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211話 カナデとデート

 空を見上げると、青い空の中を白い雲が流れていた。

 雲の切れ目から太陽が顔を覗かせて、暖かい日差しを振りまいている。


「今日は良い天気だな」

「そ、そうだね!」

「こんな日はのんびりと散歩でもしたいな」

「そ、そうだね!」

「でも、冒険するのも悪くないな。いつも以上にがんばれそうだ」

「そ、そうだね!」


 隣を歩くカナデは、同じ言葉を繰り返していた。

 尻尾がピーンと伸びていて、なぜか緊張しているみたいだ。


「カナデ?」

「にゃ、にゃに!?」

「なんか緊張してるみたいだけど、どうしたんだ?」

「ううん! ぜんぜん! これっぽっちも! 緊張なんてしてにゃいよ?」


 全力で否定された。

 どう見ても様子がおかしいんだけど……

 まあ、体調不良とかそういう感じじゃないから、そっとしておくか。

 カナデも年頃の女の子だし、男である俺に話せないことの一つや二つ、あるだろう。


「ところで、今日は何を買いに行くんだ?」


 買い物に付き合って欲しい、と言われて街に出た。

 カナデは目的地を教えてくれない。


「あっ、えとえと、買い物というか、その……レインと一緒に行きたいお店があるの!」

「俺と一緒に?」

「にゃあにゃあ、い、言っちゃった……一緒に行きたいなんて、大胆なこと言っちゃったよぉ……」


 カナデが赤くなり、くねくねと身悶えていた。


「え、えっとね? おいしくて甘いケーキが食べられるお店があるの」

「あれ? そんな店、あったっけ?」

「にゃー、最近できたらしいよ。この街、けっこう発展しているからね」


 少し前に、ようやく、ホライズンの正式な領主が任命された。

 新しい領主は前任者とは違い、聖人君子を絵に描いたような人だった。

 その上、優れた領地経営の手腕を持っている。

 拝命されてまだ少しなのに、ホライズンは活気のいい街に変わっていた。


「新しいところだから、私一人だとなんていうか、寂しいから……えっと、えっと……レインと一緒に行きたいなー、なんて」

「そういうことなら、みんなも誘った方が良かったんじゃないか?」

「にゃ!? えとえと、ま、まずは私達が偵察にいかないと! 実はおいしくないお店だったりしたら、大変だからね!」

「お、おう?」


 よくわからないが、カナデの勢いに押されてしまう。


「それじゃあ、行くよー!」




――――――――――




 レインを好きになってしばらく……

 そろそろ、関係を進展したい。

 恋人とまでは言わないけど、もうちょっと仲良くなっておきたい。


 というわけで、デートをすることにした。

 不公平がないように、順番にレインとデート。

 私が一番手だ。

 みんなで話し合い、色々と手を回してもらった。


 あうあう、すごく緊張するよぉ……!


 デートの前日なんかは、絶対に仲を進展してみせる! とか意気込んでいたんだけど……

 いざレインの顔を見ると、なんかもう……恥ずかしくて恥ずかしくて、うまく言葉が出てこない。


 うにゃー……私、変な顔してないかな?

 かわいくない、とか思われていないかな……?


 すっごく心配。

 心配で心配で、自慢の尻尾がへなぁってなっちゃう。


「カナデ?」

「にゃん!?」


 気がつくと、対面に座るレインが心配そうな顔をしていた。


 店に入ってから、ずっとあれこれと考え事をしていたから、心配をかけちゃったみたい。


「にゃ、にゃんでもないよ、なんでも!」

「そうは見えないんだけど……うーん」

「ほ、ホント大丈夫だから! えっと、えっと……そう! ケーキが楽しみで、落ち着かないの!」

「それならいいんだけど……もしも体調が悪いようなら、そう言ってくれよ?」


 にゃあ♪

 レインに心配されちゃった。

 やっぱり、レインは優しいなあ、かっこいいなあ。


 尻尾が勝手にフリフリと揺れてしまう。


「おまたせいたしました」


 店員さんがやってきて、私とレインの前にケーキとドリンクを置いてくれた。


「おおおぉ~♪」


 ケーキはたっぷりの生クリームで包み込まれていた。

 スポンジケーキの間に季節のフルーツがたくさんサンドされている。

 しあげに粉砂糖がかけられていて、雪が降り積もったみたいに綺麗だ。


「にゃあにゃあ♪ すごくおいしそうだよぉ♪」

「だな。さっそく食べようか」

「うん! いただきまーす♪」


 フォークの先でケーキをカットして、一口。


「んんんぅ~~~、おいしい♪」

「いいな、コレ。甘さがくどくなくて、フルーツがいい感じに主張してて……うん、うまい。男の俺でもすんなりと食べられるよ」

「ふふっ、レインが喜んでくれてよかった」


 せっかくだから、レインも喜んでほしいからね。


「あっ」


 二口目を食べようとしたところで、フォークを落としてしまう。

 店員さんに交換してもらおうと思ったけど、あいにくと、今は忙しいらしく姿が見えない。


「にゃー、どうしよう? すぐに食べたいのに……」

「よかったら、俺が食べさせようか?」

「ふぇ!?」


 そ、そそそ、それって……あーん、っていうこと!?


「あ、でも俺が口をつけたフォークなんてイヤだよな」

「ううん! そんなことないよっ、イヤなわけないよ!!!?」

「そ、そうか?」


 あまりの食いつきっぷりに、レインがちょっと引いていた。

 思わぬ展開に喜んで、がっつきすぎたかもしれない、反省。

 でもでも、恋する乙女はそういうものなんだよ?


「それじゃあ、口を開けて」

「あ……あーん」


 私は恐る恐る口を開けた。

 すごくドキドキする。


 ひな鳥って、こんな気分なのかな?

 そんなどうでもいいことを考えてしまう。


「ほら」

「あむっ」


 レインにケーキを食べさせてもらう。

 甘い……でも、それ以上にうれしい。

 すごくすごく幸せ♪


「にゃふふふ……レインにあーんってしてもらっちゃった♪ あーん、って」

「ど、どうしたんだ、カナデ? なんか変な顔をしているが……」

「ううん、なんでもないよ!」


 好きな人にあーんをしてもらえる幸せに浸っていただけだよ?

 変な顔とは失礼だなあ、にゃー!


「ねえねえ、レイン。もう一口、いいかな?」

「ああ、いいぞ。ほら」

「あーん……あむっ♪」


 レインにあーんをしてもらえるのが幸せで幸せで……

 たくさんケーキを食べさせてもらったんだけど、結局、味はよくわからなかった。


 それくらいに緊張していて……

 でも、とてもうれしい時間だった。

『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、

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