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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第二十章

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丸く収めるには2


「…………」


 ジケは目を閉じて考える。

 いっても自分だって軍師なんかではないという思いもあるのだけど、そんな考えは押しやってどうすべきかを考える。


 家督まで譲って、他国の地で人知れず散っていく覚悟を決めた男たちの扱いはなかなか困る。

 そもそも無事な姿で家に帰れない。


 エルオアも連れず、ジケたちが倒した王様側の人もなく帰れば襲撃者たちに未来はない。


「……これはチャンスじゃないですか?」


「何?」


 全員がジケのことを見る。

 しばらく思考の波に漂ったジケはゆっくり目を開けると、キリエに視線を向けた。


「その覚悟……別の方向で使ってもらいましょうよ」


「別の方向で? それは一体?」


「これから反乱を起こすんですよね?」


「ええ」


「彼らは味方になってくれるのでは?」


 死ぬ覚悟。

 これを別の方向に向けてもらおう。


「監視され、こうして死に追いやられている。明らかに今の王に不満を抱いているでしょう」


「しかし彼らの家は目をつけられているのですよ?」


「キリエさん……ここで彼らが死んだからといって、王様が信じてくれると思いますか? 一時的に破滅を逃れただけで、彼らの家は一生裏切り者の家門なんです」


 たとえ今は襲撃者たちを自由にして、家に帰れないからと自ら死んだとしても失敗したという事実は残る。

 王様にはなぜ失敗したのか分からない。


 裏切ったのか、逃げたのか、全滅したのか。

 どんな結末だろうと、失敗したことしか王様は見られない。


 結局一時的に家は守られるだろう。

 しかし疑いは続く。


 加えてそのタイミングで反乱まで起これば、きっと立場はかなり悪くなる。


「何も知らないままでいれば彼らはきっとまずい状況になってしまう。なら、こっちに引き込みましょう」


 どこまで、どう関わるかは、ジケは反乱に関わっていないから決められない。

 だが関わっておけば救われる命もあるかもしれない。


「もう反乱も目の前でしょう? 味方が増えればそれだけいいはず……そもそも彼らには声をかけていないんですか?」


「……反乱はトルオア様の方のことだからな。私は知らないんだ」


「そうですか……とりあえず、反乱のことを話して味方に引き込んでみませんか? ダメだったら反乱終わるまで俺のところで預かりましょうか」


 試すだけ試してみてもいい。

 覚悟が反乱という方向に向いてくれたら心強い味方になってくれる。


 元よりエルオアに協力してくれていたのなら可能性は高い。

 実際味方に引き込みに成功した後、反乱にどう関わっていくかはトルオアの方に任せてしまうことになるが、それは仕方ない。


 仮に引き込めなかったとしたら、反乱が終わるまで軟禁状態にしておいてもいい。

 反乱が成功したらエルオアの口添えも加えて家に帰してやればいい。


 失敗したらその時はその時だ。


「助けられるなら……彼らも助けませんか?」


「……そうですね」


 どうしてジケが色々な人に慕われて、モテるのか。

 キリエはその一端を見たような気がした。


「話し合いは終わったのか?」


「ええ、まずはこちらの話を聞いてもらいましょうか」


 説得はキリエに任せる。

 最後にはエルオアにも出てもらえば意外とあっさり陥落するかもしれない。


「ほれ、お疲れさん」


「ん、ありがとう」


 目の前に串焼きにされた肉が差し出された。

 前の町で買ってきたものを適当に切って、焚き火で焼いてくれたものだ。


 振り返るとリアーネが笑顔を浮かべている。


「説得か。いかにもジケらしいな」


 串焼きを咥えながらリアーネは、男たちを説得するキリエのことをチラリと確認する。

 逃すでも殺すでもなく、説得して仲間に引き入れる。


 何ともジケという感じの選択だ。


「これだからお前のこと好きだぜ」


「これを好きって言ってくれるリアーネのこと、俺も好きだよ」


「ははっ! 上手く説得できるといいな」


 無抵抗の相手を殺すのはリアーネも気が引ける。

 逃したって後味が悪い。


 こうした判断ができるジケはいいなとリアーネは笑ったのだった。

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― 新着の感想 ―
キリエの行き当たりばったり感と人任せな対応に嫌な気持ちなる エルオアも危険に晒したし、何か仲間になって欲しくない
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