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追放されし『異端者』、レオンの異世界革命奇譚  作者: 露月ノボル
【第二章】私の、悪夢
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第50話 居もしない神の謝罪

  コンコンコン。ノックの音がする。フェブリカ先生か、それとも…。


「ご、ごめんなさい、来たのは、私…」


  急速に身体中にアドレナリンが溢れ巡り出す。私は何とかアドレナリンを抑えたいが、もう怒鳴るのをやめたいが、それが敵わない。そして私はもう何度繰り返したか分からない事を何度も叫ぶ。


「なにしにきたの!!!この詐欺師、嘘つき、『自称・神』とペテン師のくせに!!貴女の顔なんか見たくない!!!」


 「ソイツ」は涙目を伏せて「ごめんなさい」「ごめんなさい」と呟きながら、木でできたトレーを私の近くのサイドチェストへ置く。シチューとパン。


「それが罪悪感での『お恵み』!?笑わせないで、人の命は、パパと、ママと、みんなのいのちはそんなに軽くない!!!」


 私はやめろ!と心の中で叫び声をあげながら、多分すごい形相でトレーごと料理を「リィズ」に私は投げ返す。当たって服シチューがこぼれ汚れさせてしまった。いや、汚してやっただけで、こんなのなんにもない!「ソイツ」は下を向きながら声を出した。


「ごめんなさい…ごめんなさい…で、でも…貴女、もう7日も何も、食べてないの、よ…?このままじゃ、身体を崩すわ…」と言いかけ、私はやめろ、リィズは悪くないと思っても、叫ぶのが止まらなかった。


「誰が貴女なんかにそんな心配をしろといったのよ!!!私の事などもういい、私なんて、私なんか、もうどうなってもいい。貴女はもう、あの神なんて自称してる貴女の巣穴へ帰られるのでしょう?!ならとっとと巣穴に帰って二度と顔を見せないで!!!」


 そう立ち上がって身体は叫び怒鳴った。リィズはすごく悲しそうな顔をして、「ごめんなさい…本当にごめんなさい…また、来るわ…?」とそそくさと部屋を出ていってしまった…。


 あんなにすごく悲しそうなリィズの表情を、私は初めて見た……って、「すごく悲しそうな」?!あんなものに感情などない!ただのペテン師、ちょっと力を持っただけで神だと主張する、勘違い野郎の奇術師!!!


 違う。父と母の事を考えると、とても悲しい…つらい…。でもこれは、違う!これは間違ってる!って、何が間違っているっていうの!?


 コンコンコン。またか。そう思い、にらみつけて怒鳴ってやろうとすると、入ってきたのはフェブリカ先生だった。


「やぁ……レニーナ、ちゃん。調子の方は……って、また、リィズ君が運んだ食事をひっくり返したようだね…。レニーナちゃん、少しは食べないと持たないよ?」


 と弱弱しい笑顔を優しく向けて言ってくれる。


「……『アイツ』は、先生には関係のない存在でしょう?」


「いや、しかし…リィズ君は、ずっと君のことを想ってくれてるみたいだよ?ちゃんと話をしてみて…」


  と言うフェブリカ先生に対して私は先生の言葉の途中なのに私は怒鳴った。


「『アイツ』の話は止めましょう!!あんな存在、どこが女神なの!?みんなを見殺しにしたくせに!!!」


 そう、私が5分くらいまくし立てただろうか、急にものすごく咳き込む。咳き込むべきだ。やめねば。何を止めるの!?咳が止まり、再び10分くらい罵倒しまくると、エネルギーが切れたようにベッドに横になった。フェブリカ先生はさらに優し気に語った。


「リィズ君の……話、聴いているんだよね…?どんなことを言っていたんだい……?」


 私はまた怒鳴りまくし立てたかったが、確かに栄養が足りていないせいか、力が入らず、顔を無理矢理枕に押しつけて押し殺しながら、言った。


「あのペテン内容ですか、『あの区域だけあの時間、あらゆる力が使えなかった』『天界への通信が妨害されていた』、お笑いですよね。ようは、私の責任じゃない、私達の責任じゃない、と言いたいだけで。それに、それに…もしも、もし仮に、本当にそれが本当だったとしたら……母は、治癒術師の母は、何の意味もなく死んだことになっちゃう……!」


 そう。「アイツ」が「アイツ」の取り巻きの無能たち12人に調査させた結果、『あの時間あの区域だけ、神の力を始めあらゆる力が使えない状態だった。それは通信を念じて送るのも含む』だった。お笑いにもほどがある。そんな馬鹿な、母は治癒術師として立派に戦った!


 それに…………もしも仮に、もしも万が一、本当にそれが正しかったなら…「神を自称するものども」よりも強力な上回る力を持つ存在がいる、ということで、アイツらの存在は「神」じゃないって事になる。どちらに転んでもとんだお笑いじゃない…!。


 違う、違う、そうじゃない、母の事を、想うならこんなことを思うべきじゃない、他にすべきことが、って、あああああうるさい!!!


「…さっき、被災地に向かった調査隊が戻ってきたよ…」


 とフェブリカ先生は気まずそうに話題を変えて言い、私は思わず立ち上がってフェブリカ先生に詰め寄った。


「生存者は…!?」


  フェブリカ先生は首をふるふるとゆっくり横に振った。それを見て、私は完全に脱力してしまった。


「………こんな…父もいない、母もいない、神なんてものもいやしない!!こんな世界に生きてる理由、ない………」


 自然に言葉として零してしまったが、ぱし、と音がし頬が熱い。平手打ちをされたのだと気付くまで時間がかかった。


「君は頭は確かに良いさ、それは認める。ただ…ただね?僕は密かに君は子供らしくない、とは思ってた。しかし今、君はまさに子供だよ。お子ちゃまだ。父も母もいない、確かにロイさんとシェラさんは立派に戦った」


「だが、それで護ったのは他でもない君の事だよ?その護ったはずの命である君が、そんな事をいうなんて、ロイさんとシェラさんがどう思うのか、考えた事があるのか!!!!!」


  …………今まで、フェブリカ先生は、穏やかで弱弱しく優しい先生だと思っていたが、本気で怒るという事は、こういう事なのか、と。そして本気で怒っているという事だ、と。父と母が私の命を護ってくれたのに、私は…部屋でただ、泣き叫び当たり散らし、癇癪を起しているだけ。その上、死を望むような事まで言ってしまった、父と母が護ってくれた命なのに。


  私はあまりに愚かな事を考えていたと、気が付くとしゃくりあげながら、ぐすぐすと泣き出していて、大きな声で泣いてしまった。


「ぐすっ、ぐすっ、ひっく、うわわぁぁぁぁぁぁあああん!!!!」


  …………どれくらい泣いていただろうか。泣いていた私を気が付いたらフェブリカ先生は、いいこいいこしてくれてた。それを感じて、フェブリカ先生に抱き付き、また大きな声で泣いてしまった。


「ロイさんとシェラさんが救ってくれた命なんだ。君が居なくなったら、君が不幸だと思い続けるなら、ロイさんとシェラさんは決して喜んではくれない。分かったね?」


 私はぐずっと泣きながらも、「……はい……はい…!」と何とか答えた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 神々の力すら阻害する何か。 この世界の根幹に関わる存在の意図が、介在していそうです。 神の存在を素朴に受け入れ始めていたレニーナも、梯子を外された想いでしょう。 ここからすべての神すら打…
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