表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第二十章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1282/1307

ユディットの出自2

「どうか、お力をお貸しいただけないでしょうか」


「えええ……!?」


 キリエはジケの前で膝をついた。

 予想もしていない行動だったのでまたしても驚いてしまう。


 王城でのパーティーの時には睨まれたかもしれないなんて思っていたものだから、多少の警戒をしていた。

 まさか膝をついて頭を下げられるとは思いなかった。


 驚いたジケがユディットを見ると、ユディットも困ったように眉を下げている。


「力を借りたいといっても何をしたら? そもそもうちのユディットとはどういう関係ですか?」


 頭を下げて力を貸してくれというのなら、貸してやらないようなジケでもない。

 ただ何をしたらいいのかも分からないのに、貸しますとも言えない。


 まず色々と話を聞かないとジケとしても、キリエのことを信用できない。


「話しても大丈夫です」


 キリエが視線を向けるとユディットは小さく頷く。

 どうやらユディットの方はキリエから話を聞いているようだ。


「ちょっと待て」


「なんでしょうか?」


 話出そうとしたユディットをジケは手で止める。


「長くなりそうだ。お茶でも準備して、じっくりと話聞くようにしよう」


 ジケは椅子に座り、キリエは膝をつき、ユディットは立っている。

 どう見ても話を聞くような状態ではない。


 椅子に座って話を聞く方が疲れなくていい。

 ついてに口を潤すお茶ぐらいあってもいいだろう。


 お湯を沸かして、来客用のちょっといい紅茶を淹れる。

 こうしたものも用意しておくぐらいになったのだ。


 淹れ方がうまいわけではないけれど、失礼にならない程度の紅茶は淹れられる。


「どうぞ」


「わざわざありがとうございます」


 家の主人のもてなしを拒否するわけにもいかず、キリエは大人しく椅子に座って目の前の紅茶に視線を落とした。


「なんと砂糖もあります!」


 白い陶器の器の中に砂糖がたっぷりと入っている。

 砂糖の方はジケの趣味なのだけど、タミとケリが料理やデザート作りに使ったり、ミュコやピコがこっそり舐めたりしている。


「好きに使ってください」


 ジケは紅茶に砂糖を多めに溶かす。

 自分で買ってるのだからいくら入れようとも文句は言わせない。


「私は大丈夫です」

 

「私も……」


 並んで座るキリエとユディットは砂糖を使うのを遠慮する。

 ユディットも普段は少し砂糖を使うのだけど、隣のキリエの空気を読んだらしい。


 軽く紅茶を飲んで口を湿らせる。

 いい香りが鼻に抜けていく。


 ちなみにフィオスはいつもジケと同じ量の砂糖を入れる。

 カップに覆い被さったフィオスの中で、細く伸ばされた紅茶がクルクルと円を描いて消えていく。


「じゃあまずは二人の関係から聞いても?」


 年齢も性別も違う。

 今の所ユディットとキリエに共通点はない。


 ユディットもキリエのことを知らなかったようだし、どんな関係であるのかとずっと気になっていた。


「キリエさんは……私の知り合いというより私の父の知り合いなんです」


「ユディットのお父さんの?」


 意外な話にジケは目を丸くする。

 ユディットには謎が多い。


 二文字名前ではないということは元々貧民ではなかったということになる。

 魔剣を持っていたし、貧民街に住んでいるにしては身なりも綺麗だった。


 忠誠を誓ってジケの騎士になった。

 その方法を知っていた親が騎士なのだろうことはうっすらと分かっていたが、それ以上の情報もない。


 ただ貧民ってものは謎が多い人も決して少なくない。

 貧しくて貧民になる人もいるが、何かの事情を抱えて貧民になる人もそこら中にいる。


 だからユディットに関して謎が多くても、ジケはさほど気にしてこなかった。


「私とユディットの父であるウェドンさんとは上司と部下……そして、同じ師匠に師事する兄弟子と妹弟子の関係なのでした」


「へぇ」


 キリエとユディットはあまり直接的な関係ではなかった。

 関係があるのはユディットの父親との方で仕事や兄妹弟子として関わりがあったようだ。


「ユディット君にも小さい頃に会ったことがあるのです」


「なるほど。それでユディットのことを探して?」


 ユディットの父親の関係者ということは分かった。

 次に気になるのはどうして急に現れて、ユディットを探していたのかということである。


「正確には探していたのはユディット君ではなく、父親のウェドンさんの方でした」


 それなら納得だとジケも思った。


「力を借りたくて……ただ情報もなくて、彼ほどの実力があれば武闘大会に出るかもしれないと考えたのです」


「そして、ユディットを見つけた」


「その通りです」


「よく分かりましたね」


 ユディットがいつから貧民街にいるのか知らないが、ジケと出会うよりも前から貧民街にいる。

 キリエがユディットに会ったのも小さい頃だと言っていたし、すっかり青年となったユディットを見て分かったことに少し驚く。


「それはあの人の……若い頃に似ていたから」


 キリエは目を細めるような表情を浮かべる。

 それを見て、本当にただの兄妹弟子なのか? とジケは内心で感じた。


「確証は持てませんでしたが、腰に差していた剣を見て確信しました」


 似ているというだけでキリエもユディットに接触したわけじゃない。

 パーティーでユディットが差していた魔剣を見て、ウェドンの息子だと確信したのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ