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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第二十章

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ユディットの出自3

「剣……そういえば父親から貰ったやつだったな」


「ええ」


「そういえば……だいぶ前にユディットの話も少し聞いたことあったな。遠い王族の血筋、みたいな話だったっけ?」


「あっ、覚えててくださいましたか?」


「細かくは覚えてないけど、大まかな話はな」


 パルンサンの宝物庫から出て帰る時にユディットが軽く身の上話をしてくれた。

 深い話までとはいかず軽く語ってくれたものだったが、ジケもふとその話を思い出した。


「お恥ずかしながら実際はもう少し違うらしいのです」


「違う?」


「母の血にほんの少しの王族の血が流れていることは違いないのですが、細かい流れは俺が記憶しているものや父の話と違っていたんです。父が王に仕える騎士だったことは話しましたね?」


「そういえばそうだったな」


「当時シハラのことを身籠もっていた母のために、一度母の実家に身を寄せることにしたのです。父も休みをもらって一緒に……私もあまりその時のことは覚えていませんけど」


 ユディットは困ったように肩をすくめる。


「その時に当時の王様が倒れたらしいのです」


 この王様とはジケの国の王様ではなく、ユディットが元々いた国の王様である。


「私たちを母の実家に置いて父は慌てて王様のところに向かったのですが、その時にはもうすでに反乱が起きていました。王様も反乱に倒れ、父が取った判断は王様の子供を逃すことでした」


 前に聞いた話だと母親に王位の継承権があり、ユディットやシハラにも継承権があるということで狙われるから逃げたと聞いていた。

 母親の話が違わないのなら、遠いながら継承権があることは間違いないのだろう。


「そんなことをすれば父の身も、そして俺たちも危険です。結局は身重の母も連れて、王様の子供や反乱に賛同できない騎士と共に国を逃げました」


「まあ、気持ちも分かるよな」


 もし仮に王弟が王様になっていたら、ジケも別の国に行っていた可能性だって否めない。


「ですがやはり母が身重ということはネックでした。そこで俺たちは一度集団を離れて、この国に身を隠したのです」


 どうしても前王の子供は狙われる。

 機を狙って再び反乱を起こされるかもしれないし、生かしておいても国が二分するかもしれない。


 追跡される中でユディットの母親が身重だったことは逃げる上でも負担になっていたし、ユディットの母親自身にもやはり負担だった。

 ウェドンはユディットとユディットの母を連れて別れ、別の方向に逃げた。


 そして流れ着いたのが貧民街だった。

 メインは前王の子であり、途中で抜けたウェドンは上手く隠れることができたのだ。


 その後は説明された通り。

 ユディットの母親はシハラを産んで亡くなった。


「ただ……父はいつかキリエさんたちに合流するつもりだったようです」


 忠誠を誓った相手を守るのが騎士である。

 ウェドンはどこかでキリエたちのところに戻るつもりだった。


「ですが、それを私たちは拒んだのです」


 キリエが話を引き継ぐ。


「拒んだ……とは?」


「ウェドンからここに隠れたことの連絡があった後も、本来ならば定期的に連絡は取り続ける予定でした。ですが、私たちは最後に幸せになってほしいと残して連絡を絶ったのです」


「……ユディットたちのためですか?」


「はい。みんなの総意です。ウェドンならば子供たちと幸せに暮らしていける。いつ追手の脅威が迫るかも分からない生活をし続けることはないと」


 どこへ逃げているのか分からねば合流のしようもない。

 キリエたちはウェドンに連絡をすることやめた。


 相手の幸せを願って決別を選んだのだ。

 魔剣を持つほどの騎士ならばウェドンは強かったのだろう。


 そんな人が完全に抜けてしまえば辛くなるのは分かっていての決断。


「皆さん、良い人たちだったんですね」


 どんな話を経てそうなったのか知らないけれど、ユディットやウェドンのためを思っての決断を下せるキリエたちは良い仲間だったのだろう。


「……ユディットのことはよく分かったよ」


 反乱によって国を失った騎士の息子がユディットである。

 そしてキリエとの関係も理解した。


「力を貸してほしいとは何に?」


 一度関係を絶ってしまったウェドンを探しにきて、力を貸してもらおうとするなんて一体何があったのか。


「……我々の祖国は今、揺れているのです。反乱の王は今病に伏せています。そして彼の息子は暴君の資質を見せているのです」


 キリエは悲しそうな目をしていた。

 反乱によって国を乗っ取った今の王様は病によって弱っていた。


 順当にいけば、今の王様の息子が王位を継いで国を率いていくことになる。

 それはそれでいい。


 キリエたちは追手を振り切り、今は静かに暮らしている。

 国が安定しているというのなら、過去を忘れて生きることもやぶさかではなかった。


 だが、今の王様の息子は決して名君の器ではなかったのである。

 突如、王の息子となった王子はわがままで、節操のない人間に育ってしまった。


「彼が王になれば……国は荒れてしまうことでしょう」


 王になる前から国の未来が見えてしまうような愚王になることが分かりきっていた。

 わがままな暴君が誕生する。

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― 新着の感想 ―
暴君の脂質 さぞ暴飲暴食の限りを尽くして肥えてるんだろうなあと想像して笑ってしまった
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