1098話 目的は近く、しかし遠く
その後、ステラに話をして。
シフォンを探して合流して。
ラウル・ラズナから新しく得た情報を共有して、バストールという村についての資料を探すことにした。
ステラは騎士団の資料室にこもり。
シフォンは、冒険者ギルドの資料室を探す。
俺とコハネは、一度、コハネが使っていた管理室に転移して……
そこで、徹底的にバストールについての情報を集めた。
――――――――――
……三時間後。
一通りの情報収集が終わり、騎士団の会議室に集まる。
俺とコハネ。
シフォンとステラ……この四人だ。
本当はカナデ達も一緒してほしいが、やはり、ルリのことが気になるため、引き続き一緒にいてもらっている。
「バストールいう村についてだが、いくらかの資料を見つけることができた」
最初に口を開いたのは、ステラだ。
資料を書き写す時間はなかったため、テーブルの中央にいくつかの書物を広げる。
「今から50年ほど前に、南大陸に作られた村だな。山間部に作られていて、鉱石を採取する鉱夫達の村らしい」
「私がギルドで得た情報も似たようなものかな? 一応、村の場所の詳細な地図があったよ」
シフォンが地図を広げた。
それを見たコハネが、うん、という感じで頷く。
「とても正確な地図ですね。わたくし達が得た情報と、ほぼほぼ相違ありません」
「さらに付け足すと、記録では、数年前に廃村になっているらしい」
これは、コハネの拠点で得た情報だ。
バストールは、鉱夫のために作られた村。
しかし、年々、鉱石の採掘量が減り……
詳細な年月は不明だが、数年前に、鉱石の採掘が終了。
村も役目を終えて、廃村になったのだとか。
「なるほど……そのような廃村なら、おかしなものが住み着いていたとしてもおかしくはないな。我ら騎士団の目も届かないだろう」
「鉱山もセットなら、拠点として活用しやすいと思うけど……レイン君は、ここの村、どれだけ怪しいと思う?」
それはつまり、ラウル・ラズナの言葉をどれだけ信じられるか、ということ。
少し考えてから、口を開く。
「十中八九、ここで間違いないと思う」
「大きく出たね」
「それくらい、今の彼は信じることができたかな」
前に顔を合わせた時は、掴みどころのない不気味で、うさんくさい人物だった。
でも今は、年相応の老人で、穏やかな人に見えた。
元大神官ではあるが、邪教徒と袂を分かったのは本当なのだろう。
俺達に情報を提供してくれるのは、善意によるものだろう。
そう信じたい。
もちろん、騙されている可能性もあるのだけど……
その時は、また調べ直せばいい。
やり直せないことなんてない。
「とはいえ、残り一割で騙されている可能性もあるから、いきなり大部隊を派遣する、っていうのはやめておいた方がいいな」
「うん、レイン君に同意。まずは、少数精鋭でバストールを調べて……確信が得られたら応援を呼ぶ、っていう感じでいいんじゃないかな?」
「ああ、異論はない」
「……主さまの場合は、調査だけで終わらずに、そのまま邪教徒を壊滅させてしまいそうですが」
「「……っ……」」
ぼそりと言うコハネに、シフォンとステラの肩が震えた。
妙なツボに入ったらしく、くくく、と小さく笑っている。
俺はいったい、どういう目で見られているのだろう……?
災害か?
それとも怪獣か?
「ただ、援軍をのんびり待っていられないと思うから、結局、突入部隊が敵の中枢を叩くことになるんじゃないかな?」
「そうだな。援軍は、残りの一般……言葉がおかしい気もするが、一般の邪教徒達を叩くことになるだろう。連中の数は多いはずだから、突入部隊が全てを相手にすることは難しい」
「そうなると、突入部隊はやっぱり……」
みんなで話し合いを重ねて、策と戦術を組み立てていく。
完璧にハマることはないだろう。
得体の知れない場所だから、予想外のトラブルも起きるはず。
それでも、できる限りの状況に対処できるように、しっかりと話し合いを重ねた。
◇ お知らせ ◇
新作はじめました!『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』
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