1143話 ど、どういうこと……!?
「なんだ、どうした?」
「主さま、なにか問題が……?」
俺達の叫び声を聞きつけて、奥からみんながやってきた。
しまった。
ルリがちょっと怯えてしまっている。
「ご、ごめん……事件とかそういうわけじゃないから安心してくれ」
「れ、れれれ、レイン! でもでも、これ、ある意味で大事件だよ!?」
「それはそうかもしれないけど……」
「ふむ?」
皆は怪訝そうな顔をした。
エーデルワイスが手紙に気づいて、手を伸ばす。
「問題はこれにあるのか?」
「あ、ああ……読んでくれればわかる」
エーデルワイスが手紙を開いて、他の皆は、さきほどカナデがそうしたように横から見る。
そして……
「「ふむ?」」
「「えええええーーーーー!?」」」
「?」
三者三様の反応を見せた。
エーデルワイスとコハネは、あくまでも落ち着いていて。
ソラとルナとライハはでたらめに驚いて。
ルリはよくわかっていない様子で小首を傾げた。
「れ、レイン!? これはどういうことなのですか!? た、タニアが結婚とか……」
「ずっと帰ってこないかと思っていたら、向こうで男を作っていたというのか!? くううう、そんな女だと思わなかったのだ!」
「タニアの姐御がアニキ以外を選ぶなんて……そ、そんなこと自分は認めないっす!」
「えっと……うん。ひとまず落ち着こう」
三人がやたらめったら慌てているから、逆に俺の方が落ち着いてきた。
「エーデルワイス、手紙を」
「うむ」
エーデルワイスから手紙を受け取り、改めて中に目を通す。
たぶん……だけど、書かれている文字はミルアさんのもので合っていると思う。
いつだったか、どこかでミルアさんの文字を見た記憶があり、それと違いはない。
偽装という線はないだろう。
……まあ、そもそもこんな偽装をしてどうするんだ、という話だが。
あと、これは別の話なのだけど……
みんなが慌てて、動揺しているところが嬉しい。
それはつまり、タニアの結婚を歓迎していないということで……
恋のライバルだから敵! というわけじゃなくて。
ライバルだけど、でも、仲間! という感じに捉えているわけで。
そのことが嬉しい。
都合のいい考えだけど、仲良く、が一番だ。
「とはいえ……そんな呑気なことを考えていられないよな」
タニアが結婚。
正直な感想は、ありえない……だ。
自意識過剰と思われるかもしれないけど……
タニアに好意を寄せられている自覚はある。
けっこう真剣に。
そんなタニアが、数カ月の里帰りでいきなり心変わりするとは思えない。
なんだかんだ、タニアは一途な女の子で……
えっと、まあ。
俺が言うのもなんだけど、俺は愛されていると思う。
だから、ありえない。
「なんだろうな……? 差出人がミルアさんじゃなかったら、なにかの事件を疑ったんだけど……」
ミルアさんはタニアを溺愛している。
そのタニアが嫌がるようなことはしないはずだ。
とはいえ……
溺愛しているが故に暴走、ということもあるかもしれない。
「……考えているだけじゃ埒があかないか」
「む? と、いうことは……」
「俺、竜族の里に行ってこようと思う」
事実がわからない。
まったく予想外の展開になっている。
予想をしようにも材料が足らなさすぎる。
なら、直接、竜族の里を訪ねて真相を確認するしかないだろう。
「レイン、もちろん我も行くぞ!」
「ソラもです。このような事態、放っておくことはできません」
「自分もっす! ってか、こんな状況で待っているだけなんて、じれったすぎてどうにかなりそうっす!」
「私も行くよ! もしも本当だったら、タニアの目を覚まさなくちゃ!」
「もしかしたら、洗脳などの操られている可能性があります。わたくしも同行いたしましょう」
「タニアはライバルではあるが、嫁仲間でもある。私が連れ戻そう」
みんな、参戦の意思を示して……
「ルリはどうしたい?」
あえて問いかけてみた。
「……行く」
短いけど。
しっかりと意思を示してくれた。
最近、こういう変化があって嬉しい。
「よし……じゃあ、みんなで竜族の里に行こう!」
「「「おーーーっ!!!」」」




