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1124話 倒せないのなら◯◯してしまえばいい

「「……なるほど」」


 ややあって、ソラとルナはほぼ同時に、なにかを理解した様子で頷いた。


 フィアは怪訝そうに小首を傾げた。


「なに、その反応?」

「いえ、なんでもありませんよ」

「うむ、なんでもないのだ」

「……なんか、通じ合っている感じ、むかつくー」


 フィアはむっとした様子を見せつつも、無闇に攻撃を繰り返すのではなくて、ソラとルナの隙を探っていた。


 無敵の方はともかく、風を操る力は有限なのだろう。

 永遠に連射できるわけではない。

 ここぞというタイミングで攻撃を仕掛けるため、力を溜めているようだ。


「最初は、母さんはなんて無茶を言うのだろう、とちょっと恨みましたけど……」

「わかれば納得の話なのだ。うむ。これは、わりと簡単だな」

「だから、なんの話? わかるように説明して」

「おや? おやおやおや? 邪教徒の大神官さまとあろう方が、我らごときの話がわからぬと? なにを考えているか想像もできないと? これはこれは、素晴らしい大神官さまもいたものだなぁ」

「ルナ、いけませんよ。時に、事実は人を傷つけてしまいますからね」

「あー……もういいや。街と一緒に消えちゃえ」


 特大の煽りにフィアがキレた。


 極大の風。

 フィアを中心に業風が渦を巻いて、巨大な竜巻となる。


 全てを飲み込んで。

 全てを塵芥と化す。


 抗う方法はない。

 逃れる術もない。

 圧倒的な力の前に飲み込まれていくだけ。


 ……と、本人は思い込んでいる様子だった。


「ほいっ、マテリアルキャンセラーなのだ」

「なっ……!?」


 ルナがパチンと指を鳴らすと、途端に竜巻が消えた。

 最初からなにもなかったかのように霧散する。


 ソラとルナも遊んでいたわけではない。


 攻撃と防御を繰り返しつつ、フィアの力を分析した。

 戦術を解析した。


 結果……

 大したことないと判断。


 無敵と風を操る力は厄介ではあるものの、それ以上の脅威はない。

 風を操る力は魔力を介して行われているため、今、そうしたように外からの介入で消失させることが可能だ。


 本来ならば、そんなことはさせないように、ありとあらゆる手段で防御を構築しているのだけど……

 フィアは、まったくの無防備だった。

 自身の魔法式に防御をかけていない。


 自分の力に対する過剰な信頼と自信。

 誰もどうすることもできないという慢心。


 それと……


 さきほどから見ていれば、フィアは力を適当に使うだけ。

 子供がぽかぽかと両手を振り回しているようなもので、技術というものをまるで感じられない。


 フィアは、まともな戦闘経験がないのだろう。

 その圧倒的な力と無敵。

 今まで強敵と互角の戦いなんてことをしたことはない。

 故に、経験が圧倒的に足りていない。

 強い力を持つだけで、それを活かす技術がない。


 そんな相手、数々の修羅場を潜り抜けてきたソラとルナからしたら、楽勝だ。

 強い力を持っていたとしても、こうして対処方法がある。


 もしかしたら、相手を油断させるための演技という可能性もなくはないが……

 その時は、すごいじゃないか、と相手を素直に褒めよう。


「生意気……生意気生意気生意気! めっちゃ生意気なんだけど!」


 フィアは激怒しつつ、風を生み出そうとするが……


「させません」


 今度は、ソラの介入で風を打ち消されてしまう。


 調子に乗って力を披露しすぎた。

 慢心して防御をまったく考えていなかった。


 その結果がこれだ。


 フィアは表情を歪めて……

 しかし、余裕の笑みを戻す。


「ま、いいや。いざとなったら殴ればいいし、適当なところで切り上げてもいいからね。私の力を封じたとしても、私を倒すことはできない。うんうん。今回のことはいい経験になったよ。ちゃんと勉強して、次に活かすことにするね」

「いいえ、あなたに次はありません」

「ここで止めるのだ」

「あはは! それ、強がりってのはさすがにわかるよ? 風を操る力はともかく、無敵はどうにもならない。私が構築した魔法式じゃないからね。邪神の力を使ったものだから、いくら最強種でも、どれだけ魔法に長けていたとしても、そうそう簡単に介入することはできない。一ヶ月くらいずっと研究したら、まあ、話は別かもしれないけど、そんなことはさせるわけないし」

「うむ、そんなことはしないのだ」

「ソラ達がするのは……」


 ソラとルナは、威嚇するように背中の光の翼を広げてみせた。

 そして、魔力を集めていく。


 それを見て、フィアは怪訝そうに眉を潜めた。


「魔法? どんな魔法を使っても、私には……でも」


 あの二人がそんな無駄な真似をするだろうか?


 さすがにフィアも警戒するのだけど、しかし、もう遅い。

 なにもかも遅い。


 ソラとルナを相手にした時点で。

 いや。

 その前に、アルが出てきて。

 娘達に任せても問題ないと、そう判断された時点で、フィアは詰んでいた。


 なにしろ、アルは後退しているが、ただ退いたわけではない。

 戦闘には参加していないものの、フィアを逃さないための結界を展開していた。


 詰みだ。


 対して魔法に詳しくなく。

 戦術を持たず、経験も少ないフィアがアルの結界を突破することは叶わない。


 ソラとルナを倒せば、あるいは……

 しかし。

 それもまた夢物語だ。


 フィアが思うより遥かにソラとルナは強いのだから。


「さあ、これで終わりにしましょう」

「我らの力、とくと味わうがいい!」


 ソラとルナは同時に魔法を発動させた。


「「コキュートス・ペイン!!」」

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― 新着の感想 ―
二人の活躍が素直に嬉しい。
1.更新ありがとうございます。 「倒せないなら封印してしまえばいい」→これが、非暴力...!非暴力は全てを解決する...!ですね、わかります。 ギリギリで勝利したとはいえ、ソラとルナが覚醒を持っている…
フィアが適当に力を使うだけだったからこそ良かったけど これでもしフィアが自分の攻撃魔法にマテリアルキャンセラーに対するプロテクト(防御)を施していたらかなりヤバかったのは間違いないでしょうね。だけど、…
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