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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十九章

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思いぶつかる2

「…………チッ!」


「あっ?」


 ライナスが渋い顔をして舌打ちする。


「今更なんだよ! 俺だって……お前なら思ってたのにさ」


 エニの思いが誰に向いているのか、そんなもの見ていたら分かる。

 兵士を辞めてまでジケのそばにいることを選んだ。


 明確に何かを言われたわけではないけれど、結果は出ているようなものであり、ライナスはすごく悔しかった。

 なのに、ジケはライナスが、そしてライナスはジケが、と思っていたなんておかしな話だと思う。


「今ここでそんなこと言う意味なんだよ?」


「ハッキリさせとかなきゃ、って思ったんだ」


 少し前から気づいてた。

 過去は過去で、今ではない。


 過去にライナスとエニがどんな関係であろうが、今は違うっていて、過去に遠慮ばかりすることなんかないのだ。

 エニはものではない。


 だから俺がもらうとか、そんなふうに言うつもりはない。

 でも過去に遠慮して、変に引いた立場にいようとすることはやめる。


「俺はエニのそばにいようと思う。エニが俺のそばを望むなら俺はそれを受け入れるし、そばにいてもらう努力もする」


「ハァ……やっぱりお前ってずるいヤツだよな」


「それは自覚してるよ。だけどお前も大切な友達で……お前にも嘘ついてらんないからさ」


「その言い方もズルい」


 嫌いになれたらいいのになと思ったこともある。

 でもジケのことを嫌いになんてなれない。


 いっつも良いところはジケが持っていく。

 わざとじゃない。


 きっとそうした流れがジケの方に向いているのだ。

 でも嫌いじゃないし、嫌いになれない。


 嘘つけないからなんて、真っ直ぐに言われては怒ることもできない。


「んじゃさ、ここで俺が勝ってエニにアピールするよ。俺の方が強くて、良い男だってな」


 ほとんど負けの見えている戦いなことは分かっている。

 だけどジケはまだエニに関してもまだ競っているのだと思っている。


 ならばまだ少しチャンスはあるかもしれない、とライナスは医療班として待機しているエニを見た。


「じゃあ……俺も負けられないな」


 そうしたものを想定していたわけじゃないけれど、タイミング的にエニを取り合って戦うようになってしまった。

 負けてもいいと思っていたが、負けられなくなった。


 負けられない、男のプライドをかけた戦いが始まった。


「先手必勝!」


 ライナスが体から魔力を噴出させて加速する。

 それなりに間があったのに一瞬で距離を詰めた。


「ふっ!」


「なっ!」


 だがジケも油断していたわけじゃない。

 ライナスが一気に加速してくるだろうことは予想していた。


 一気に近づいてくるなら動きは直線的になる。

 ライナスの行動を予想していたジケは、ライナスの動きに合わせて剣を振り下ろしていた。


「ふぐっ!」


 急ブレーキをかけてライナスはジケの剣を防ぐ。


「くそっ……木だとやりにくいな!」


 魔力は木や岩よりも金属の方が通しやすい。

 ライナスもビクシムの弟子になったばかりの頃は木剣を振り回していたものだが、今はもっぱら金属の剣である。


 体だけではなく、剣からも魔力を噴出させるライナスは木製の武器の扱いにくさに顔をしかめる。


「逃すか!」


 距離を取られるとまた勢いをつけられる。

 ジケは離れようとするライナスをピッタリとマークする。


「なめんなよ!」


 近づかれて戦うのは苦手だけど、戦えないわけじゃない。

 懐に入り込んできたジケに対して、腕をたたんで剣を振る。


 魔力を剣の先から噴出させて勢いをつけ、腕をたたんでの窮屈な一撃と思えないような速度を出す。


「おっと!」


 ジケは一歩下がって剣をかわし、反撃を繰り出す。

 ライナスが剣を上げて攻撃を防ぐ。


 互いに力を込めて押し合う。


「やるじゃねえか!」


「そっちもな!」


 簡単に勝てるとは思っていないが、やはり強いなとそれぞれ感じていた。


「あれ、フィオス」


 戦いをじっと見つめるエニのところにフィオスが跳ねてきた。

 武闘大会においては互いの力を競う目的が大きい。


 そのために魔獣は禁止となっている。

 戦わなきゃ別に出ててもいいので、ステージの端でジケの戦いを見守っていたはずのフィオスだったが、いつの間にか移動していた。


 エニはフィオスを抱き上げる。


「あいつらなんか話してたけど、何話してたの?」


 ステージの上での会話はエニに聞こえていなかった。

 まさか自分が会話の対象になっているなんて思わず、フィオスに問いかける。


 ジケとライナスが自分のプライドだけでなく、エニに対しても競い合っているなんて想像もしていない。


「うーん、二人とも頑張ってほしいけど……やっぱり…………ジケかな」


 エニはフィオスをギュッと抱き寄せる。

 ライナスに負けろとは思わないけど、二人のうちどちらを目で追ってしまうかは瞭然だった。


「秘密だよ、フィオス?」


 フィオスはプルンと揺れて答えた。


「まっ、ライナスもちょっとは応援するけど」


 全く応援しないわけでもないとステージにまた目を向ける。

 戦いはいつの間にか様子が変化している。


 ジケが攻め立てていたのに、今はライナスの方がジケを攻撃している形になっていた。

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