1142話 ◯◯からの手紙
「にゃーん……♪」
ソファーに横になるカナデ。
尻尾をふりふりと揺らしつつ本を読んでいた。
「「……」」
その隣で、ソラとルナが並んで座り、同じく本を読んでいる。
カナデが読んでいるのは料理の本。
とはいえ料理の知識を得たいわけじゃなくて、本に載っている魚料理を見るのが目的らしい。
ソラとルナが読んでいるのは小説だ。
やたら真剣な顔をして読んでいる。
なんの本なのか、この前聞いたことがあるんだけど……
『そ、そそそ、それは秘密です! とてもレインには言えません!』
『これは、乙女が読む乙女のための乙女本なのだ!』
……なんてことを言われた。
結局、どんな本なのだろう?
「うむ、なかなか筋がいいぞ」
「がんばるっす!」
「なにかありましたら、遠慮なくお尋ねくださいませ」
「うん」
エーデルワイスとライハとコハネは、ルリに料理を教えていた。
意外というか、エーデルワイスとライハは料理が得意で……
ルリに求められて、料理の先生となっていた。
キッチンを四人で使い、わいわいと楽しそうに料理をしている。
「やっぱり、こういう日が一番だな」
平和という言葉を表したかのような日々。
ずっとこんな日が続いてほしいのだけど……
そうもいかないから平和とも言うのかもしれない。
「ごめんくださーい」
「はい?」
来客があり、玄関へ移動した。
「お手紙ですー」
「どうも」
手紙の配達だった。
ポストに投函すればいいんだけど……あ、そうか。
ポストはこの前、ソラとルナの姉妹ケンカの際に壊れたんだっけ。
配達の人に改めてお礼を言った後、家の中に戻る。
「レイン、誰だったの?」
ひょこひょことカナデがやってきた。
「手紙だよ」
「へー、誰から?」
「えっと……あれ? ミルアさんから……?」
差出人の名前を見てみると、『ミルア』とあった。
ミルアって、あのミルアさんだよな……?
タニアの母親のミルアさんだよな……?
他にミルアという名前の人の知り合いなんていないから、そうだと思うのだけど……
ただ、ミルアさんから手紙をもらったことなんて一度もない。
予想外。
かつ初めてのことに戸惑ってしまう。
「ミルアさんから手紙なんて珍しいね」
「というか、初めてだよな?」
「うん。私が覚えている限り、手紙をもらったことはないよ。どんなことが書いてあるんだろう?」
「わからないけど……もしかして、タニアになにか……?」
タニアは今、里帰りをしている。
そこでなにかが起きて、その連絡を……?
いやいや。
悪いことを考えるのはよくない。
本当にそうなってしまいそうで怖い。
とはいえ、戸惑いは消せないわけで……
「とにかく、見てみるか」
「そうだね」
手紙を開いて、カナデが横から覗き込む。
「えっと……」
『拝啓 レインくんと愉快なお友達の皆さんへ』
「なんか私達の扱いが雑!?」
「ま、まあまあ」
苦笑しつつ、先を読む。
『レインくん達は元気かな?
私は元気だよ。毎日、タニアちゃんとラブラブな日々を送っているの。
最高だよね!
って、話が逸れちゃった。
この度……
なんと、めでたくタニアちゃんが結婚することになりましたー!
わー、ぱちぱちぱち!
つきましては、ぜひぜひレインくん達に式に参列してほしいな、って思います。
よかったら来てください。
いい返事を待っています。
ミルアより』
「「……」」
手紙を読み終えて。
しばし、俺とカナデは呆然として。
「「えええええぇーーーーー!?!?!?」」
とりあえず……
驚きの大声をあげてしまうのだった。




