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181話 イリス戦・2

 わたくしは全てを出すことにした。

 レイン様は人間ではあるけれど、不思議とどこか惹きつけられるところがあり、気に入っていた。

 嘘や気まぐれの言葉でもありません。


 それ故に、どこかで手加減をしていたのでしょう。

 前回と同じ戦い方をしていたのがその証拠。


 ならば、甘えは捨てましょう。

 わたくしの全力を持って、わたくしの目的を阻害する壁を破壊いたしましょう。


 わたくしは翼を広げて……


「来たれ。終焉の白撃」


 とっておきを繰り出しました。

 前回の戦いで使ったことのない召喚魔法。

 空間全てを埋め尽くすような、超広範囲攻撃。

 それでいて、一撃一撃は上級魔法に匹敵するほどの威力。


 レイン様は、わたくしの魔法を見切ったと仰っていましたが……

 初見の攻撃ならば、避けることは敵いません。


 さようなら。

 これで終わりですわ。


 ……そう思っていたのに。


「なっ!!!?」


 魔法を放ち……

 そして、わたくしは驚愕の声をこぼしてしまいました。


 空間そのものを食らうように、破壊の光が吹き荒れました。

 避ける場所なんてありません。

 ネズミ一匹、逃げるスペースはありません。


 しかし。


 一つだけ、安全地帯がありました。

 それは……わたくしのすぐ傍。


「ふっ!」


 初見の魔法を繰り出されたというのに、レイン様は迷うことなく駆けてきました。

 まるで、わたくしの傍が唯一の安全地帯であることを知っているかのように。


 そして……レイン様はわたくしの懐に潜り込み、魔法を回避しました。

 そのまま、強烈な一撃を繰り出します。


「うあっ!!!?」




――――――――――




 イリスの召喚魔法は強力だ。

 隙間もないくらいの絨毯爆撃をされれば、避ける術はない。


 でも一つ、安全地帯はあった。

 イリスの周囲だ。

 彼女の召喚魔法は強力ではあるが、敵と味方を区別することなんてことは、さすがにできない。

 ならば、イリスは自分自身を誤射しないように、ある程度、安全を確保しているはずだ。


 そう判断して、踏み込み……

 そして、俺の予想は当たった。


「おおおおおぉっ!!!」


 右、左、もう一度右。

 拳と拳の合間に、蹴撃。

 斜め上から、死角への一撃。


 ラッシュを叩き込み、イリスを追い詰めていく。


「くっ」


 今の俺は普通の人と変わらない。

 それほどの力は出ないが……

 それでも、全てを急所にぶつけている。


 わずかに。

 しかしながら、着実にダメージが蓄積されていき、イリスの顔が歪む。


「しつこい、ですわっ!」


 イリスが跳んで、俺を振り払おうとした。

 しかし、それは許さない。

 ピタリと張り付くように、俺も跳んで、イリスを射程圏内から逃さない。


「このっ!」


 魔法で迎撃することは諦めたのだろう。

 イリスが拳を振るう。


 ゴォッ! と寒気がするような音が走り、イリスの拳が迫る。

 イリスの身体能力は猫霊族に匹敵する。

 あるいは凌駕する。


 今の俺は、普通の人と変わらない。

 一撃でも食らえばアウトだ。


 だから。

 一撃も食らわないことにした。


「なっ!?」


 超速で振るわれるイリスの拳を避ける。

 あるいは、途中で軌道を逸らして、掠る程度にとどめておく。

 致命的な一撃を食らうことなく……

 全てをしのいでみせた。


 イリスの攻撃を見切ったというのもあるが……

 それ以上に、スズさんとの特訓の成果が大きい。

 格闘訓練とか、死ぬほどやらされたからなあ……

 でも、そのおかげで、こうしてイリスと対峙することができる。


 イリスの攻撃を避けて、あるいは受け流して……

 反撃を叩き込んでいく。


 この戦いは、俺が完全にコントロールしていた。


「このっ……来たれ、嘆きの氷弾!」

「っ!?」


 自分を巻き込むのも構わないというように、イリスが召喚魔法を使った。

 氷の嵐が吹き荒れて、刃と化す。


 さすがに、これを無効化……防ぐことはできない。

 俺は後ろに跳んで、イリスから離れた。


「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」


 ようやく俺と距離をとることができたイリスは、肩で息をしていた。

 その肩からは、血が流れている。

 自分の魔法で自分を傷つけてしまったのだろう。


 しかし、そんな傷は構わないというように。

 獣のような目つきで、俺を睨みつけてくる。


「……どうして」

「ん?」

「どうして、そこまでの力がっ!!!」


 イリスは吠えるように、言葉を投げ放ち。

 俺を鋭く睨みつけてきた。


「あれから、まだほとんど経っていないのに……どうして、そこまでの力があるのですか!? わたくしを圧倒するなんて……そのようなこと、普通に考えてありえませんっ。例え、レイン様がアレの血を引いていたとしても……その成長速度は異常ですわ! おかしいですわ! なんなのですか、その力はっ!!!?」

「そうだな……強いて言うなら、覚悟を決めたからかな」

「覚悟……?」


 きょとんとするイリスに、俺は、俺の話をする。


「前回、イリスと戦った時は……正直、迷っていたんだ。一度、顔を合わせていたから……なんでイリスが、って思っていた。で、どうすればいいかわからなくて、どこを目的とするか定めていなくて……覚悟なしに戦っていた」

「……」

「でも、今は違う。俺は覚悟を決めた。イリスと戦い、イリスを封印する。そう、目的を定めた。だから、心が揺らぐことはない。前回と違って、驚くほど落ち着いている」

「……」

「知っているか? 覚悟を決めた人間っていうのは、自分で言うのもなんだけど、けっこう強いぞ? その力、見せてやる」

「ここで、わたくしが倒れるなどということは……封印されるということは……ありえませんっ!!!」


 再びイリスが牙を剥く。

 それは、最後の抵抗だった。

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― 新着の感想 ―
[一言]なんだろう。哀しい戦いだな…
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