194話 活動再開
……イリスの事件から、一ヶ月ほどが経った。
これまでにない規模の事件だったので、色々と事後処理が膨らんで……
それに伴う疲労も増えた。
なので、しばらくは休みにすることにして、英気を養うことにした。
そうして、一ヶ月が過ぎて……
再び、冒険者としての活動を再開することにした。
「こんにちは」
「あら、シュラウドさん。それに、タニアさんも。ようこそ」
冒険者ギルドを尋ねると、ナタリーさんが笑顔で迎えてくれた。
この笑顔を見るのも、久しぶりのような気がする。
イリスの事件は、長い間、時間がとられたし……
その後も、事後処理やらで忙しかったからなあ。
「ふふんっ、喜びなさい。今日からあたし達、活動を再開することにしたから」
タニアが胸を張って、偉そうに言う。
そんなタニアの言葉に、ナタリーさんが笑顔になる。
「まあ、そうなんですか? 正直言うと、助かります……シュラウドさん達がいないと、なかなか依頼が解決しなくて……」
「そんなことないだろ? 俺達以外にも、冒険者はたくさんいるんだから」
「それはそうですが……でも、シュラウドさん達ほどの力を持った冒険者となると、限られてくるので」
「そんなことないだろ」
「そんなことあるんですよ。まったく……シュラウドさん達は、今や、この街を代表する冒険者パーティーの一つなんですからね?」
驚きだ。
いつの間にそんなことになっていたのだろうか?
そこまで言われると、ちょっと照れくさい。
でも……
みんなでコツコツと築き上げて、そこまで来ることができたと思うと、それはそれで誇らしい気分になった。
「なにか依頼はないかしら? あたし達の復帰にふさわしいような、ぱーっとした派手なものがいいわね」
「こらこら。勝手にそういうことを決めない」
「あいた!?」
タニアの頭をコツンとやった。
「うー……なにするのよ、レイン」
「いきなり派手な依頼を請けるなんてこと、しないように」
「でもでも、ここ最近、あまり体を動かしてなかったし……久しぶりにスカッとしたいじゃない?」
「わからないでもないけどな」
でも、いきなり体を動かしたら、体がびっくりして事故を起こしてしまうかもしれない。
まずは準備運動をしないと。
「というわけで、なにか依頼はありますか? できれば、そんなに負担のかからない軽めのもので」
「うーん、そうですね……」
ナタリーさんが棚からファイルを取り出して、パラパラと用紙をめくる。
「でしたら、ハンターウルフの群れの討伐などはいかがでしょうか?」
「ハンターウルフか」
「農家の方からの依頼です。最近、群れをなして行動しているみたいで……家畜などに被害が出ているそうです。家畜を守ること、群れを駆除すること。この二つが依頼達成の条件ですね。シュラウドさん達には、ちょうどいい案件かと」
「んー……ちょっと華が欠けるけど、まあ、仕方ないわね。あたしはそれで構わないわよ」
目でタニアに確認すると、そんなことを言った。
それから、考えをまとめてみる。
ハンターウルフなら脅威はない。
家畜を守ることを考えると、パーティーを二つに分けないといけないけど、俺達ならそれも問題はないだろう。
「……うん。それじゃあ、その依頼を請けようかな」
「はい、わかりました。それでは、手続きをしておきますね」
こうして、俺達は久しぶりに依頼を請けることになった。
――――――――――
ハンターウルフによる被害は、日に日に増しているという。
家畜が襲われることもあり、農家にとっては深刻な問題だ。
なので、俺達はその日のうちに依頼に取り掛かることにした。
カナデ、ソラ、ルナに家畜を守ってもらい……
残りのメンバーでハンターウルフを討伐することにした。
俺とタニア。
それと、ニーナとティナを加えた四人パーティーで、街から離れたところにある森の中を歩く。
依頼主の話によると、ハンターウルフは森の中を住処にしているらしい。
「ふふーんっ、久しぶりに暴れられると思うと、腕が鳴るわ」
「ほどほどにしておいてくれよ? やりすぎて森を燃やすとか、そういうことはなしで」
「レインは、あたしのことなんだと思ってるのよ?」
タニアにジト目で睨まれてしまった。
でもなあ……
タニアって、時折、発言が危険なんだよな。
出会ったばかりの頃は、敵ごと森を焼き払うとか、平然と言っていた気がするし。
まあ、その頃とずっと同じというわけではないと思うが……
やりすぎてしまわないか、という心配は今もあったりする。
「あー、ええなー。昼でも体が自由に動くって、ちょー新鮮な気分や」
ニーナの頭の上で、人型の体を得たティナがごきげんに鼻歌を歌っていた。
とてもうれしそうだ。
それにしても……
ヤカンでも人形でも、ニーナの頭の上が定位置なんだな。
なにかこだわりでもあるんだろうか?
ニーナの頭の上は、居心地がいいとか?
「牛さん、ヤギさん達をいじめる……魔物、は……ダメ。わたし、がんばるから……ねっ」
ニーナは気合を入れていた。
がんばる理由が微笑ましい。
ただ、ニーナはあまり戦闘能力はないから、無理はしないでほしい。
って、そう思うのは過保護かな?
ニーナが聞いたら、『わたしも戦えるよ』と、拗ねてしまいそうだ。
「ねえねえ、レイン」
ふと、タニアが話しかけてきた。
「うん?」
「あたしの心配はしてくれないの?」
「……なんで、俺の考えていることが?」
「ふふっ。レインってわかりやすいもの。顔を見ていればわかるわ」
まいったな。
今後、タニアの前で変なことは考えられなさそうだ。
「ま、そこがレインの良いところでもあるから。レインはそのままでいなさいよね」
「褒められているんだか、からかわれているんだか」
「あら、心外ね。きちんと褒めているのに」
「そうは思えないから困るんだよ」
……さてと。
「まあ、おしゃべりはここまでにして……」
「ええ、そうね。そろそろ、仕事をするとしましょうか」
俺とタニアが身構えて……
ニーナとティナも、俺達に続く。
ほどなくして、ピリピリとした殺気が叩きつけられる。
木々の合間から、一頭、また一頭とハンターウルフが現れた。
凶悪な牙をむき出しにして、低い唸り声をあげている。
「全部で50頭ってところか?」
「ふふーんっ。これくらい楽勝ね。あたしを相手にするなら、100倍はいないと」
「いや、それは無茶だろ」
「あたしならできるわ」
その自信は、いったいどこから出てくるのだろう?
でも、でたらめと言えないところがタニアの怖いところでもあり、頼りになるところだ。
「それじゃあ、いくわよっ!」
タニアが大きな声をあげて……
俺達は一斉に突撃した。
――――――――――
「はっ!」
カムイを縦に一閃。
ハンターウルフの体が両断されて、地面に転がる。
ガンツにメンテナンスをしてもらったからか、切れ味は抜群だ。
「んっ!」
近くを見ると、ニーナがハンターウルフの頭上に転移して、真上から蹴りつけていた。
そこにティナが念動力で押しつぶすという、見事な連携を見せる。
そして……
「これで……終わりよっ!」
我らがエースのタニアは、尻尾を鞭のように振るい、ハンターウルフを三匹まとめて薙ぎ払った。
痛烈な一撃を受けたハンターウルフは立ち上がることができず、そのまま、魔石へと姿を変える。
「ま、こんなところかしら?」
「油断しないように。まだ生き残りがいるかもしれないぞ」
「そう? でも、そんな気配は……えっ、ちょっと待って。なにこれ!?」
タニアが周囲の気配を探り、その顔を強張らせた。
なんだ?
いったい、何が……?
問いかけようとした、その時。
「キシャアアアアアッ!!!」
大気を裂くような鋭い雄叫びが響いた。
慌てて声がした方に駆け出して、そこで俺達が見たものは……
「ドラゴンっ!?」
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