１１４６話　本当に予想外の再会でした

「ティナ、ニーナ！」

　あまりに予想外の光景に、ついつい呆然としてしまったけど……

　我に返り、二人に声をかけた。

「ふぇ？」

「おん？」

　二人が振り返り。

　こちらと目が合い。

「「レイン！？」」

　驚いた様子で目を大きく、声も大きくした。

　ニーナが、たたたと駆けてきた。

　そのままの勢いで抱きついてくる。

「レイン！」

「おっと」

　しっかりとニーナを受け止めた。

　……よく見ると、少し背が伸びている。

　体もちょっと大きくなっているような気がした。

　成長しているんだな。

　ついつい親的な目線になってしまう。

「おー、ほんまレインの旦那や！　それにみんなもおる！」

　続けてティナがやってきた。

　メイド服。

　明るい笑顔。

　人懐っこい口調と性格。

　間違いなく、仲間の一人であるティナなのだけど……

「ティナ……なんか、大きくなってない？」

「ですね。すごく大きいです」

「成長期ではないか？」

　みんなが言うように、ティナは大きくなっていた。

　俺達と変わらない背丈。

　ティナは幽霊なので成長することはない。

　なにもしなければ夜間しか外に出られないため、以前、ガンツという武具職人にティナの体を作ってもらった。

　人形サイズのものだ。

　ただ、今のティナは俺達と変わらないくらいの背丈で……

「お、これか？　これは……あ、そろそろやな」

　ぽんっ、というコミカルな音と共に、煙が舞い上がる。

　大きくなっていたティナは、俺達が知るミニマムサイズに戻っていた。

「大きく見せる魔法の薬を使っていたんや。ずっと効果が続くわけやないから、切れてしもうたけど」

「ティナの姐御は、どうしてそんなことをしているっすか？」

「うちがちっちゃいままやと、ニーナだけに見えてまうやろ？　ニーナくらいの年頃の女の子の一人旅は危険や。せめて、大人がおらんとなー。ってことで、魔法の薬を使って姿を大きく見せていた、っていうわけや」

「なるほどっす」

「というか、お二人はここでなにをしていらっしゃったのでしょう？　わたくしの記憶に間違いがなければ、ニーナさまはノキアさまとご一緒だったはずですが……」

　コハネが至極当然の疑問をぶつけた。

　対するニーナは落ち着いている。

　なにかトラブルがあったわけではなさそうだ。

「ママは……仲間を探しに行く、って」

「ただ、ニーナを放っておけんから、最初は、ノキアさんがニーナをレインの旦那のところまで送る予定やったんや。ただ、うちも戻る途中で、偶然、出会ってなー。ならうちが送るでー、ってことで一緒になったんや」

「なるほど」

　そして、その途中で俺達と出会う。

　妙な偶然が重なるな。

　まあ……

　こんな偶然が重なったところで、特になにか大きな問題が起きるわけでもない。

　これは本当にただの偶然なのだろう。

　あるいは……

　自分で言うのもなんだけど、絆……とか？

　俺達の間の絆が、自然と出会うことを定め付けられていたとか。

　……さすがに恥ずかしいな、これ。

「なにはともあれ……おかえり。ニーナ、ティナ」

「うん」

「ただいまやで」

　二人はにっこりと笑う。

　その笑顔をまた見ることができて、嬉しくて幸せで……

　俺も、とびきりの笑顔を返した。

「ところで……」

　ティナは、定位置であるニーナの頭の上に移動しつつ、小首を傾げた。

「みんなは、こんなところでなにしてるん？　依頼の途中？」

「えっと……」

　当然、疑問に思うよな。

　冒険者の依頼だとしても、街から大きく離れたところまで出ることはあまりない。

　なにか事情があると見抜いている様子だ。

　隠しておく理由もないので、素直に現在の状況を説明した。

「タニアが婚約ぅ！？」

「……びっくり」

　理由を話したら、二人はとても驚いていた。

　ニーナは淡々としているように見えるけど……

　三本の尻尾がぴーんと跳ね上がり、体で驚きを表現していた。

「え？　え？　それ、マジなん……？　レインの旦那ラブのタニアが他の男と婚約とか、ありえないんやけど……」

「口で言われると、なんだかこそばゆいんだけど……まあ、俺達もおかしいと思って、竜族の里に向かう途中だったんだよ」

「なるほど、そういうことやったんや」

「たいへん……なこと」

　納得した様子の二人。

　その後に続く言葉は決まっている。

「なら、うちらも一緒に行くで！」

「がん、ばる」

「ああ、頼むよ」

　仲間の一大事。

　当然、ティナとニーナも放っておけるわけがなくて……

　こうして、妙な偶然からティナとニーナと再会して、旅の仲間が増えるのだった。