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155話 暴かれた真実

「これは、封印の祠があった山で見つけた、冒険者の遺品です。その冒険者は何者かに斬り殺されていました」


 いつの間にか、ソラはあの冒険者の遺品を持ち帰っていたらしい。

 たぶん、こうなることを予想していたのだろう。


「ちなみに、その犯人はそこの勇者なのだ! 我ら精霊族の魔法で判別したから、間違いないぞ」

「動機は、目撃者を消すこと……封印の祠を壊すところを見られたから、殺したと考えるのが妥当でしょう」

「ぐっ……!」


 アリオスが強く唇を噛んだ。


「アリオス、どういうことですか……?」

「ちょ、ちょっと。あの冒険者は逃げ出した、って話してたじゃない」


 ミナとリーンが慌てている。

 どうやら、口封じに冒険者を殺したことは、仲間にも秘密にしていたらしい。


「また証拠が証拠が、と言われるのも面倒なので、さっさと披露することにしましょう。ルナ、どうぞ」

「うむ。我が魔法を見て驚愕するがいい! これが、死者の記憶を再現する魔法だ!」


 ルナが魔法を唱えた。

 記憶を探る魔法と、その映像を投射する魔法の両方を使う。


 視点は亡くなった冒険者のものらしく、どこか薄暗い山奥で、アリオスと二人きりでいるところが見えた。

 なにやら言い争いになり……

 冒険者が背を向けたところで、アリオスが斬りかかる。

 血があふれるシーンで、数人の村人が悲鳴をあげた。


 そこでキリがいいと判断したらしく、ルナが魔法を止めた。


「なっ……ぐ……こ、これは……」


 さすがのアリオスも、こんなものを見せつけられては弁明できないらしい。

 顔を青くするだけで、まともな言葉が出てこないみたいだ。


「……騙して、いたのですか?」


 村長が振り絞るような口調で、そう言った。

 他の村人達も、アリオスを睨みつけている。


「我らを助けてくれたのは己のためで……あの悪魔と手を組んでいて……手柄のためにそのようなことを……」

「なんてヤツだ……こんなのが、本当に勇者なのか……?」

「こんな連中に感謝してしまうなんて……」


 村人達の視線が矢のようにアリオス達に突き刺さる。

 いや、村人達だけじゃない。

 アクスとセルも、ゴミを見るような目をアリオス達に向けていた。


「くっ……茶番だ!」


 追い詰められたアリオスは、子供のように騒いだ。


「このようなこと、認められるわけがない! 僕をハメるための罠だ、それ以外にありえないっ」


 ……なんてことを口にするものの、まともに取り合うものは一人もいない。

 ただただ、冷たい目が返ってくるだけだ。


「くそっ……お前達なんかに付き合ってられるか!」

「アリオス!?」

「あっ、ちょ、ちょっと待ってよ! こんなとこに置いてかないでってば!」


 アリオス達が逃げようとするが……

 ここで目を離したら、再びなにかとんでもないことをやらかすかもしれない。


 アリオスが勇者とか、そんなことを気にしてる場合じゃない。

 俺はナルカミのワイヤーを使い、アリオス達を拘束しようとするが……


「ライティング!」

「くっ!?」


 アリオスが光を放つ魔法を使う。

 突然のことに対応しきれず、まともに光を直視してしまう。

 他のみんなも同じく、動きを止めてしまう。


 その間に、アリオス達は逃げたらしく……

 ようやく視界が元に戻った頃には、アリオス達の姿はきれいさっぱり消えていた。


「くそっ、逃げられたか!」


 アクスが苛立たしそうに地面を蹴る。

 対するセルは冷静だ。


「仕方ないわ、あきらめましょう」

「あんなヤツを放っておいていいのかよ!?」

「放っておくわけないでしょう? 今回のことは、ギルドを通じて、きっちりと国に報告をあげておくわ。こんなことをしでかしたとなれば、国が放置しておくわけがない。近い内に、何かしらの沙汰が下るはずよ」

「ちっ……一発ぶん殴りたかったが……まあ、仕方ないか。今はあんなのよりも、悪魔の対策を練らないといけないからな」

「そういうことよ」


 アリオスの問題を放っておくことはできないけれど……

 今はそれ以上に、イリスの問題に取り組まないといけない。


 すでに一回、襲撃を受けているからな。

 また同じことが近いうちに起きないとは限らないし……

 時間がある今、できることはやっておくべきだ。


「俺達は調査班だが……」


 アクスが、ちらりと村人達を見る。


「今は動けねえな」

「そうだな。ここを離れている間にイリスがまたやってきたら、どうなるか……」

「討伐隊が到着するまでは、俺達が護衛をしないと、ってところか」

「あら。アクスの割に頭が回るのね。もしかしてニセモノ?」

「んなわけねえだろ!? 俺でも、これくらいのことは考えられるわっ」


 それ、よくよく考えるとむなしい言葉に聞こえるんだけど……

 まあいいや。

 深くツッコミをいれると、色々と面倒なことになりそうだ。


「あの……冒険者の皆様方は、村を守っていただけるので……?」


 村長がおずおずと尋ねてきた。

 それに対して、安心させるようにしっかりと頷いてみせる。


「ああ、もちろん」

「おおっ、ありがたい!」

「でもよ、村長……俺達、大した金持ってないですよ……? 依頼料を払えるかどうか……」

「そ、それは……」

「んなこと気にすんな。今なら格安にマケてぐぁっ!?」


 なにか言いかけたアクスの頭を、いつものようにセルが弓ではたいた。

 ……アクスが殴られるのをいつもの光景、っていうのもすごいな。


「依頼料はいらないので」


 代わりに、俺がそう言う。


「えっ!? いや、しかし……こういう場合は、依頼料を支払うのが普通では? 冒険者の方々の力を借りるわけですから……」

「まあ、そうなんだけど……なんか弱味につけこんでるみたいだから、ちょっとなあ」

「そのようなことは……」

「それに、村を守ることも調査の一環だから。悪魔のことを知る人がいなくなると、困るのは俺達だし……まあ、そんな感じで、あまり気にしないでほしい」

「……ありがとうございますっ!」

「「「ありがとうございますっ!!!」」」


 村人達が一斉に頭を下げた。

 ちょっと照れる。


「冒険者というのは、すばらしい人ばかりなのですな……まるで聖人のようだ」

「ああ。あの勇者とは大違いだ」

「もしかして、こちらの方が本当の勇者じゃないのか?」

「おおっ、そうかもしれないな。あんなのが勇者なんておかしいからな」


 色々と言われたい放題のアリオスだった。

 まあ、自業自得なので同情なんてしないが。


「とにかく、討伐隊……応援が来るまでは俺達は村に滞在するので、よろしく」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「わかった、アクス? ああいう時は報酬を求めないのが一流の冒険者というものよ」

「うぐ……わ、わかったよ」


 セルに諭されて、アクスがなんともいえない顔をしていた。


 まあ、アクスの行動も間違っていないんだけどな。

 俺がしていることは慈善事業のようなもので、冒険者の行動とは大きく異なる。

 今回のことで、冒険者に報酬を支払わなくてもいい、という認識が広まるかもしれない。

 もしもそうなってしまった場合は、他の冒険者が迷惑してしまう。


 なので、こういう時は、どんな事情があれ報酬を請求するのが常なのだ。

 ……ということを、以前、ナタリーさんから教わった。


 冒険者の常識からは外れたことをしてしまったけれど……

 こんな状態の村人達から報酬を受け取るなんてこと、できないからなあ。

 今回ばかりは、ルールを破ることを黙認してほしいものだ。


「それで、これからどうする?」


 アクスがそう問いかけてきた。

 セルに弓で殴られていたはずなのに、ピンピンしている。


 いつものことだから慣れているんだろうか……?

 ふと、そんなどうでもいいことを疑問に思う。


「村の護衛ってのは問題ないが、それだけしかしないってのも、時間の無駄だろ?」

「そうだな。んー」


 ちょっと考えてから答えを出す。


「二手に別れるか。一つは、今まで通り悪魔……イリスに関する調査を。あれから時間を置いたことで、新しいことを思い出した人がいるかもしれない」

「おう、それもそうだな」

「もう一つは、村の防備を固める。敵はイリス一人じゃなくて、無数の魔物も含まれていることが判明したからな。もう一度襲われても、村に被害が出ないようにしたい。罠とか防壁などを設置しておきたいな」

「そうね……うん、妥当なところじゃないかしら」


 アクスとセルから賛同を得られた。

 念のためにみんなを見ると、問題ないというように、揃って頷かれた。


「じゃあ、応援が到着するまではこの方針で動くことにしよう。まず、調査を進めるチームだけど……」

「そっちは俺とセルが担当するぜ」


 アクスが名乗り出た。


「そういう調査は得意だからな」

「意外なことにね」

「そうそう、俺にしては頭を使う作業が意外で……って、おい!?」


 意外とノリの良いアクスだった。


「それなら、ソラ達も手伝いましょう。二人だけでは大変でしょうし……」

「我らが使う魔法があれば、聞き込みもスムーズに行えるぞ。ふははは!」

「おう、頼んだ!」

「なら、残りは村の防備を固めるということでいいな?」

「うん、いいよー」


 カナデがにっこりと頷いた。


「じゃあ、そういうことで進めよう。あんな戦いがあったばかりで大変かもしれないが、力を合わせてなんとか乗り越えていこう」

「「「「「おーーーっ!!!」」」」」

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