見た目よりも良いところ
「帰ってきたぞ!」
「よっ! おけーり!」
「おけーりー!」
「りー!」
ジケたちは長旅を終えて家に帰ってきた。
家にいたピコとタミとケリが出迎えてくれる。
すっかり三人一組になっているような気がするけれど、楽しそうなのでいいだろう。
ピコの尻尾が激しく揺られているけれども、なんとなく同じものがタミとケリにも見えるよう。
「きゃー!」
「ジケ兄ー!」
「ピコちゃんもー!」
「……何やってんだか」
ピコとタミとケリが手を広げて走ってくるので、三人まとめて抱きしめる。
エニは呆れてるけど、たまにはこんな交流もいいだろう。
ジケも嬉しいし、三人も嬉しそうである。
「あっ! 何してんの!」
「おかえりのぎゅー!」
「ずるいぞ!」
「ちょ! 流石に四人は多いって!」
そこにミュコがやってきた。
ピコたち三人とわちゃつくジケを見て、ミュコもジケに飛びつく。
「……楽しそうねぇ」
その様子をエニは冷たい目で見ている。
自分も帰ってきたわけであって、おかえりと飛びつくわけにもいかない。
ちょっとだけ。
ほんのちょっとだけ羨ましいとか思ったり。
「エニちゃんもおかえりー!」
「かえってきてうれしいよー!」
「ピコちゃんもとりゃー!」
「何拗ねてんの!」
「うわっ!?」
エニが不満を抱いている。
それをジケは察知した。
だからみんなにこっそりエニにもおかえりのぎゅーをするように話した。
もちろんエニに対しても、おかえりはしてくれる。
四人まとめて飛び込んできたのでエニはムギュッと押しつぶされてしまう。
「お、重い!」
「重たくない!」
「軽いよ!」
「乙女に失礼!」
「四人もいたら重いわ!」
みんなで揉みくちゃになりながら、自然と笑いが起こる。
エニの機嫌もすっかり治った。
チラリと窓の外を見るとユディットがエルオアたちにここらの説明をしている。
立派な馬車を持ち、道中お金に困ることもなかったのに、いざ着いてみると貧民街のボロ屋にいるものだからエルオアたちも驚いていた。
ユディットはなんと説明したのだろうか、とジケは思う。
見た目ボロいけど良いところだよとでも言ったのか。
確かに見た目はボロいけど、ちょいちょい修理しているしパロモリ液なんかも塗ってある。
中に入ってみると案外快適だったりする。
見た目のボロささえ気にしなきゃ平民街の家々よりも住み良いだろう。
「まあ……大丈夫か」
エルオアは王女やお姫様といった立場だ。
中身快適でもボロボロの家で大丈夫かなと思ったが、ここに来る前に住んでいた小屋のことを思い出す。
あまり広いとは言えない小さな小屋に四人で住んでいた。
それを考えれば、見た目がボロいぐらいなんともないはずだ。
エルオアたちのことはユディットに任せる。
ここにいる限り特に困ることも少ないだろうとジケは思う。
「タミ、ケリ」
「なぁーに?」
「なんでも言って!」
「晩御飯、ちょっと盛大に作ろうか」
新しい仲間が増えた。
珍しく柔らかい表情のユディットのためにも盛大に歓迎してやってもいいだろう。
「はーい!」
「腕によりをかける!」
「ピコちゃんもお腹を空かして待っている!」
「私も手伝おうか?」
「いや……エニちゃんはお買い物とかしようか?」
それぞれがやる気を出す。
エニが手を出すと危険なので、料理はどうにかやめていただく。
「ひゃっ!?」
「ん?」
エルオアの小さな悲鳴が聞こえた。
なんだと見てみると、新しい女性に対してお嬢さんとパムパムがご挨拶していて、エルオアはそれに驚いていた。
翼を広げて良い顔をするパムパム。
その素敵なポージングのせいでエルオアがユディットに抱きつくような形になっている。
「なんか良い顔して去っていくけど……もしかしてわざと?」
やり遂げたみたいな顔をしてパムパムは自分の家に戻っていく。
仮に意図してやったのだとしたらとんでもないニワトリである。
「みんなの方は受け入れ体制万全だな」
ジケ周りも結構人が増えたりする。
だからだろうか、多少人が増えたところでみんな素直に歓迎してくれる。
「よし、食材の買い出しにでも行こうか」
エルオアにいい印象を与えといて悪いことなどない。
ジケたちはみんなでお買い物に向かったのだった。




