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113話 最強の中の最強・1

 開始を宣言したというのに、スズさんは動こうとしない。

 無防備な体勢で、微笑みながら立っている。


 様子を見ているのだろうか?

 いや、それにしては構えすらしないのは不自然だ。

 ということは……


「うにゃー……これって」

「かかってきなさい、っていうことかしら?」


 カナデとタニアが、イラッとした顔になる。


 二人の予想通り、スズさんはその場から動こうとしない。

 隙だらけのところを見せて、ふぁ、とあくびすらしていた。


 ちらりとカナデとタニアを見て……

 ちょいちょいと手招き。

 いつでもいいですよ。

 かかってきなさい。

 と言わんばかりの態度だ。


「もう怒った! 手加減なしでいくからねっ」


 とことん下に見られてプライドが傷ついたらしく、カナデが怒った顔になる。


「うにゃ……にゃんっ!!!」


 地面を蹴り、ダッシュ。

 その姿は、視認できないほどに速い。

 どうやら、言葉通り、手加減なしで……最初から全力でぶつかることにしたみたいだ。


 まんまとスズさんの挑発に乗ってしまった形になるけれど……

 でも、最初から全開で行くというのは、正しい回答だろう。

 とんでもない能力を見せたスズさんが相手なのだ。

 出し惜しみをしていたら、あっという間にやられてしまうような気がした。


「お母さんだからって、遠慮しないんだからね!」

「ふふっ、どれくらい成長したか、しっかりと確認してあげますね」


 スズさんが余裕の笑みを浮かべながら言う。


「もーっ、バカにして! そのニコニコ顔、泣き顔に変えさせてやるんだからっ」


 親に対する言葉じゃないだろう、それは。

 そんなことを思うものの、今は勝負の最中なので、黙っておく。


 カナデが風のような速度でスズさんに迫り、ゴォッ! と拳を繰り出した。

 鉄の板さえ貫く強靭な一撃だ。

 いくらスズさんでも、真正面から受け止めるようなことは……


「はいはい、っと」


 真正面から受け止めた!?


 スズさんは、相変わらず笑みを浮かべたまま、カナデの拳を手の平で受け止めた。

 カナデが、実は手加減をしていた、などという事実はない。

 その証拠に、カナデの拳圧に押されるように、スズさんの体が後ろに押されていた。


 でも、それだけだ。

 ダメージを負った様子はないし、体勢すら崩していない。


「うーん……今のは、なかなか良い一撃ですね。カナデちゃんも、成長しているんですねえ……ただ、技術というものがまったくないのがダメダメですね。ただ殴りつけるだけじゃあ、大した威力は出ませんよ?」

「にゃ、にゃあ……!?」

「拳を入れる時は、こう、腰を使わないと!」

「ふにゃっ!?」


 スズさんが軽く体を捻り……

 拳を撃ち出した。


 カナデとは段違いの速度だ。

 かろうじて視認できたものの、次は見えないかもしれない。

 それくらいに速く……そして、重い。


 スズさんの拳がカナデにヒットして、小さな体が宙を舞う。

 竜巻に巻き込まれたかのように、カナデは遥か遠くに飛ばされて……

 地面に大きな穴を作り、ようやく止まった。


「……と、とんでもないわね」


 一連の流れを見ていたタニアが、顔をひきつらせた。

 魔族とも対等に戦ったはずのカナデが、まるで子供のようにあしらわれた。

 改めて、スズさんのとんでもない力を思い知る。


 スズさんはカナデを迎撃したものの、追い打ちはかけない。

 他のみんなに攻撃をしかけることもなく、挑戦者を待つチャンピオンのように、笑みを携えて立っていた。


 追撃はないと判断して、カナデのところへ。

 小さなクレーターの中で、くらくらと目を回しているカナデに手を差し伸べる。


「カナデ、大丈夫か?」

「う、うん……大丈夫、だよぉ……? ふにゃあ」

「いきなり一人で突撃しないように」

「うん、ごめんね……でも、ああしておいた方がいいと思ったんだ。お母さんが戦うところって、みんな、実際に見ていないし……少しでも活路を見出すことができれば、って思ったんだけど……うにゃあ、一瞬でやられちゃった。役に立てなかったね……」

「そんなことないさ。色々と掴むことはできた」

「そうなの?」

「カナデは、まだ動けるか?」

「うんっ、大丈夫!」

「よし、ならいくぞ!」


 カナデの手を引いて、立ち上がらせる。

 それから、みんなのところへ戻る。


「ちょっと大人げないが、数の暴力で押し切るぞ」

「にゃー……どうするの?」

「俺とカナデとタニアが前衛だ。とにかく、手数を出してスズさんに反撃に転じる間を与えないようにする」

「ええ、わかったわ」


 カナデとタニアが頷いた。


「で、ソラとルナは後衛だ。隙を見て、魔法を叩き込んでくれ」

「わかりました」

「了解なのだ! 痛い一撃をお見舞いしてやるぞっ」


 ソラとルナがやる気を見せるように拳を握る。


「ニーナとティナは、切り札だ。俺達がどうにかしてスズさんを拘束するから、その時に、ニーナの転移で近づいて、ティナは取り憑いてほしい」

「う……うん。がんばる、の……!」

「まかせておき!」


 切り札ということで緊張しているらしく、ニーナは少々、顔をこわばらせていた。

 対するティナは、度胸があるのか、笑みを浮かべていた。


 ちょっと不安は残るが……

 これ以上、細かい打ち合わせをしている時間はない。

 スズさんの気が変わり、攻撃に転じないとも限らないからな。


「いくぞっ!」


 おーっ! とみんなが元気よく応えた。


 カナデ、タニアと並んで疾走する。

 同時に、頭の中で魔法式を構築して、解き放つ。


「マルチ・ブースト!」


 自分を含み、能力を増加させた。

 体の隅々まで力が行き渡り、神経が研ぎ澄まされていくような感覚が広がる。


 カナデやタニアに比べると、俺は非力なのだけど……

 これなら、ある程度はついていくことができるはずだ!


「はぁっ!」


 まずは、俺が一撃を叩き込む。

 直前で横に回り込んで、すくい上げるような蹴撃。

 それに合わせるようにして、正面から、カナデとタニアが拳のラッシュを見舞う。


 前方と側面からの同時攻撃。

 これならば……!


「っと、これは……?」


 スズさんは、カナデとタニアのラッシュを両手で捌いて、俺の蹴撃を体を逸らすことで避けた。

 ただ、今まで浮かべていた笑みは消えていた。

 代わりに、小さな驚きの表情がある。


 おそらく、カナデの力が増幅されていることに気がついたのだろう。

 驚きと困惑……その二つが、スズさんの表情から読み取れる。


「このまま畳み掛けるぞ!」


 今がチャンスだ。

 俺とカナデとタニア、三方向から猛攻をしかける。


「あらっ、あらっ……これは、なかなか……」


 さすがのスズさんも、俺達三人を同時に相手にすることは難しいらしい。

 反撃に転じることができず、防戦一方になる。


 よし、良い感じだ。

 この流れを掴んで、離してはいけない。

 このまま押し切り……

 タイミングを見て、ナルカミのワイヤーで動きを封じる。

 もちろん、すぐに脱出されてしまうだろうが、一瞬でも動きを止められれば十分だ。

 ソラとルナに魔法を叩き込んでもらい……

 そのどさくさに紛れて、ニーナとティナに動いてもらう。


 そんな作戦を頭の中で組み立てていたのだけど……


「どういうことなんでしょうか? さきほどよりも、カナデちゃんが強くなっているような……?」

「自分の手の内を明かすようなことはしませんよ」

「それもそうですね。まあ、これくらいなら大して問題はないから、よしとしましょう」

「なんだって……?」


 スズさんの言葉の意味を、すぐに理解することになる。


 スズさんの拳が動いた……ように見えた。

 あまりに速いので、正確に視ることができない。


「にゃっ!?」

「きゃっ!?」


 気がついたら、カナデとタニアが投げ飛ばされていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今思えば、ホライズンの魔族の出来事はスズさん達が出てればもっと楽に解決出来たのではなかろうか・・?
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