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118話 特訓をつけてあげましょうか?

「……ぅ……」


 深いところに沈んでいた意識がゆっくりと浮上する。

 少しずつ視界が明るくなり、頭の中がクリアーになっていく。


 俺は、ゆっくりと目を開けた。


「……ここは……」


 俺の部屋だ。

 最近、引っ越したばかりの天井が見える。


「えっと……」


 ひどく体が重い。

 それに、記憶も曖昧だ。


 俺、なんで寝ているんだっけ?

 何か、大事なことをしていたような……


「……にゃ……」

「?」


 ふと、聞き慣れた声が聞こえてきた。

 軽く体を起こして、声の方向を見る。


「すぅ……すぅ……」


 ベッドに上半身を預けるようにして、カナデが寝ていた。

 ちょっと難しい顔をしていて、寝付きはあまりよくなさそうだ。

 耳が、時折ぴょこぴょこ、と動いている。


「カナデ?」

「……にゃう」


 なんで、カナデがこんなところに……って、そうだ。思い出した。

 スズさんと戦ったんだっけ。

 なんとか勝利を得た……というか、認めてもらったという方が正しいな。

 あれは、とても勝ったとはいえない。


 で……おもいきり無茶をしたものだから、その反動で、俺は倒れていたんだろう。

 カナデは……たぶん、看病をしてくれていたんだろうな。


「ありがとな」

「……んにゃ?」


 頭を撫でると、カナデが身動ぎした。

 しまった、起こしてしまったみたいだ。


 カナデがゆっくりと体を起こして、くぁ、とあくびをする。

 それから、眠たそうな目を擦り、こちらを見て……


「にゃっ、レイン!?」


 俺が起きていることに気がついて、ピーンと耳を逆立てた。


「起きたの!? 起きたんだね!? 体は大丈夫!? 痛いところはない!? 喉は渇いてない!? お腹は減ってない!?」

「お、落ち着いてくれよ。そんなにがーって言われても、わからないって」

「あ……ご、ごめんね」

「いいよ。それだけ、俺のことを心配してくれていたんだろう? 心配かけておいてなんだけど、カナデの気持ちはうれしいよ」

「にゃあ……」


 カナデが照れた様子で、顔を赤くする。

 ただ、今回はそれだけじゃなくて……

 どこか熱っぽい視線をこちらに向けてきた。


 普段は見られない反応だ。

 どうしたんだろう?


「カナデ?」

「……にゃ!?」


 声をかけると、ハッと我に返った様子で、カナデがビクリとした。


「な、ななな、なんでもないよ!? そう、にゃんでもないからね!?」

「そう、か?」

「そうそう。ちょっと、ぼーっとしてただけだから……見惚れてたとか……とにかく、なんでもないから!」

「あ、ああ」


 カナデの勢いに押される形で、それ以上は追求しないことにした。

 今までにない反応だから、気になったんだけど……

 まあ、仲間とはいえ隠しておきたいことは、一つや二つはあるだろう。

 深くは気にしないことにした。


「ところで……俺、どれくらい寝ていたんだ?」

「三日だよ」

「そんなにか……」

「レインっ!」

「は、はい!?」


 いきなりカナデが厳しい視線になり、ついついかしこまってしまう。


「どうしてあんな無茶をしたの?」

「えっと……トリプルブーストのことか?」

「そう! あんなことをしたら、どんな反動があるかわからないし……下手したら、死んじゃってたかもしれないんだよ! 結果的に、三日寝込むだけで済んだけど……でも、私やみんながどれだけ心配したか……にゃうぅぅぅーーー」


 カナデがちょっと涙ぐんでいた。

 それを見て、俺は深く反省する。

 カナデを連れて行かせないためだったとはいえ、それでカナデに心配をかけていたら意味がない。


 というか……

 泣かれてしまうのは、非常に厳しいものがある。

 怒鳴られるよりも堪えた。


「悪かったよ……無茶をしたこと、反省してる」

「ホント……?」

「本当だ。軽率な行動だったと思うよ」

「もう、あんなことはしない?」

「……」


 即答できなかった。

 気をつけるつもりではあるけれど……

 もしも、同じようなことが起きたら?

 もしも、仲間が危険に晒されたら?

 その時、手段を選べない状況にあるとしたら、俺は、迷うことなく無茶をするだろう。


 そのことはカナデも理解したらしく、ジト目を向けてきた。


「にゃう……レインのばか」

「うっ……心配をかけたことは、本当に悪いと思っているよ。ただ、いざっていう時は、他に手段を選んでいられないし……また、無茶をしてしまうかもしれない」

「心配する私達の身にもなってほしいよ」

「……ごめん。言葉もない」

「でも……それが、レインらしいのかもね」


 カナデが柔らかく笑う。

 それから、俺の手を両手で握る。


「私には、レインの行動を束縛する権利なんてないけど……でもでも、無茶はしないでほしいの」

「わかっているよ。なるべく、今回と同じようなことはしないよ」

「にゃあ……そこは、絶対に、って言ってほしいんだけど……仕方ないか。それがレインだもんね。ただ……忘れないでね? 私達がいる、っていうことを」

「あ……」

「レインは一人じゃないよ。一人ではどうしようもない時も、私達がいるから……みんなでがんばれば、なんとかなるかもしれない。だから、そういう時は遠慮なく私達を頼りにしてね♪」

「……ああ。その時は、頼りにさせてもらうよ」

「にゃん♪」


 俺の答えに満足いった様子で、カナデが機嫌よさそうに鳴いた。


 ……と。

 その時、扉が開いて、スズさんが姿を現した。

 たぶん、俺の様子を見に来たんだろう。

 スズさんは、手を握り合う俺とカナデを見て、目を丸くする。

 少しして、楽しそうな、にこにこ笑顔になった。


「あら、あらあら。邪魔をしちゃいましたか」

「お、お母さん!? 邪魔、って……」

「これでも、カナデちゃんのお母さんですからね。カナデちゃんの気持ちはわかっているつもりですよ。だから、後は若い二人に任せて、私は引っ込むことにしますね。ふふっ♪」

「ち、違うからね!? そういうことじゃなくて……わ、私は、そのっ……あううう」

「ふふっ、カナデちゃんにも春が訪れましたね」

「というか、なんでわかるの!?」

「母親ですもの」

「にゃーーーうーーー」


 謎の笑みを浮かべるスズさん。

 そして、カナデは耳まで赤くして、じたばたと悶ていた。


 いったい、どうしたんだろう?

 よくわからないが……

 あんなことがあった後も、カナデとスズさんが笑い合うことができて……

 そのことをとてもうれしく思った。




――――――――――




 さらに一日が経過して……

 俺は、ほどほどに動き回れる程度には回復した。

 ただ、まだ冒険は早いかもしれない。


 まあ、それなりの蓄えがあるから、しばらくは動かなくても問題はないんだけど……

 そういう冒険者は、ギルドから注意されるということを聞いたことがあるし、ずっと引きこもってもいられない。

 リハビリもかねて、軽く体を動かした方がいいかもな。


 そんなことを思いながら部屋を後にして、みんながいるリビングへ移動した。


「おはよう」

「おっはよーっ、レイン♪」


 カナデが元気に挨拶をする。

 いつものように明るい笑顔を浮かべているのだけど……なんだろう?

 ちょっと前から、その笑顔の質が違ってきているような気がした。

 具体的に何がどう違うのか、って問われると困るんだけど……なんだろうな?


 他のみんなも元気そうだ。

 朝の挨拶を交わして、自分の席に着く。


「レイン、体はもう大丈夫なのか?」


 食事の準備をするルナが、心配そうにこちらを見た。


「ああ、もうなんともない。筋肉痛というか、そういうものはちょっと残っているけどな。こうして日常生活を送る分には何も」

「そうなのか、良かったぞ。じゃあ、早く回復できるように、たっぷりとおいしいものを食べるのだ。ほら、我の特製の朝食だぞ」


 ルナの差し出す朝食を受け取る。

 本来は、食事の当番は交代制で……ルナの猛反対によりソラは当番から外れているけれど……今日は俺の番だ。

 でも、まだ大変だろうとルナが交代してくれた。

 いつもみんなに助けられているんだなあ、と実感する。


「さあ、皆の分もできたぞ!」

「今日も……おいしそう」


 ルナが朝食を配膳して……

 それを見たニーナが、尻尾をぱたぱたさせていた。わかりやすい。


「スズもどうぞ、なのだ」

「ありがとうございます」


 スズさんは、まだウチに滞在していた。

 カナデを連れて帰るのは諦めたとはいえ、それではいさようなら、というのは寂しい。

 なので、しばらくウチに滞在してもらうことにしたんだ。


 いただきます、とみんなで唱和して、それぞれ朝食に手をつける。

 うん。

 今日もルナの料理はおいしい。

 食べる手が止まらなくなってしまうほどだ。


「ところで……」


 同じように、ぱくぱくと健康的に朝食を食べていたスズさんが、ふと思い出した感じで、こちらを見た。


「一つ、提案したいことがあるんですけど」

「提案ですか?」

「私の下で、特訓をしませんか?」

『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、

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[良い点] お砂糖成分は必要だな。母親公認だし、嫁一人目ゲット。無自覚?鈍感?テンプレ?いいんだよ。どうせ最後はゴールインするし、嫁たちのデレと悶えがより楽しめるってもんさ。
[一言] 鈍感系主人公…… 鈍感すぎない!?どんなけ 鈍感なんだよ 鈍感
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