表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1116/1152

1111話 出迎えは丁重に

「……ダメじゃな。所詮、履いて捨てるほどの雑魚ばかり。敵のオーラに圧倒されて、まともに動けないでおる」


 バストール。


 崖を切り抜いて作られた神殿の中。

 初老の男が、ため息と共にそう言った。


 ジ・ゼセル教大神官。

 序列八位。

 ジーベン。


 侵入者を察知して、村の様子を魔法で探っていたのだけど……

 見えてきたのは、なにもできず、なにもさせられず、撤退させられる情けない村人の姿だけ。


 弾除けにもならないし、時間稼ぎにもならない。

 酷い結果にため息しか出てこなかった。


「だから言っただろう? レインを相手に、いくら雑魚をぶつけても仕方ない。やるなら、僕達でないとね」


 同席するゼクスが、なぜか誇らしげに言う。


 レインとは敵対関係にあるが……

 しかし、彼は、大神官でありながらレインに親しみを抱いている。


 なぜなら、レインは強者だから。


 自身も強者という誇りを持つゼクス。

 故に、同じ強者には敬意を払い、時に尊敬する。


 力こそが全て。

 そんな言葉を信じて……

 そして、実感した生を過ごしてきたからこそ、ゼクスは、レインに対して深い敬意を払い。

 また、勝手にではあるが、友情のようなものを抱いていた。


「お主は、また悠長な……バストールを潰されるわけにはいかないのだぞ? ここを作り上げるのに、どれだけの時間をかけたことか……それに、儀式は目前。今更、場所を変えることもできん」

「だねえ」

「もう少し危機感というものを持て」

「持っているさ、十分に」


 「だからこそ」と間を挟んで、さらに続ける。


「とても楽しみにしているんだよ」


 ゼクスが笑う。


 子供のように無邪気な笑みだ。

 ただ、子供特有の残酷さも過分に含まれていた。


「ちょうどいいから、僕が行こうか。レインと色々な話をしたいと思っていたし、このまま戦い、拳で語るという古臭い方法も、たまには悪くない」

「……勝てるのか?」

「もちろんさ……と、言いたいところだけど。どうだろうね? 僕らには加護があるけれど、それでも、厳しい相手かな? レインもそうだけど……他にも、勇者と魔王がいるからね。ははっ、勇者と魔王がコンビを組んでいるとか、反則すぎるだろう?」

「……」

「なに、心配はいらないさ。最低限、時間くらいは稼ぐ。その間に、ジーベンは儀式を進めてくれればいい。それで、最終的には僕らの勝ちだ。えっと、なんて言うんだっけ? ……試合には負けたけど勝負には勝った、かな? まあ、そんな感じに持っていけるはずさ」

「だといいのだがな……」

「心配性だね。もっと気楽に、人生を楽しく考えた方がいいんじゃないかな?」

「お前ほど楽に考えていたら、すぐに破滅だ」


 ゼクスは苦笑しつつ、ジーベンと別れた。


 神殿の廊下を、コツコツと足音を立てて、ゆっくりと歩いていく。


「なかなかいい状況だ」


 追いつめられている側だというのに、ゼクスは笑みを携えていた。


 邪神復活のため、入念な計画を立てて。

 長年にかけて活動をして。

 完璧と思えるような行動をした。


 しかし、拠点がバレて。

 勇者と魔王と。

 そして、絆の英雄が乗り込んできた。


 最大のピンチと言ってもいいかもしれない。


 ただ、ゼクスは笑っていた。

 楽しそうに笑っていた。


「いいね、いいね。実に素晴らしい展開だよ。やっぱり、人生はこうでなくちゃ。刺激に満ち溢れたものでないと、飽きてしまうからね」


 計画が瓦解するかもしれない。

 悲願を果たすことができないかもしれない。

 使命が潰えてしまうかもしれない。


 だから、なに?


 そんなことよりも、楽しくハッピーに生きていたい。

 やりたいことをやるのが一番。

 使命などは二の次、三の次だ。


「さあ、レイン……僕を楽しませてくれよ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://book1.adouzi.eu.org/n8290ko/
― 新着の感想 ―
1.更新ありがとうございます。 ジーベンの序列と、ゼクスがレインに対して好意的な態度をとっていたのは「本物の猛者に対しては、ちゃんと敬意を払う」という性格であることも判明しました。 勇者と魔王が共闘す…
ふふふ……不意打ちを仕掛けて拘束してソラの料理を食わせt(イクシオンブラスト><
ジーベンは序列8位だったんですね。 今のところ1位~8位(まだそれ以上もいる可能性も?)大神官が8人いることが確認されましたが、気になるのは、この回に出てきた大神官はゼクスとジーベンの二人だけでしたが…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ