死ぬといイ」


 魔族が手の平を上空に向けた。

 月夜を隠すように、黒い雲が密集していく。

 ゴゴゴッ、と大気が震えて……

 魔族の手に漆黒の稲妻が落ちた。


「っ!?」


 魔族を起点に、雷撃が蜘蛛の巣のように散る。

 生き物のように街中を駆け抜けて……

 壊し、食らい、焼き尽くしていく。


「なんてことを……」


 あちこちで火の手があがり、人々の悲鳴が聞こえてきた。

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