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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第二十章

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たかがスライム、されどスライム1


「貴様ら! なぜ私の邪魔をした!」


 キリエが気を失わず拘束された襲撃者に剣を向ける。

 顔には怒りが滲んでいる。


 殺されないと分かったからだろうか、襲撃者たちはとんでもない方法でキリエの足止めに出た。

 武器を投げ出し、キリエに縋りつくようにして邪魔をしたのだ。


 己の命を投げ出すようなトンデモないやり方だけど、そのせいでキリエはシャドウ男を追いかけられなかった。

 今にも相手を殺してしまいそうな勢いだが、それなら最初からやってしまえばよかった。


 殺さないのには何かのわけがあるのだろう。


「キリエさん、ともかくリアーネの後を追いましょう」


 事情は気になるが、まずはエルオアの方が優先だ。

 話は移動しながらでも聞かせてもらおう。


「エニ、もしあいつらが何かしたら燃やしてしまえ」


「おっけ!」


 エニとウーキューとシェルティには馬車に残ってもらう。

 襲撃者たちも何をするか分からないし、馬車もそのままにはしておけない。


 しっかり拘束してあるので大丈夫だとは思うが、万が一がないように近くにジョーリオを置いておく。

 いざとなればエニの魔法もある。


「いこう!」


 ジケとユディットとキリエはシャドウ男を追いかけていったリアーネの後を追いかける。

 道から少し離れたところは森になっている。


 流石リアーネは分かっていて、わざとらしく折られた枝など追って行きやすい痕跡を残してくれていた。


「あの人たちはどうして生かしたんですか?」


 痕跡を見逃さないようにしながら森の中を進む。

 ユディットもキリエもすごく焦った感じがしているけれど、ジケは気になっていたことを聞いてみた。


「彼らは……我が国の者なのです」


「そんな予感はしてたけど……でもどうして殺さずに」


 同国の人だろうと襲いかかってきた相手である。

 敵なら倒すべきだろう。


「……全員、前はこちらの味方だった人なのです」


「んー? どういうこと……ですか?」


「最初の反乱が起きた時に国の側として戦った貴族……そして、私たちが国を出るのに手を貸してくれた人たちでした」


「……そういうこと」


 エルオアは反乱によって国を追われた。

 脱出することだって、簡単なものではなかっただろう。


 何とか希望を繋ごうと協力してくれた人がいることは、まず間違いない。

 そんな人たちが今回の襲撃者だとキリエは言った。


「どうして彼らが……」


 反乱に成功して国を収めたからといって、味方しなかった人を全員殺すわけにはいかない。

 国を維持していくため、ある程度の許しは必要となる。


 反乱に抵抗したものの、許されて今も貴族として国に留まっている人は意外と多い。

 その中でもかつてエルオアの亡命に力を貸した貴族たちばかりが襲撃してきた。


 なのでキリエは相手を殺さずに、話を聞こうと考えていたのだ。

 これからトルオアの反乱も待ち構えている。


 彼らは味方になってくれる可能性も高い人たちだ、というところもあるらしい。

 エルオアを連れ去られてしまうぐらいなら、最初から刃を鈍らせなければ良かったとキリエは後悔している。


「リアーネ!」


「悪い……逃げられちまった」


 森の中でリアーネが立ち尽くしていた。

 どうやらシャドウ男の方が逃げ足は上だったようだ。


「ケフベラスに探してもらおうと思ったんだけど……臭いが強い木の実が落ちてて……」


 リアーネの傍らにはケフベラスがいる。

 ケフベラスの鼻を活かした追跡をしようとしたのだけど、周りの環境が良くない。


 強い臭いを放つ木の実が落ちていて、相手の臭いが紛れてしまったのだ。


「そんな……」


 キリエの顔が青くなる。

 こんな場所でエルオアのことを見失ったら探すことは不可能である。


「……オルトロンに向かいましょう! 先回りすればあるいは……」


「ユディット、落ち着け」


 エルオアを助けるためにどうしたらいいか。

 今すぐにでもオルトロンに向かってしまいそうなユディットをジケが止める。


「ですが……」


「まだ諦めるには早いぞ」


 ジケはニヤリと笑う。

 

「会長……!」


 キリエは何をするのかと疑ったような表情をしているけれど、ユディットは期待したような目をしている。


「リアーネは戻ってエニたちのことをお願い」


「……分かった」


 少しリアーネは不服そうだけど、やっぱりエニたちのことは心配だ。

 ユディットとキリエを外すわけにはいかないし、リアーネに戻ってもらうしかない。


「あっちだ」


 ジケは迷いなく森の中を進み始めた。


「…………特殊な追跡術でも身につけているのですか?」


 ジケが進む速度は速い。

 キリエは周りを見ながら進んでいるけれど、リアーネが残していたような痕跡なんかは一切見当たらない。


 どうやってジケが自信を持って進んでいるのか謎なのだ。


「特殊な、といえば特殊かな?」


 もちろんただ何の確証もなく進んでいるのではない。

 とある特殊な方法を使ってジケはエルオアの位置を特定している。


 その方法とはフィオスである。


「今、エルオアにはフィオスがいてくれてます。あいつがいたら場所も分かるし、多分殺されることもないですよ」


 エルオアがさらわれる瞬間に、ジケはフィオスをエルオアに投げつけた。

 エルオアにくっついたフィオスはそのまま一緒にさらわれていったのだ。


 エルオアの場所は分からなくても、一緒にいるフィオスの場所は分かる。

 ジケはフィオスがいると感じる方向に進んでいるのだった。

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