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176話 VSアクス、セル・1

 数はこちらの方が上だ。

 うぬぼれているわけではないが、地力でも勝っていると思う。

 普通、最強種に勝てる人なんていない。


 それなのに……


「くっ!」


 アクスが突貫してくると同時に、剣を抜いた。

 わずかに湾曲した刃が、高速で迫る。

 カナデと契約したこの身でも、気を抜けば見落としてしまいそうになる。

 カムイで受け止めて……


「うにゃ!」

「くらいなさいっ!」


 その間に、カナデとタニアが飛びかかる。


 しかし、アクスの動きは速い。

 即座に攻撃目標を俺から二人に変更して、再び、神速の攻撃を見舞う。

 とんでもない反応速度だ。


「このっ!」


 カナデは宙を蹴り、攻撃を中断して回避行動に移る。


「舐めないで!」


 タニアは、そのまま攻撃を続けた。

 アクスの上体を逸らすことで避けて、距離を詰める。


 拳、脚、尻尾。

 三連撃を繰り出した。


「それは俺のセリフだ!」


 アクスは、タニアの攻撃を全て避けてみせた。

 その上で、きっちりと反撃を繰り出してくる。


「くっ」


 わずかに逃げ遅れて、タニアの前髪が切れた。

 あと少し逃げるのが遅れていたら……と、ゾッとしてしまう。


「レイン、カナデ、タニア!」

「そこをどくのだ!」


 ソラとルナの声に反応して、俺達は一斉に飛び退いた。


「「フラッシュインパクト!!」」


 ソラとルナの魔法が同時に炸裂する。


 光が弾けた。

 白い閃光がアクスを包み込む。


 決まりだ。

 ある程度、手加減はしているだろうけど……

 ソラとルナの魔法に耐えられるわけがない。


 残りのセルを……


「まだまだぁ!!!」

「なっ!?」


 粉塵を切り払い、アクスが飛び出してきた。


「あれを食らって、まだ意識を保っているんですか!?」

「気合で我慢した!」

「そんなの反則なのだ! 我は精神論は好かないぞ!?」


 アクスがソラとルナに迫る。

 まずは、魔法を使う二人を潰しておこう、という考えなのだろう。


 しかし、そうそううまくいくとは思わないでもらいたい。


「んっ!」


 ニーナがソラとルナに触れて、転移で逃げた。

 三人は上空に逃れるが……


「ふぁ!?」


 それを見計らっていたように、セルが矢を放つ。

 風を切り裂くように飛ぶ矢が、三人を襲い……


「甘いで!」


 ティナの声が響いて、矢が明後日の方向に飛んでいく。

 ティナの力で軌道を逸らしたのだろう。


 しかし……

 それがどうした? とでも言うように、セルは矢を連射する。

 一度に三本の矢を構えて、それを正確無比な射撃で放ち、即座に充填して……それを繰り返す。

 とんでもない連射速度と精密さだ。


「こいつは……厄介だな!」


 剣を己の手のように操り、近接戦闘に特化したアクスは、最強種並の力を持っている。

 近接戦闘に限り、その力は計り知れないものがあった。


 距離を取ればいいのかもしれないが……

 そうすると、今度はセルの射撃の餌食にされてしまう。

 恐ろしいほど正確無比な一撃は、避けることが難しい。


 これがAランク冒険者の力か。

 さすが、というべきだ。

 スズさんの特訓がなければ、負けていたかもしれない。


「どうした、その程度か!?」

「くっ」


 アクスの猛攻に押されてしまう。


 アクスは、間違いなく本気で来ていた。

 手加減など一切なく、殺すつもりで戦っている。

 セルも同じだ。

 一切の加減がない。


 二人は、それくらいの覚悟を持って戦っている、ということだ。


 一方、俺は……

 俺達は、二人を殺さないように、ある程度、力を加減していた。


 いかに敵対しているとはいえ。

 道を妨害しているとはいえ。

 一時は、一緒に過ごした仲間なのだ。


 そんな相手と本気で戦うなんて……

 簡単に割り切れることじゃない。


「ふざけるなよっ!!!」


 アクスが怒りをにじませながら、勢いよく切りかかってきた。

 どんどん加速している。

 手加減とか抜きにしても、そろそろ、視認するのが限界になってきた。


 こいつ、さらに上があるっていうのか!?


「お前、手を抜いてるだろ!?」

「それは……」

「もう一度言うぞ、ふざけるなよ!!!」

「ぐっ」


 アクスの剣をカムイで受け止めて……

 つばぜり合いの形になる。


 己の持つ力をぶつけて、ギリギリと押し合い……

 そして、アクスが間近で叫ぶ。

 激情をぶつけてくる。


「てめえはてめえの道を決めたんだろ! 俺達とやりあってでも、進むって決めたんだろ!」

「……」

「それなのに、今更、ためらってるんじゃねえ! 俺達とやりあうことに迷ってるんじゃねえ!」

「でも……アクスとセルは仲間だった。仲間に本気で刃を向けるなんて……」

「それが甘いんだよ!」

「ぐっ」


 力押しに負けて、吹き飛ばされる。

 追撃をしかけてきたアクスの一撃を、とっさのところで防御した。


「自分の道を決めたなら、よそ見してるんじゃねえよ! 覚悟を決めろっ、俺達はとっくに覚悟を決めているぞ!」

「っ」

「お前の全部を掴み取ろうとする、その姿勢……むかつくんだよ!!!」

「好き勝手……言ってくれるな!!!」


 蹴り上げて、アクスを押し返した。

 今度は、こちらから追撃に移る。


「なら……本気でいくぞ」


 言葉にしないものの、アクスの考えていることは伝わってきた。

 覚悟を決めろ。

 甘さを捨てろ。

 そう言いたいのだろう。


 すでに俺達は敵対しているのに、俺のことを気にするなんて……

 どっちがお人好しなんだか。


 心の中で苦笑して……

 でも、それは表情に出さない。


 行動を持って、アクスに応えるだけだ。


「いくぞ!」


 俺は、本気を出すことにした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 作者さん、このビーストテイマーの話の中で私が好きな話しの一つがここなんですよね。 アクスがレインに対して啖呵を切るところ、「ちくしょう、かっこいいじゃねぇかよ・・!」と思います。 自分の信念…
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