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27話 最強種vs勇者の仲間たち

「ふん、俺の相手は貴様か」

「にゃんっ!」


 カナデは、アッガスと対峙した。


 レインはアリオスと。

 タニアはリーンとミナと、それぞれ戦ってる。


 大事なレインを侮辱した。

 許せない。

 絶対に勝つ! と、カナデは意気込む。


「ちょうどいい。最強種とは、一度、刃を交えてみたいと思っていたところだ。遠慮なくいかせてもらおう」

「こっちだって、遠慮なんかしないんだからね! ぼっこぼこにして、レインに謝らせるんだからっ」


 二人は同時に地面を蹴り、正面から激突した。


「むっ、ぐうううううっ!!!」

「うにゃあああああっ!!!」


 カナデの超速の突進を、アッガスは巨大な剣を盾のように使い受け止めた。

 それでも、完全に威力を押し殺すことはできない。

 巨大な砲弾が激突したように、アッガスの体が揺れ、押される。


「なかなか、くっ、やるな!」

「まだまだっ、こんなものじゃないよ! うにゃにゃにゃにゃにゃっ!!!」


 拳のラッシュ!


 上から。

 下から。

 右から。

 左から。


 カナデは、ありとあらゆる角度から拳打を叩き込む。

 さすがのアッガスも、完全に防ぐことはできない。

 肩や脇腹などに拳がヒットして、アッガスの顔が苦痛に歪む。


「ぐっ、おおお……!? 一撃一撃がとんでもなく重い……ちっ、このままでは押し切られてしまうな」

「どうしたの!? 勇者の仲間っていうのは、その程度なんだっ」

「舐めるな! 最強種とはいえ、小娘に負けてたまるものかっ」


 カナデの攻撃は、ただデタラメに拳をぶつけてるだけだ。

 それでも、最強種がやれば、とんでもない脅威になる。

 嵐のように拳が放たれて、アッガスは、すぐに反撃に転じることができない。


 アッガスは亀のようにじっと耐えた。

 耐えて、耐えて、耐えて……


「今だっ、くらえ! ぬぅあああああっ!!!」

「にゃっ!?」


 わずかな隙間を縫うように、アッガスが反撃に転じた。

 カナデはデタラメに拳をぶつけているだけなので、拳と拳を打つ合間に、どうしても、わずかな隙ができる。

 アッガスは、それを見逃さなかった。


 勇者の仲間という称号は伊達じゃないらしい。


「秘技っ、豪炎爆裂斬っ!!!!!」


 アッガスが跳躍した。

 自分の背丈ほどはあろうかという長く、鉄塊のように厚い剣を、直上から叩きつける。


 常人ならば、回避不可の一撃。

 何が起きたかわからないまま、体を両断されているだろう。


 しかし……


「にゃんっ!」

「なぁっ!!!?」


 ばしぃっ! と、カナデはアッガスの剣を横に叩き飛ばした。

 大した力を込めた様子もなく、邪魔と言うように、蚊を追い払うように……

 あっさりと、アッガスの必殺の一撃を弾いた。


「なっ……ば、バカな!? 岩も砕く、俺の必殺の一撃を、こうもあっさりと防ぐだと!?」

「ふーん……勇者の仲間って、その程度なんだ。最初は、ちょっとはやるのかと思ったけど、がっかりしちゃった」

「くっ……ならば、本気で行くぞ! レインが必要になるからと、手心を加えていたが……もうやめだ! このまま舐められるわけにはいかないからな……悪いが、全力を出す。死んだとしても、恨むなよ」

「なら、私は半分くらいの力でいくね」

「……なんだと?」


 あっさりと言ったカナデの台詞に、アッガスは思わず動きを止めて、問い返した。


「あなたが本気を出すなら、私も、もう少し真面目に……半分くらいの力でやってあげる。痛い目に遭っても恨まないでね? にゃふー」


 同じような台詞をあえて使い、アッガスを挑発するカナデ。


 アッガスは激しく動揺する。

 あれだけの力を見せておきながら、全力ではなくて、それどころか、力を半分も出していなかった?


 そんなことはありえない。

 あってはならない。

 もしも、その言葉が本当だとしたら……

 自分はどうあがいても勝てるわけないではないか。


 アッガスは顔をおもいきり引きつらせた。


「ま、待てっ……俺は、これ以上は……」

「あれだけレインをバカにして……私、本気で怒ってるんだからね! ちょっとは反省してっ、うにゃあああああっ!!!」


 カナデの怒りの一撃をまともに喰らい、アッガスは人形のように吹き飛ばされて、そのまま昏倒した。




――――――――――




 タニアは、リーンとミナと対峙していた。


「ふーん……あたしの相手は、あんたたち、っていうわけね。ホントはあの勇者がいいんだけど……ま、あれはレインに譲ってあげますか」

「ちょっと、何よあんた? ものすっごい生意気なんだけど」

「勇者であるアリオスに対して、なんていう口を……竜族というのは、傲岸不遜な愚かな存在なのですね」


 あんたたちがそれを言うか?

 タニアは、心の底から呆れた。


「かかってきなさい」


 タニアは指をくいくいっとやり、二人を挑発した。


 普段は生意気な口をきいているが……

 実のところ、タニアはレインのことを高く評価してる。

 竜族である自分をテイムした技量だけではなくて、その人柄、性格を気に入っている。

 自身が傷つくことを厭わず、助けてくれたこともある。

 その時に、大事だから、と言ってくれた。


 直接聞けば、絶対に否定するが……

 内心では、カナデと同じように尊敬さえしていた。

 自分を使役するにふさわしい主であると思う。


 それなのに。


 この連中はレインをバカにした。

 バカにするだけではなくて、心を傷つけて、それが当たり前だというように笑った。

 そして、再び自分達に都合のいいように利用しようとした。


 許せるわけがない。


 その怒りが、タニアの心に火を点ける。

 タニアは、最初から手加減なく、出し惜しみなく、全力でヤルことを決意した。


「このクソトカゲが……後悔するんじゃないわよ! 見なさい、千を超える魔法を操るあたしの力を! グラビティバースト!!!」

「私達の力を甘く見たこと、後悔させてあげましょう! そして、己の愚かな所業を悔い改めなさいっ。集え、浄化の光! ホーリーフレア!!!」


 魔物を100匹まとめて吹き飛ばせるような、強大な上級魔法が二つ、放たれる。

 黒と白の光が破壊を伴い、タニアを飲み込もうとした。


 しかし、タニアは慌てない。

 避けることすらしない。


 余裕の笑みを浮かべながら……パチン、と指を鳴らす。


 たったそれだけで、最初から何もなかったように、二つの魔法は消滅した。


「……は?」

「……え?」


 リーンとミナが唖然とした。

 一方のタニアは、そんな二人の反応が楽しいというように、ニヤニヤと笑っていた。


「どうしたの? あたしを叩きのめすんじゃなかったの?」

「っ……! い、言われなくても……すぐにやってやるわよっ! レッドクリムゾン!!!」

「合わせますよ、リーン! ジャッジメントアロー!!!」


 紅蓮の炎と聖なる光の矢がタニアに向けて放たれた。

 速度、タイミング、共に申し分ない。

 避けられるはずのない攻撃だ。


 しかし……


 再び、タニアはパチンと指を鳴らした。

 それだけで魔法が消える。


「……は?」

「……え?」


 壊れた人形のように、まったく同じ反応を繰り返し、再び唖然とするリーンとミナ。

 そんな姿がツボにハマったらしく、タニアが爆笑する。


「あはっ、あははははは! 何よ、何してんのよ、あんたら! あたしを痛い目に遭わせるんじゃなかったの? なにぼーっとしてんの? あはははっ、その顔、すっごい面白いんだけど」

「ぐ、ぎ……こ、このトカゲが……今、何をしたのよ!?」

「マテリアルキャンセラー。対象の魔法構造を解析して、適した魔力波をぶつけることで相殺……って、小難しい説明はいっか。要するに、あたしの力であんたたちの魔法を打ち消したのよ」

「そ、そのようなこと……できるはずがありません! 不可能ですっ」

「できない? 不可能? それなら、今起きた現象はどう説明するの? 奇跡が起きて、神さまがあたしを守ってくれたとでも?」

「そ、それは……」

「あたしにとって、上級魔法を打ち消すことなんて造作もないの。こう、指をパチンと鳴らすだけ。それだけでいいのよ。竜族であるあたしには、これくらい楽勝なの。言っておくけど、あたし達より魔力が上の精霊族は、もっとえげつない魔法を使うって話よ?」

「こ、コイツ……化物、だ……」


 リーンが顔を青くして後ずさる。

 ミナは全身を震わせて、その場で尻もちをついた。


「戦意喪失しちゃった? でも、ざんねーん。戦う気が失せたからといって、見逃してあげるほどお人好しじゃないのよね、あたし。あんたたちが攻撃してきたんだから、あたしも攻撃してもいいわよね? 反撃してもいいわよね? ……ねぇ?」

「ひっ」

「特別に、『本物』の魔法を見せてあげる……上級なんてチャチな魔法じゃないわ。その上の位階の魔法……超級魔法を!」


 タニアは手の平を二人に向けた。

 圧倒的な量の魔力が収束して、光り輝く。


「終焉をプレゼントしてあげる。アルティメットエンド!」


 巨大な立体型魔法陣が宙に展開されて……

 それが隕石のように落下を開始する。


 その対象は……リーンとミナだ。


「ひぃっ!?」

「り、リーンっ、げ、迎撃を……う、撃ち落としてください!」

「無理っ、無理無理無理ぃ!!! あんなの、あんなの、あたしの手に負えないからっ!!! ミナが防御魔法を展開してよっ」

「わ、私だって無理ですよ! 私の力では、一瞬で撃ち抜かれて……あっ、あああ、もう目の前に……!!!?」

「やめっ、やめてやめてやめて……! お願いだから、謝るからっ! だからだから、いや、いやあああああっ!!!」

「神よ! 神よ神よ神よ、ああ、どうか慈悲をっ……!!! あっ、あああああぁっ!!!?」


 二人は半狂乱になり、共にすがりついた。

 神に祈るが、現実は無慈悲だ。

 立体型魔法陣が着弾、二人を包み込んだ。


 ……が、それだけだ。


 爆発するわけでも天変地異が起きるわけでもなくて、ただ、光が弾けただけだ。

 それだけで、他に何もない。


 ただ、リーンとミナのショックは相当なものだったらしく、その場で失神していた。

 失禁さえしていた。

 そんな二人を見て、タニアが失笑する。


「だらしないわねえ、単なるコケ脅しにそこまでビビるなんて。おまけに失神するなんて……勇者の仲間っていうのも、大したことないのね。……ホントにヤッちゃおうかしら? んー……でも、レインに怒られそうだから、やめといてあげる。あんたたち、運が良かったわね? ふふっ」


 二人を見下ろしながら、タニアは妖しく笑うのだった。

『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、

評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。

よろしくおねがいします!

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[一言]勇者パーティーって…その程度で世界を救おうと思っていたのかねぇ。まぁ使役してる従魔が強すぎるだけなのかな。
[気になる点] 「マテリアルキャンセラー。対象の魔法構造を解析して、適した魔力波をぶつけることで相殺……って、小難しい説明はいっか。要するに、あたしの力であんたたちの魔法を打ち消したのよ」 >>この時…
[良い点] シナリオ自体はいい [気になる点] 場面展開がわけわからん [一言] シナリオ自体はここまで読んできて良いと思うけど場面展開とか描写が薄すぎて何が何だかわからん。とりあえず人と衝突させてバ…
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