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新章 第十三話 聖女の旅はこれからが本番!


 恐ろしく強い剣士と盾使いの二人。魔法の銃で味方のフォローをしながら、鎧兜をものともせずに殴りつける拳闘士。そして鬼気迫る表情で大きなハンマーを振り回す聖女。


 優位を保っていた敵兵の余裕ある表情が、怯えの表情へと変わる。たった七名に全滅の可能性を感じた指揮官は、町の中の保留戦力を投じる。異界の強者の混じる部隊の投入に、咲夜も両親を召喚で呼んで対抗した。


「ねぇ、あれってモブ男たちじゃない?」


 敵部隊の中に、争う部隊がいる事に咲夜が気づいた。増援の後ろにいたのはジャル男とビル男の二人と、級友たちだ。


 思わぬ救援で、私たちの攻勢が強まる。挟撃の形になったのもあり、敵部隊は潰走した。


「みんな無事だったんだ。良かった」


 召喚魔法により、疲れた顔の咲夜が笑顔を浮かべた。助けるために探しに行く手間は省けて良かったよ。


 敵兵が去り、閑散とした街中に入ると級友達がヘタリ込んでいた。怪我をしているものが何人かいたので私は全体回復を行う。


「うぉっ、すげー身体の傷が治ったぁ」

「聖奈が聖女になったって本当なんだ」

「咲夜達何かエロ格好良くない?」


 なんかうっさい。級友達の大半が教会の神官服のような格好に、剣道の胸当てのようなものをつけていた。地味だし、なんか野暮ったい。冒険者の装備や兵士の装備なんて地味なものだから仕方ないか。


 頭はおかしいようで、意外と錬生術師(カルミア)はセンスが良いのかもしれない。


「ジャル男、ビル男、何があったのか話しなさい」


 みんなを率いていたモブ男二人に、七菜子が委員長らしく説明させる。金髪碧眼で強くなって格好良くなっても、長年の習性からビクつく。


「兵士に襲われそうになって咲夜が助けてくれた後、教会派の偉い人に連れてかれたんだよ」


「あぁ、俺達を呼んだ国の奴らよりマシなだけで、良い奴らではなかったんだよな」


「──喜べ! お前たちは邪神様に選ばれたのだ! ⋯⋯なんて叫んで喜んでたっけ」


「目がヤバかったよな。お前達は偉大なる神アイナト様に捧げられるのだぁってさ」


 級友達は国を乗っ取りにかかるテンプルク神官派、いわゆる教会派の一団に身柄を預けられたようだ。保護ではなく、いずれ邪神復活の贄にするために。


 贄として身を清め体力と魔力を保つために、待遇は悪くなかった様子だ。しかし、いずれ始末されると分かっていたので気が気でなく、監視が厳しかったらしい。


「────侍娘がやって来て助けられたんだ」


 違う世界、違う時代から召喚される事もあるそうだ。みんなを助けてくれた侍娘は、私たちの知る過去の武人だった。


「教会を守護する異界の勇者パーティっていうのが、まったく歯が立たない強さだったよ」


「容姿はガキンチョ(ロリっ娘)なのに、めっちゃ強かったよ」


「あの戦国娘、格闘能力は咲夜より上だよ」


 モブ男達以外にも、興奮している級友達が男女共にいた。七菜子に急に馴れ馴れしくなった娘もいるので、行動には注意しないといけないと思った。


「救出の経緯はあとで詳しく聞くとして、回復したのなら歩けるよね」


 咲夜が皆の様子を見て、立たせた。救出出来たのならさっさと帰る。敵地でグズグズしていると、オトーノス王政派とテンプルク神官派の争いに巻き込まれてしまうだろう。少なくとも今は神官服のせいで、教会関係者に見られてもおかしくなかった。


「待ちなよ」


 スーリヤが咲夜を止めた。クイッと示した指先は、転がっている異界の強者達を指していた。


「洗浄してあげるから、兵士の分も回収するよ」


 いまよりマシな装備を集めておけということだ。


「時間がないのに」


「王宮へ乗り込まずに済んだんだ。何よりあんな服を着たまま歩かせられないだろう」


 無駄に嵩張って重いのに、防御力は大した事はなさそうな神官服は着替えさせた。街の人間はいないし、着替えでいちいち騒ぐやつは咲夜が魔法の銃で黙らせていた。


 戦闘力があり、装備のサイズが合うものから着替えを促す。兵士の衣服が合わない女子達には、簡易の猫人族の服を着させた。


「護送用の馬車が三台無事なのあるから、交代で休みながら隣国ハザディノスへ行くよ」


 街中を探せば、まだ残されている馬車はありそうだったけれどオトーノス軍を装うのなら、半数以上は外に出て行軍する姿を見せたかった。威圧行軍のおかげでオトーノスを抜けて、ハザディノスへ入ってもトラブルに巻き込まれずに済む。


 級友達を連れてロムゥリまで戻る。魔物から色々得た素材をカルミアに引き渡し、級友達を送り返すためだ。レーナが大規模転移陣を働かせて、騒ぐ級友達を私たちのいた元の世界へと帰してくれた。


「あの格好のままだと胡散臭い宗教のせいになりそうだね」


「こっちでもそうだったから間違いじゃないよ」


 級友達はこちらでの記憶を忘却される。同じ時間軸の世界に戻すので、私たちの事は心配ないそうだ。魔法‥‥何でもありなようだけど、そんな魔力や魔法の技を扱いきれるのは彼女だから。でもこれで級友を無事に帰せて、私と咲夜はホッとしあった。


「それで、なんでジャル男とビル男は残っているわけ」


 七菜子が転移の輪から外れて居残る二人に荒く声をかけた。


「も、戻ったってモテないんだよ」

「こっちなら肩書きあるじゃん」


 二人の残る理由は、超くだらない理由だった。レーナがニコニコ近づいて来て二人の肩に手を置く。


「咲夜達と一緒にダンジョンに行きたいわよね?」


 魔力なのか、笑顔に圧がかかる。モブ達が固まりながら、何故か自由な首をコクコクと頷かせた。


目玉の小人おっさん(バロール・キッド)と新たに三人加えて『黒魔の瞳』の完全攻略に挑むわけね」


 カルミアが私や七菜子と同じくらいの子供を連れてやって来た。『黒魔の瞳』は咲夜のお父さんが挑んだダンジョン。レーナも攻略したけれど、鍵となる瞳がないため、真の攻略に至っていないと最近わかったそうだ。


「約束通り、あなた達に攻略に向かってもらうわ。聖奈、ダンジョンの先の世界では、あなたの力が必要になるから死なないようにね」


 級友達が無事なら、私たちにも異存はなかった。私たちは異世界にやって来て、ようやく冒険らしい冒険に出ることが出来そうだ。




 

 お読みいただきありがとうございました。


 サブタイトル入れるの忘れてました。

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