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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十九章

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思いぶつかる1

「あとちょっとだな」


「そうだな。なんだかんだとここまでやってきたな」


 聖杯問題未だ解決せず。

 されど時は過ぎるし、武闘大会は進んでいく。


 半予選ともいっていいようなトーナメント戦が終わり、最終的に戦う八人が選ばれた。

 その一人はジケである。


 そしてもちろんライナスもいる。

 なんだったらユディットも残っていた。


 八人中三人もジケの周りで占めているのだから、結構すごいよなと思った。

 コロシアムのステージ真ん中に集められ、これから八人が戦うトーナメントのくじ引きを行っていくのだ。


 ライナスが戦いたいなんていうから参加したけれど、ここまで来るとは正直思ってなかった。


「初戦がいいな」


 ライナスは決勝がいいというだろう。

 しかしジケは初戦でさっさと当たってしまいたいと思っている。


 武闘大会の優勝にこだわりはない。

 むしろ勝って目立ってしまうよりは負けてひっそりとしたいぐらいである。


 決勝でライナスと当たることになれば、決勝まで頑張らねばならないし勝てば優勝になってしまう。

 できるなら初戦で戦って、勝っちゃっても次辺りで負けたい。


 これがジケの理想的な流れであった。


「獣人の子もいるのか」


 八人のうちに一人、獣人もいた。


「…………なんか見たことある気が……」


 フードを被っていて顔がよく見えない。

 知り合いじゃないだろうと思っていたのだけど、チラリと見えた顔が知っている顔のように感じられた。


 とりあえずチラリと見えた髪やチラリと見える尻尾の毛色は白い。

 知っている獣人にいないこともない。


 ジケが顔を覗き込もうとするとサッと顔を逸らす。

 なんだか偶然かもしれない。


 でもなんだか怪しい。


「おっ、呼ばれたな。決勝で戦おうぜ!」


 先に呼ばれたのはライナスである。

 まだ序盤なので対戦相手は決まらない。


 上手く行けば初戦で戦う可能性は残っている。


「残るは二枠……」


 くじ引きは進んでいって、ジケはジケ含めて残り二人というところで呼ばれた。


「ライナスか……否かだな」


「外れろ〜」


 残っている枠にはなんとライナスの対戦相手も残っていた。

 もう一枠はライナスとは逆の山になる。


 つまりライナスと初戦で戦うか、ライナスと決勝で戦うか。

 ライナスはジケと初戦で当たらないように念を送っている。


「んじゃこれで!」


 ジケは箱に手を突っ込み、最初に触れたくじを手に取る。

 くじを係員に渡す。


 係員はくじを開いて、チラリとトーナメント表を確認する。


「どっちだ……」


 結果はくじを引いたジケも知らない。

 係員がペンを手にトーナメント表に向かう。


「…………だぁー! なんでだよー!」


「よしっ!」


 ジケの名前が書き込まれたのはライナスの隣。

 初戦の相手はなんとライナスに決まったのであった。


 戦えるのはいいけれど、やはり運命のライバルといえば決勝での戦いだろうとライナスは崩れ落ちていた。

 逆にジケは初戦での戦いをラッキーだと喜んでいる。


「よろしくな」


「……まあ、確実に戦えるから」


 ライナスは不満そうだけど、ジケもライナスも確実に決勝に行ける保証はない。

 初戦で戦うことになれば確実に戦うことができる。


 ライナスはなんとか自分のことを納得させる。


「ユディットは……当たるなら決勝か」


 ユディットはジケと反対の山にいる。

 もし仮に戦うとしたら決勝ということになってしまう。


「まあなんにしてもお前のこと倒して、俺が優勝してやるからな!」


「俺も負けないぞ!」


 どこで戦おうとライナスとはライバルであり、負けられない戦いであることに変わりない。

 ジケとライナスは互いに拳をぶつけて、ニッと笑顔を浮かべたのだった。


 ーーーーー


 決勝トーナメントの二戦目がジケとライナスの戦いだった。

 子供たちの予想もできない戦いは観客たちとしても観ていて面白い。


 コロシアムの観客たちも、応援にかなり戦いの熱を帯びている。


「ふふふ……ここでお前を倒すことができるとはな!」


「まだやってもいないのに倒せるみたいに言われるのは心外だな」


 一回戦目の熱が冷めやらぬまま、ジケとライナスの戦いの番を迎えた。

 ライナスはジケを倒すと自信満々だけど、ジケだって負けるつもりはない。


「一つ言っておくがある」


「あっ、なんだよ?」


 いつになく真剣な顔をしてジケはライナスのことを見つめる。


「俺さ、お前ならいいと思ってたんだ」


「……なんの話だよ?」


「エニのこと。お前なら任せられると思ってたんだ」


 過去から戻ってきて色々なことが変わった。

 それは周りの変化だけでなく、ジケの中にある思いもまた変わっているのだ。


「でもさ、やっぱり諦めらんないよな」


「……うーん?」


 過去でライナスとエニは婚約した。

 だから今回もそうなるのが一番の流れかもしれないとずっと思ってきた。


 積極的に二人をくっつけようとはしてこなかったけど、いつの間にかジケのそばにエニがいることも当たり前になっていた。

 これからもそばにいてほしいと思う。


 ライナスの思いも知っている。

 この機会にハッキリさせておく。


「エニのことは俺が守るよ」


 過去とは違う。

 自分の思いに目は背けない。

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