3 トイレの前で、くにゃん
前回も書いたが、おっさんの脳みそにはぶっとい動脈がない。地図でいえば、国道と高速道路が全部封鎖!路地だけで移動する企画番組みたいな脳である。しかし、おっさんはそんなこと知るよしもなく、働いていた……。
◇
2018年の春の終わり。そろそろ夏になる頃。
まずはその頃の話から書こう……と思ったんだけど、なんかヤバいこと書きそうだから、この話だけ、フィクションです!ということにしておこう。リアルの関係者などいなかった!んじゃ、そういうことで|ω・)
おっさんの身体はヤバかった。過労&ストレスはこの1年以上、ずっとマックスでメーター振り切れ。
最大の要因は、職場の人間関係。ただでさえ荒れて厳しい学校の激務に加え、大変な問題職員が職場を荒らしまくっていた。てめーよくもこのくそきちが……(2000字削除)。心身を病んで職場を去る人が続出して、その分のフォローが周囲に降りかかっていた。
「次倒れるとしたら、瀬川先生か○○先生ですよ。本当に無理しないで」……何度も周りから言われた。ついに二択か!大詰めである。
軽度のうつ症に入りかけている自覚があったし、忙しすぎて記憶がオーバーフロー。出たばかりの会議や、やったばかりの授業が思い出せない日もあって、うすら寒くなった。
数日に一回、右足が麻痺するようになった。あれ?と違和感を感じると、右足から感覚が消えて動かせなくなる。立ってもいられない。数分待つと治る。
あとでお医者さんから聞いたのだが、こういうのを「一過性の虚血発作」というそうだ。なんらかのきっかけ……すみっこの血管に微細なゴミが詰まったり、血行が悪くなると、その脳がコントロールしている機能が麻痺する。ほんの短時間で血行は回復し、後遺症もないから一過性……詰まりが大きかったり、血行悪化が深刻だと自然に解消しなくなり、脳細胞が死んで大ダメージを受ける。これを脳梗塞という。
職場でもなってしまい、チャイム鳴ってるのに、すとん、と椅子に座って動かなくなっているおっさん……今思うと、もういろいろアカンかった(・ω・)
昔腰を痛めたとき、足にしびれが出たので今回も「腰、相当悪いのかなぁ」と思っていた。というより、思おうとしていた。
足の症状が出て一ヶ月、自宅のトイレで立とうとした瞬間、ついに右手右足に酷い麻痺がきた。全く力が入らず、立とうとし……たけど、くにゃん、とそのまま崩れ落ちた。トイレ前で、パンツをどうあげるかが、おっさん当面の課題……。
「やっべぇなんだこれ」口を動かして、発声できることを確認。人間、本当にヤバいと冷静になる。左手で服を直したが、スマホは居間。5分ほど動けずへたりこんだまま、頭の中の医学知識で考える。
「……これ、どう考えても左脳だよな……まじか、まじかぁ……」
はっきり脳疾患と自覚してからは、ひたすら怖かった。運動機能は10分ほどで回復したが、救急で病院を受診した。深夜だったが、MRIやらなにやらの機械をその場で動かしてくれて、ものものしい検査が続く。
看護師さん「今、専門の先生こちらに向かってますので」
ふぁ?
今午前2時40分なんだけど……明日の朝じゃなくて?
「いえ、ちょっと、画像が……直接見ると先生おっしゃってまして……」看護師さんの歯切れが悪い。どきどきしてくる。いい話なら、深夜3時にお医者様は出勤してこないだろw
お医者さん、本当にやってきた。仕事デキルマンオーラをまとったアラフォーのイケメン。ほどよくヤサグレた雰囲気。後で聞いたら、めちゃ腕のいい外科の先生らしかった。
検査で撮った画像を画面に映しながら、先生がずばりと言った。
「典型的な、もやもや病です……すぐ手術したほうがいい」
<つづく>




