170話 精霊族の試練
長に案内されて、闘技場のようなところへ場所を移した。
「精霊族の里にこんなところがあるなんて、驚きだな」
「ここは、主に魔法の訓練をするところなのだ。魔法の訓練をする場所だから、こうして広いスペースが確保されたのだ」
「あと、魔法が失敗した時、周囲に被害が出ないように、常時、結界が張られていますよ」
ルナとソラが、そう説明してくれた。
ここで、長の言う『試練』が行われるわけか。
いったい、どんな内容なのか?
少しだけ緊張してきた。
「舞台に上がれ」
長に言われるまま、闘技場の舞台に上がった。
俺に続いて、カナデも上がろうとするが……
「猫霊族の娘よ。それと他の者よ。お前たちはダメだ」
「にゃん? どうして?」
「お前たちの力を確かめる必要はない。最強種なら、それ相応の力を持っていることは間違いないからな」
「試練を受けるのは俺一人、っていうことですか?」
「そうだ。不安か?」
「いえ、問題ありません」
カナデ達に目をやる。
「というわけだから……みんなは下がっていてくれ」
「でも……」
「大丈夫。俺なら問題ないから。今までもそうだっただろう?」
「にゃー……レインって、自分に関することはちょっと嘘つく傾向があるんだよねえ」
……そうだっただろうか?
「でもでも……うん。信じるよ! がんばってね♪」
「ありがとう」
カナデと他のみんなが闘技場の脇に待機した。
「お主には、これからとある相手と戦ってもらう」
「とある相手……?」
もったいぶった言い方が気になる。
よほど強い相手なのだろうか?
自然と警戒心が上がる。
「一対一で戦い、倒すことができればお主のことを認めよう」
「勝利条件は?」
「文字通り、倒すことじゃ」
「それは……」
「なんだ。もう勝ったつもりでいるのか?」
「そういうわけじゃないですけど」
「ふん……妙な心配をする必要はない。お主の戦う相手は、魔法で作り出した『モノ』だ。命はない。だから、そういう心配をする必要はない」
「それを聞いて安心しました」
どんな相手なのかわからないけれど……
全力でいかせてもらう。
どうしても、認めてもらわないといけないからな。
それに、時間もない。
できることならば、短期決戦といきたいものだ。
……そんなことを考えていたのだけど。
そうそう簡単にいくわけもなく、甘い考えということを思い知らされる。
「お主の相手は……コイツだ!」
空間が歪み……
巨大な鏡が現れた。
「これは……?」
巨大な鏡に俺の姿が映る。
鏡に映る俺は、訝しげな顔をしていた。
「っ!?」
不意に、鏡に映る俺がニヤリと笑う。
しかし、俺は笑ってなんかいない。
鏡の中の俺は勝手に動き出して……
鏡の中から現実の世界へ。
もう一人の俺が、鏡の中から現れた。
「にゃ、にゃんですと!?」
「レインが二人……?」
カナデとタニアの驚く声が聞こえた。
俺も声にはしないものの、すごく驚いている。
いったい、これは……?
「それがお主の相手じゃ」
「俺……ですよね?」
「そう。つまり、自分自身との戦いということだ」
「自分と戦う……」
「人の本質は、己と向き合う時にこそ見極めることができる。故に、お主には自分自身と戦ってもらう。さあ、力を……お主の心を示してみせるがいい」
長老がパンと手を鳴らして……
それが、戦いの開始の合図となった。
――――――――――
もう一人の俺……
言いづらいので、『影』と呼ぶことにしよう。
影が、合図と共に駆けてきた。
「っ!」
速い!
まるで風のようだ。
駆け出した影を止めることはできず、懐に入れることを許してしまう。
影はそのままの勢いで拳を繰り出してきた。
一撃。
二撃。
三撃。
流れるような動作で、連打を放つ。
「こいつ……!」
一撃目は顔を傾けて避けた。
二撃目は左手で受け止めた。
三撃目は避けることも受け止めることもできず、まともに受けてしまう。
重い一撃だ。
体の芯まで衝撃が響くみたいで、思わずよろめいてしまう。
その隙を逃すことなく、影は追撃に移る。
距離をとろうとする俺にぴったりとくっついて、離れることはない。
まるですっぽんだ。
一度食らいついたら、二度と離すことはない。
「この……しつこいっ!」
影の足を払い……
体が傾いたところへ膝を叩き込む。
それだけで終わらず、その場で回転。
上から下へ踵を落とす。
痛烈な一撃を受けた影は、一瞬、よろめいたものの……
目に見える変化はそれだけで、すぐに体勢を立て直してみせた。
この力。
そして、この耐久力。
影は、俺のステータスを正確にコピーしているみたいだ。
となると……
「くっ!?」
嫌な予感がした直後……
影はファイアーボールを三発同時に唱えて、こちらに放ってきた。
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