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1104話 生きながら死んでいる村

「……」


 村人らしき人がいた。

 なんてことのない普通の格好で、少し離れたところに立ち、じっとこちらを見つめている。


 ただ、その顔に生気がない。

 青白く。

 無表情で。

 人が人であるための『意思』というものを感じられない。


 ゾンビに似ているが……

 ただ、魔物の気配ではない。

 確かな人間だ。


「おっ……おおおおぉ……!!!」


 突然、村人が獣のように吠えた。

 村全体に響き渡る。


「村ノ、敵……!」

「なっ……おい、待て!? 俺達は……」


 村人は、いきなり襲いかかってきた。


 武器もなにも持っていない。

 それでも、異様な速度で駆けてきて、素手で殴りかかってくる。


 たぶん、相手は邪教徒だ。

 だとしたら、遠慮はいらないのだけど……

 確信があるわけではないので、今はまだ、手荒な真似はしたくない。


 ひとまず、村人の攻撃を捌いて……


「ぐっ……!?」


 拳を受け止めて。

 しかし、思っていた以上に重い攻撃に、ついついうめき声をこぼしてしまう。


 なんだ、この力は?

 ベテランの冒険者のような……いや。


 それ以上の力……

 まるで熊と対峙しているかのような腕力だ。


 この村人は、いったい……!?


「アニキ!?」

「大丈夫……だ!」


 相手の力を真正面から受け止めるのではなくて、横に受け流す。

 そうして村人の体勢が崩れたところで、足を払い……

 軽く宙に浮いたところで、打撃を叩き込み、地に沈めた。


「ふぅ」


 野生の動物のような力を持つが、しかし、技術はない。


 驚いて、最初は不覚をとったものの……

 そういうもの、と知れば、対処はわりと簡単だ。


「ひとまず、この村人から話を……」

「主さま、まだです!」

「なっ……!?」


 倒れた村人はうめき声をあげつつ、ガタガタとおかしな動きをして、起き上がろうとする。


 嘘だろ……?

 脳震盪を起こすように叩きつけたから、しばらくは起き上がれないはずなのに。


「ゾンビ……? いや、そんな感じは……」

「レインくん!」


 焦りを含んだシフォンの声。

 周囲を見ると、さきほどの叫びに反応して無数の村人達が姿を見せていた。


 鍬や鉈などを手に持っている。

 いずれも虚ろな表情で、カチカチと歯を鳴らしていた。


 明らかに普通じゃない。

 そんな村人達を見て、ミルフィーユは、珍しく不快そうな顔になる。


「おそらく、薬の影響ですね」

「薬って……麻薬の?」

「散布されているように、この村は、たぶん、ありとあらゆる方法で村人達を薬漬けにしているのかと。それで……」

「こんな状態に……?」


 思考能力を奪い、身体感覚を麻痺させて……


「こんなことを……!」


 拳を強く握る。

 とても許せることじゃない。


「主さま……」

「……一度、退こう」

「よろしいのですか?」

「ああ。今は、それが一番だろう」


 村人達が邪教に染まっていたとしても。

 こんな状態の村人達と戦うつもりにはなれない。


 それと、騒動が周囲に伝わってしまったみたいだ。

 このままだと、村全体を相手にしないといけない。

 さすがにそれは大変なので、ここは撤退がベストだ。


「私もそれがいいと思うよ」

「よし、撤退だ」


 シフォンの同意を得られたところで、俺達は、一度村から離れた。

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◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://book1.adouzi.eu.org/n8290ko/
― 新着の感想 ―
1.更新ありがとうございます。  バイオハザード状態である上に、南大陸にも人が住んでいた痕跡がある事が確認できました。  薬物でゾンビになっているのを見て、アメリカで流行っている違法ドラックのフラッカ…
バイオハザードやんwww コハネからアサルトライフルやロケットランチャーなど武装しよう(笑)
思考能力を奪い、身体感覚を麻痺させて…… なるほど、ここで”ソラの料理みたい”だと言うんだな! レ「言わないから( ゜Д゜)!!!?」 コハネ・エーデルワイス・カナデ達 「「いや、ソラの料理の場…
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